魔石採集
翌日、起きていつも通りの朝を過ごす。
すると、ドアをノックする音が聞こえて俺はなんの戸惑いもなくドアを開けると、イリムがいた。
「どうしたの?」
「いや、ハンター活動は順調か知りたかっただけ」
「そりゃ普通だけど、良い人と仲良くやらせてもらってる」
ドアの前で立ち話もアレだから、部屋に入ってもらおうと促すが、何故か恥ずかしそうな顔をしてここで良いと言って入ろうとしない。
「気まずいだろ、長居させるつもりも無いし
今日は一日ハードだから時間も無いんだ朝食の準備もまだ終わって無いし」
「そ、そうね、じゃあ入らせてもらうわ」
俺はイリムを気にすることなくいつものルーティーンをこなす。
その姿をイリムはただ見ているだけだ。
「朝食はいつも自分で作ってるのね」
「節約の為だ」
この世界では料理という概念はほぼ無いと同然。
野菜は農家があるみたいで存在はするが、調味料は当然の様に無い。
料理とはいえ、パンを焼いたり、野菜とかじゃがいもをいい感じに切るとかその程度で日本の様な和の食事を再現は出来ない。
スープは前に狩って沢山手に入った鶏の骨と少々薄味の酒を料理酒の代わりとして使って鶏ガラっぽいスープを作った。
因みに味は良くは無い。
普通に肉食ってた方が美味しい。
「美味しそうな見た目ね」
「色のバランスが取れてるだけだ、味は食堂の方が断然上手いだろ」
「とうもろこしとか野菜ばっかだけどね」
この時の俺は少し優越感に浸る事ができた。
前の世界の知識っていう異世界転生では使わなくてはならない物をちょっとは使えた気がする。
とは言っても疲れるものには限界がある。
(忘れてた!こんな話してたら予定が終わらないぞ)
俺は久しぶりに、のんびり友人と喋る事ができたのか、つい嬉しくなってゆっくり話してしまう。
最後にスープをガッと飲んで、皿洗いを始める。
「今日もなんかするの?」
「依頼だ、緊急任務は俺には必要ない事だからなちょっと大変なとこに行くが、転移石があるし、なんとかならと思う。
とりあえずは今日でハンターは引退する」
「ふーん、……頑張れ」
「え?今なんか言った?」
「何でもないわ!」
イリムは怒っているのかドアを力強く開けて、出ていって力強くドアを閉めた。
俺はどうしたのか少し気になったが、それより時間の方を優先したかったので、自分の作業を優先する。
ギルドにて、
「今日はいつもより、人が多いな……」
これはやはり、新たに開通された洞窟が原因なのか。
まさか、入らないまでに並んでいるとはな。想定外だ。
何と言っても洞窟には金になる魔石があったり、もっと高密度の魔石を持ったモンスターがいるかもしれないからしょぼい洞窟でも一定の人気はあるみたいだ。
「ん?並んでないなこれ」
俺は長蛇の依頼の列だと思って人混みの最後列にいたが、ガラス窓から見えた、この人混みの最前列は受付ではなく、席に座っている、とある男の列だ。
「こりゃ凄えな」
「あちゃ〜洞窟今日は行けないですかねぇ?」
俺のさらに後ろで2人の男女が洞窟の話をしている。
この人達は俺と同じで男目当てではなく今日行ける様になった洞窟目当ての様だ。
「もしかして、おふたりはこの列の人ではないですよね」
「……そうだが、どうしてだ?」
「あ、いや…話が聞こえて来まして」
盗み聞きはあまり大きな声で言いたくはないが、言い訳なんて思いつくはずもない。
俺は本当の事を言った。
「君も魔石目当てなのか?」
「はい!」
「そりゃ争奪戦だな!」
そう言って男の方が大きな声で笑う。
隣の女の子はずっと俺の方を見てニコニコしているだけだ。
「そうなんですか」
「当たり前!魔石は一個売りゃ金貨3枚は固いからな、その分見つからん時は大変なもんでな争いが起きるって訳だ」
そりゃ大変だ。
でもこの人混みを見て、殆どが洞窟目当てでない事が分かり少し安堵している。
「すいません、受付の方に行きたいんですけど……」
俺は少しでも時間が惜しい、他の所に行けばいいと言うのはごもっともなのだが、ここの土地にそこまでまだ詳しい訳でない。
男の為に並ぶガールズを俺はするすると避けてようやく中に入る事が出来た、のだが、
「ちょっとなに抜かしてんのよ!」
「邪魔よ!」
「私の方が早かったわ!」
「うわわあっ!」
俺が悪いのは分かっているが、俺が割って通った事で、それを見たガールズ軍が一斉放火して来た。
押し潰される─────
割と死を覚悟した俺。
「悪い、ディアスここはサイン会場でも無くギルドだ
ここにいる女子達連れて出て行ってもらえないか?」
受付の後ろ休憩室みたいなドアから男が出て来て、諸悪の根源に問い詰めている。
「ごめんごめん、そんなに人が来るとは思わなかったもんで」
「次、やったら出禁だからな」
「そんな固いこと言うなよ、元ギルドメンバーとしてさ」
そう言って、諸悪の根源は去っていき、もう1人の男はそのまま、また休憩室に戻った。
女子達が男の後ろについて行ってくれたおかげで、俺は急死に一生を得た。
「何やってんだ、ここは大人しくローレンを待つのが正しいんだ」
「ローレン?」
「さっきの男を追い払った奴のことだ
ここのギルドのオーナーをやってて、さっきの男と同じチームの元ハンター」
「そうなんですか」
「とにかく、お前も洞窟、行くんだろ?」
「はい!」
さっきの事は無かったことにして俺は依頼を受ける。




