対抗戦
対抗戦当日
俺は隅の方で大人しく座っておく。
前からずっと使ってた俺には関わらないでくれオーラを存分に発揮する。
「おいおい、マギアこりゃどうした?人が全然来てねえじゃねえかよ、なあ!」
「うるせぇな」
早速マギアと一般生がバチバチにやり合っている。
一触即発な雰囲気、そして、周りも神妙な面持ちだ。
「てかよお、前俺に突っかかって来た奴らはどこに行ったんだ?あれ、もしかして俺にビビってどっかに逃げちまった見たいだなぁ!」
俺もそれには違和感を覚えた。
一般生は17人、ルイスとグラン、そして1人を除いたら揃っていると言うのに特待生側は半分以上も来ていない。
イリムは来てはいるが、俺と同じ様に座って他人のふりをしている。
「お前らなんざ俺だけで余裕だから来るなって言ったんだよ!ほざけ雑魚が…」
「マギア君やめてよ、皆、本当は悪いって思ってるし仲良くしたい人も多いんだよ」
「やめろ、これは俺の事だ、他人が口出しをするな」
マギアは2人の呼びかけにも応じず一言ではね返す。
明らかに歳上の2人なのに、何も言い返せていない。
側から見ると主従関係が出来ているように見える。
「そりゃ強く出たなぁ」
「もう堕ちたファースト家の息子を相手にする事すら癪なんだけどね、本当は」
「くそ……てめぇ!!」
マギアは家族の事を言われて後ろにいる偉そうな男に襲いかかる。
「おいおい、殺り合うのは始まってからにしようぜ坊ちゃん」
「黙れよ……クソ」
グランとルイスに聞いた話だと総合魔術科の一般生には2つのクラスがあり特待生との対抗戦があり、昇級が出来るのは上のクラスのみとなっている。
つまり、ここにいる奴らは実力者揃いって訳だ。
対照的にこちらはと言うとよく言えば、良い家柄の英才教育を受けた人、悪く言えば、実践経験が殆どない頭でっかちで温室育ちのボンボンばかりだ。
前にいる2人がいつ爆発するか分からないタイミングで空気を乱すかのような登場をして来たのはルイスだった。
角からひょこっと出て来て喋り出す。
「あ!いたいた、ウィル!おっすー5日ぶりか?ちゃんと来たな……あと、こっちでグランがウィルの事が気になって来たから連れて来たわ」
「お、おい!俺は興味ねぇて言っただろうが…おいふざけんな!」
グランの力を圧倒する力で俺のとこまで引きずって来た。
「いやぁこいつがさっきからウィルの事を話してるからな
面倒だったから連れて来た」
「……ルイス、お前のせいで俺まで目立ってんじゃねえかよ」
「本当に嬉しいけどもう少し大人しく出来ないのか?」
「悪い悪い、折角の対抗戦なのにこのムードは如何なもんかと思ってね
なので皆さんは引き続き険悪ムードでやってもらって構わないので……」
また、ルイスが調子に乗って周りを煽りまくる。
「だから何度言えば……」
「一回しか無いイベントだ、本命に出て貰わないと楽しくないだろ?」
止めようとするグランにルイスは小声で話すと、少し時間を置いて納得した様子で笑みを浮かべた。
「教員がまだ来てねえみたいだが、邪魔な奴が増えると面倒だからもう始めちまうか」
一般生のボス的な男が訓練場を開けようとするとふわっと空を舞う様な背が高く青髪の妖艶な女性が前に立ち塞がった。
そして、俺はその姿に見惚れていた。
「……美しいな」
「ねえ、ダグ君、早とちりは良くないかな、お相手さんもまだ揃ってないみたいだし」
そう言って鼻先をつく。
「………っ!」
ダグは何もできない様子。
ダグの事を無視して、その次にマギアの所まで向かった。
「ボク、ここは子供が来ちゃ行けない所ですよ?」
マギアの事を知ってて言っているのか、知らずに言っているのか、どちらにしてもマギアの事を煽っている。
とてつもない女だ。
「誰だよ!お前」
「私はラフィーネ・ラピュセル、気軽にラフィーと読んでください」
危機を覚えたか咄嗟に一歩下がるマギア。
それを見て、グランとルイス、そしてラフィーネと言う名の女性が驚く。
それを見て俺は訳がわからなくて驚く。
「マギアって奴、なかなかにやるな」
「……何故?」
俺はこの一瞬でマギアがなかなかやると言うのに気付けたのか分からなかった。
すると、グランが教えてくれた。
「あいつは魅了の魔力を放っているんだ、まず大抵の弱い奴場合はラフィが近づくだけで何も出来なくなってしまう、それか少しは脳の思考が鈍くなるもんだが、マギアは一切の迷いなくラフィを危険と判断した。
あいつはただのボンボンじゃあ無いって事だ」
俺もラフィネの魅了に完璧に魅せられてしまうくらい何だからまだまだだ。
そう言えば俺は前にもこの様な事を喰らった事がある気がする。
「私の魔力が学院生にも通用しなくなっているなんて、寂しい事ですね……」
しかし、マギア以外の特待生は普通に魅せられているみたいだ。
「しかし、私が来たからにはもう恐れる事はありません……私の為……いや、私達の為に特待生に向かい打ちましょう」
ラフィーネの声に一般生は決断力を見せる。
さっきまで、偉そうにしていたダグも今だとなっては可愛く見えて来た。
そろそろ試合が始まるかと言う時には逃げたと思われた特待生の面々も揃って来た。
これで、ルイスも役者が出揃ったと満足げにしているとさらに後方から2人の姿が見える。
「ねぇしっかりしてよ!みんなもう揃ってるんだから!」
「うぅ……僕は無理だ、またいじめられる……皆強そうだしやっぱ僕なんかが来る所じゃ無かったんだ……」
項垂れる男性とそれを介抱する女性に視線が集まる。
「ひいぃ……皆がみてる……殺される………」
「す、すいません私達の事は気にせず対抗戦始めてもらって構いませんので」
腰低く頭を下げる女性に何とも言えない表情のマギアと対象に一般生は激しいヤジや嘲笑が聞こえる。
「ねえ、グラン、あの2人知ってる?」
「俺に聞くんだよ2人は特待生だろ?知るわけないだろ俺じゃなくてウィルに聞けよ」
「ウィルあの2人知ってる?」
「転校生の2人?名前くらいは聞いた事あるけど殆ど顔も合わせた事ないしイリムとワノンに聞いても名前すら知らないみたいだから有名貴族でも無いんだよ」
「異大陸出身って訳ね……面白い出揃って来たじゃん」
楽しくなってきたルイスは立ち上がって2人の前まで向かう。
「2人のどっちかさ俺と戦わない?」
その言葉に俺とグラン含めルイスの実力を知る者は驚愕した。
「お誘いは有難いのですが、私達は闘うつもりはありませんので」
「つれないなぁ、せっかくの一回しかない祭りだって言うのに特待生の奴らは弱そうなのばっかでつまんなかったんだよね、だから出来れば、そこの怯えてる君と勝負を頼みたいんだけど……」
「ですから……」
女性の方が、今一度断りを入れようとした時、うずくまっていた身体を起こし、顔を見せる。
「ごめんね、クランツやっぱり戦う運命なんだここで終わるとしても……」
強気にルイスを睨みつけるも、やはり怯えている。
本性を見せたと思ったら普通にずっと素の状態だったみたいだ。
「い、いいよ……戦おう、10傑殺しのフェールイス・ユグドラシル!」




