噂の問題児
あれから数日が経ち、結局プレゼントなんて無かった物になった。
それからは正直俺からはルイスに話しかけにくいと思い距離を置いていたが、今日は何故かルイスの方が俺に話があるとの事で俺の部屋まで来たが、横にもう1人いた。
「久しぶりだな!話あるから入るぞー」
「え……」
そして、
「これがお前の言う友達?」
そう低い声で壁に寄りかかり猫背の男に俺は何故か見覚えがある。
入学式の時、ルイスと一緒にいた人だ。
「ああ!こいつが俺の親友のウィルフレッドだ
ウィル、こいつが俺のクラスメイトのグラン、何考えてるか分かんないけど良いやつだから仲良くしてくれ」
ルイスが俺とグランは俺の全身をじっくりと見る。
見終わったのかスッと壁から身体を起こし俺に近寄ってくる。
猫背だがなんとなく威圧感を感じる。
強者のオーラというか、なんというか。
「こいつがルイスの親友?俺弱い奴に興味無いんだよなぁ…」
そう言って頭を掻きながら手から炎を作り俺に向かって放とうとする。
俺もハンターとして少し成長したし、挫折もした。こんな軽い不意打ちを喰らってしまうほど落ちぶれてはいない。
俺は魔法を瞬時に使用して技を消す。
「おい!」
とてつもない目つきでルイスがグランを威圧する。
ルイスは俺の事を過保護が過ぎる。
とは言っても今の弱攻撃ですら喰らったとしたらひとたまりも無いのは目に見えている。
しかし、グランは弱いと見抜いたが紙装甲なのを知っているはずも無い。本来あり得ない身体なのだからな。
「悪いな。いきなり喧嘩ふっかけて……でも弱くないみたいだな……よろしく、今後とも」
急に大人しくなった。
力試しだったのか、弱い奴が嫌いと言うのは弱い奴を消すと言うのと同義だと考えているのか、、
俺は握手で差し伸べてくる手に恐れながらもがっちりと掴んだ。
俺の部屋に3人で戻ると、ベッドにルイスが横たわった。
それを見て呆れているのかグランはまたもや壁に寄りかかるのかと思いきや俺の勉強机の椅子に座ってしまった。
俺の居場所は無いのかと嘆きたくもなったが、大人しくベッドの端の空いたスペースに座る事にした。
「そういや話したい事があるんだが、ウィル最近1週間くらい学院来てなかっただろ?
その間に特待生と一般性が対抗戦するみたいな事になったらしい」
「え?」
あの日依頼、初めてルイスに口を開いた。
「面倒いな、別に俺は卒業さえ出来りゃこんなのどうでも良いんだけど」
「特待生とうちのクラスの奴が廊下で喧嘩して、対抗戦が普段より早くなったみたいだし」
「はぁ、本当に弱い奴は芯まで弱いから何を考えてるか分かったもんじゃないな」
グランの言い方には少し棘がある。
これはルイスがやばいと言っていたのも納得だなと頷く。
「そういえば、さっきどうやって俺の攻撃を防いだんだ?」
急に話が変わる。
本当にグランって奴は自己中心的な男だ。
さっきのグランの攻撃を消した事について聞いて来た。
やはりこの魔法は一般的に公開されてる魔術では無いし、みんなが皆んな出来るもんでもない。
「水魔法で相殺するんだ、属性にも多少なりとも有利不利は存在するからね」
「嘘はつかなくて良いんだけどよ……
お前みたいな推薦貰えるような良い育ちを俺はしてないけど魔術触ってりゃそれくらい解るに決まってるだろーが」
そりゃそうだ。俺の言ってることも強ち嘘ではないが、グランと俺の攻撃力の差はさっき俺を見た時にすぐに勘づいているのだろう。
属性にも有利不利があっても、差があればそんなのはどうでも良くなる。
しかし、俺は見え透いた嘘を吐いた。
消却魔法使いなんてあまり言いたく無い。
なぜなら俺の唯一の格上を倒すための1発ネタなんだからな。
「前に言っただろ……こいつが消滅波を実践運用出来る奴だ」
「消滅波?」
「お前の言う消却魔法の事だ」
「ちょっ、、え……」
ルイスが普通に口を滑らした。
これでもし対抗戦で戦う事になったら初見殺しも出来なくなってしまった。
この術は消滅波と言うらしい。
なんか響きがカッコいいなと思ったのは俺だけだろうか。
「お前が魔術師の才かそうは見えないが……戦うか?」
「ごめんなさい、、俺戦闘はてんでダメなんですよ」
「……どう言う事だ?」
少しずつグランが俺に興味を持ってきたのが分かる。
ルイスは俺の事を消却魔法を使える凄腕魔術師としか言っていなかったみたいで、当然の反応をするグランに俺はまともに戦闘なんかしたら普通に死んでしまうほど貧弱な事をしっかりと説明した。
すると、また普通の反応で返してくる。
「ならなんでハンターになりたいんだ?
死ぬだけだろ」
「俺にはやらなきゃ行けない事があるんだ、でも、時間が無いんだ」
俺は父との約束の為、そしてまだ生きてるかもしれない父を見つける為にハンターになるのを諦めるなんて事は絶対にしない。
たとえその道がどれだけ狭く険しい道だとしても、生き抜いてみせる覚悟が出来た。
俺の中の何かが動き出していた。
「俺は幸せになる為に自分の正義を信じる!本当はルイスみたいに派手で圧倒的な力が欲しい……だけど俺にはいくら努力したって届かない天才と凡人には壁があるのは分かってるでもそれは諦める理由にはならないんだ!」
俺が勝手に熱くなっているのは誰の目から見ても明らかだ。
それでも俺の熱弁は止まらない。
ルイスは俺を止めようともせず寝そべったまま楽しそうに聞いている。
しかしグランは俺の方を背もたれに手がかかって気怠そうな姿勢をしているが、しっかり俺を見て俺の話を聞いてくれていた。
そして、俺の話が終わると、何か考えた様子でこちらを見る。
「まあ、お前が焦ってると言うのは分かった……何者かの為に必死で自分を突き動かすのか…似てるな、あと4日、、明日もここにくる、またな……」
そう言って、ルイスを置いて行って先に出て行った。
ルイスは今の言葉を聞いて起き上がる。
「へぇ、あいつお前の事気に入ったんじゃねえの?
理由は分からんけど、まあ仲良くしてくれ
俺は明日来ないから2人で楽しめよ!」
ルイスは俺に新たな友達ができたと思って嬉しそうに帰って行った。
「あいつ、俺の事ばっかり……気にして、申し訳ないな」
俺はあの日以降、距離を置いていたのに、ルイスは何もなかったかのようにまた、いつもと同じ笑顔を見せる。
その時俺は自分で自分の顔を両手で叩く。
「俺だけじゃないか、前の事を引きずってるのは!
変わるんじゃないのか」
誰もいない部屋で1人声を出して自分を奮い立たせた。




