黒魔術師
「ぜ、前衛魔術師?ありえないでしょ……
俺、攻撃力1だし防御力も1なのに」
「いや、お前には盾職でも良いと思ってる」
「は?え、何?俺を殺したいってわけ?
だって盾職なんか常に前に出なきゃ行けないし、誰かを守る立場じゃん?俺はお世辞にも守れるような奴じゃ無いし……」
「いいから少しくらい話を聞けよ」
俺が取り乱して早口になるとグランが少し怖い声でこちらを見て話した。
俺はビクッとなって背筋が伸びる。
「まあ盾職は言い過ぎたな、でもお前が早く活躍したいなら前衛魔術師はありだと思ったんだが……やはり黒魔術師が良いと思う」
黒魔術師とはこの世界では圧倒的に人口が少なくもはや絶滅危惧と言われているレベルで人気のない役職。
攻撃が主ではなく、味方の援護に加え相手の弱体化を主とした戦闘スタイル。
「もしかして、さっきの攻撃は……」
「そうだ」
これでさっきの戦いが腑に落ちた。
さっきの攻撃にはごく微量の毒が仕込まれていた。
それなのに気付かない俺に情けなく感じるものの、その戦闘スタイルは俺に最適だとも思った。
「工夫すれば強い魔法なんだが、地味な割に難易度も高く魔力消費も激しく更には当てるのにも一苦労いる
それなのに即死ではなく補助と来た、人気無いのは当然だよな」
「でも扱いこなせたら」
「今まで以上に戦闘幅が広がる……ということか」
そう言うとグランは一役終えたかのように座り込んだ。
そうと決まったらとりあえずは特訓あるのみ!
まずは詠唱を一度して自分のものにしなければいけない。
「種類は少ない、お前なら1日もあれば余裕だろ」
俺は練習場から飛び出て本を漁りに行く。
黒魔術は人気もなく、コーナーがある訳ではない。
そもそもここにあるかも微妙なレベルだ。
と言う訳で司書の人にあるか聞いてみる事にしたら、簡単に見つけられることができたのだが、
「う、薄いな」
これが魔術教本なのかと思ってしまうほどに薄い本だ。
高校生の英語の教科書くらいしか無いぞと驚いた。
それくらいには歴史も浅く、種類も少ない。
いつも通り、窓際の席に座り眺めながら本を読む。
ー黒魔術師は元は魔族特有の魔法とされており、知識人の解析によって人間にも使用できるようになったー
「元は魔族特有の魔法だから消費が普通の攻撃魔法よりも大きいって訳か、成程こりゃ、難しいな……」
しかし、見れば見るほど俺はこのスタイルが自分に合っているんじゃ無いかと思って来た。
黒魔術師は人間ではなく、魔族が良く好み、噂では最強種の魔女も黒魔術を使用していると言われている。
「扱いこなせれば、最強種でも使ってるんだから俺でも強くなれるのかもな」
主役には程遠いって訳ですか、
まあ俺は元々、転生したってだけの人より体が弱い一般の「人間」だ。
こういう役回りが俺の天職なんだろうな。
「種類は……呪毒と束縛、そして、弱体化の全てが上級魔法か…難易度は高いし、言ってた通り技も多くは無いな、」
明確に違うので3種類もあれば十分だ。
属性攻撃魔法だって、言ってしまえば同じ攻撃魔法。
魔力の強いやつほど弱魔法でもとんでもない威力を出せるし、弱い奴でも渾身の上級魔法1発でもなかなかの威力は出るがやってる事は同じ攻撃。
規模が違うだけ。
正確にいうのならば、発生速度や強度は特色がある。
火の魔法なら初級は日常が便利になるくらいの魔法で人を殺すにはそこそこの魔力が必要。
「そう考えたら初級って凄いよな、自分の想像でどうにだってできるんだからな」
正確には魔力送料も必要になるし、それに順応出来る魔力増強の杖があれば尚更だ。
「基本的には弱体化が1番、有用性があるよな、ゲームでもデバフは基本優秀だし、動き止めるのもいいけど俺は受けきれないからな」
早速、弱体化の魔法の詠唱に取り掛かる。
一度成功してしまえば後は無詠唱でも、発動ができると言う便利な世界だ。
「強大な闇を統べる者よ、我が身に宿し求める所に漆黒の怨念を振り与えたまえ!弱体化」
「……あれ?これで合ってるはず、上手くいかんな」
俺は今まで新たな魔術を覚える事に一度も苦労をしたことが無かったからか、初めての魔術の失敗に戸惑っていた。
その後も何度か同じ工程を繰り返して成功するかを試したのだが、一向に上手くいかない。
呪毒と束縛は1発で出来たと言うのに弱体化だけは一度も成功していない。
二つと同様に自分に使っても効果が出ない。
人間にもできるようにしたと書かれているのに、出来ないなんて事は無いはず。
ましてや魔力総量だけなら、グラン、ルイスよりも多い俺で出来ないとなると出来ない原因が分からなくなって来て、頭を抱える。
「んー、マジで分からんな
束縛の方は結構な力が必要だと分かったから毒の方が俺には有用なのは間違い無いよな」
俺は一旦、弱体化の魔法を使う事を止める。
「黒魔術は攻撃自体が見えないから既に操作難易度も高いのに、ここまでとはな……でもやるしかない、」
俺はこの能力に可能性を感じていた。
さらに、何か新たな事に挑戦できる事に楽しさを思い出していた。




