想いとチカラ
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流石にかなり時間が経ち、他の班は目標を終え学院に戻っているのか、前程かち合うことが無くなって良いペースで倒していくことが出来た。
しかし、そこから懸念も生まれて来た。
ワノンの矢があと2本になってしまった。しかも、剣は初心者と言って良いほどに使い慣れていない。
ここで大群が出て来ると少しまずい。
はっきり言って今まではかなりワノンの援護に頼っていたところが大きい。
矢先に魔法を込めて放つと殺傷能力が上がったりするから単純な弓でも火力が段違いで高い。(人気は無い)
「その2本は大事にして、流石に戻った方がいいな」
「……そうね転移石は少し離れた所にあるはず、そこまでは索敵に専念してもらえる?」
「ごめん」
自分が何も出来ない事に誤っていたが、2人は今までの頑張りを知っているから、謝る必要は無いと頭を上げる様促す。
「最悪、不味くなったら警備の人が来てくれるから」
俺が小さい声で2人以外に聞こえない様に安心させようとする。
「何言ってるの?
それは減点になりかねないわ、私達で片付けるのよ」
その後は運良く出会わずに転移石の近くまでくる。
しかし、運の悪い事に隠密していた魔人が背後から現れた。
最後列にいて、索敵に優れてるワノンですら至近距離になるまで気付かずに、焦って1本矢を外し、もう1本は急所では無いが当たる事に成功。
しかし、ダメージを喰らっている様子では無い。
十分に弓を引けなかったのと魔力を込める時間も無かったのだろう。
ここは難易度も低く危険性が低いはずなのに、いくら弱い魔人だとしても、中堅ハンターでは無いとやられてしまうほどの力はある。
「魔人ね…私に任せて」
「援護する……俺と背中を合わせて常に前の注意を頼む」
「了解!」
魔人は一体。
こちらの陣形は前にイリムが立って、正面を俺がカバー、ワノンが俺達の背後の索敵で一応、剣は構えている。
「まずは俺が先制を撃つ」
そう言って一定の範囲に氷の幕を作る。
これにより、他の敵が来た時に割れた音で素早く反応出来るためだ。
「この幕はそう固く無い、攻撃されたらすぐに割れる
だが、あの魔人にそれは気づかれないだろう
目の前の敵に集中してくれ
魔法攻撃は俺が対処する」
そう言うと、イリムは小さく頷いて、強い踏み込みで直進する。
魔人はイリムが直進するタイミングを合わせて手から火を出した。
イリムはそれを上手く避ける。
俺とワノンの近くに火の手が迫ると俺が掻き消した。
その後もあまり魔人はイリムに近づこうとする気を感じない。
間違い無い。
「よっしゃこいつは魔法攻撃がメインだな!
俺が消してやるから超近接だけ気をつけて」
「……了解」
魔人も焦ってもう一度火を放つが、イリムは俺を信頼しているのか、一切臆する事なく突進。
俺がその火を消す。少し火を浴びたが、お構いなしに一閃。
魔人も短剣だった事が功を奏して何とかバックステップで浅い傷を負うだけで致命傷とまではいかない。
それを見て彼女は舌打。
ワノンに声をかける。
「持ってる剣……頂戴」
イリムはワノンの事を見ずに声をかけ、剣を貰おうとバックステップで近寄り手を出す。
ワノンは何も否定する事なくその手に自分の剣を渡した。
その代わりに自分の短剣一本を渡す。
それと同時に、もう一度音が出るくらい強い踏み込みで前に跳ぶ。
「………」
イリムは剣を上に構え、振り下ろす。
魔人は一気に距離を詰められ、先程と違う動きに戸惑う。
かと思いきや、逃げれないタイミングを待っていたかの様に自分から初めて接近して来る。
獣の様な大きな右腕でイリムの心臓付近を殴る。
身体が浮いていた為、大きく吹っ飛ばされる。
そして、俺が安全のために張った氷の幕にぶつかり割れる。
その衝撃は身体の弱っていた彼女には少しだけ効いたみたいだ。
「ぐああっ……」
イリムの悲痛な声に警備の人が駆けつける。
そこには心臓の周りを抑えるイリムの姿があった。
「もう動かないでください!
……獣化した魔人ですか、私が対処しますので皆さんは転移石へ向かって下さい」
警備の男は至って当たり前の仕事をしているだけだった。
なのに、この3人は一向に動こうとしない。
それはイリムが動かないと言う理由だからでは無い。
まだ、戦う意志が残っているからだ。
「やめて……貰えますか、私はまだ戦えます」
その言葉を聞くと警備の男はイリムの肩を掴み、必死の形相になる。
「これ以上は危険です!すぐに適切な処置が必要となります
自分が1番分かっているはずです!
あなた達はこの先、沢山の命を守る使命があります
痩せ我慢をして死なれたら皆さんが困ります!」
何も聞いていなかったのか、イリムは静かに立ち上がる。
「私はこの小さなプライドだけは曲げられません
諦めたら、越えられませんから
ここで死んだら私は沢山の命を守るに値しなかった人間って事です
だから、私の我儘を見逃して下さい」
「そう言う訳には行きません!
あなたを送り出した親御さんの気持ちも考えて下さい!」
「私の両親は私が死んだ所で何も思いませんよ……間違いなく」
振り払おうとする彼女に、絶対に話さない警備の男。
魔人はその間の魔法は俺が消し続けて、ワノンはイリムに渡した自分の剣を拾い。
拙い剣術で防御だけに徹する。
力は強く、ワノンもかなり限界を迎えている。
ワノンが力に押され、イリムの所まで飛ばされると、イリムは警備を振り解いてワノンから剣を頂戴すると、近接で素早い剣舞で魔人を斬る。
しかし、魔人も避けれる所は避けて、数を最小限で抑える。
すると、イリムは悪寒がして、数歩ほど後ろに下がり、構えを取る。
居合の姿勢。
今までのイリムには考えられない「静」の構え。
魔人の攻撃を誘っている。
そして、魔人はそれに釣られて迫って来る。
魔人の攻撃よりイリムの剣速の方がやや速い。
イリムも斬ったと思っただろう。
しかし、魔人も想像以上に頭を使う奴だ。
相打ち覚悟で一切避けずに攻撃の構え。
「振るな!!」
強いその言葉に反応してイリムは剣を止める。
「危ない!」
とてつもないほどの何かが割れた音がする。
しかし、魔人の攻撃はイリムには当たっていなかった。
「危なかった……準備は出来た後は任せて」
俺が魔人との間に割って入り、防御魔法で攻撃を防ぐ。
本来俺の防御は雑魚。
だが、瓦割りと同じ要領で力は少しずつ減衰していく、その知識を応用して、時間をかけ防御魔法をナノ単位で作り攻撃を威力を止めた。
「流石にこれ以上は魔人もイリムの居合にも警戒してくる
ここは一旦俺に任せて欲しい」
「でも、それじゃ……私は……」
イリムは自分が何も出来ないと分かっていて落ち込む。
魔人は今の攻撃が渾身だったのか少し動きが鈍くなったので、イリムを抱え安全な場所へ移し、俺は前に出る。
「俺はイリムの仲間だ、その小さなプライドは俺に託してくれ、ここでダメだったから終わりじゃない」
「………」
イリムは何も言わなかった。
ずっとムキになって動き続けていたからだろう。
少し落ち着いて止まっていると力が抜けてしまったに違いない。
俺は背中に掛けてた魔剣を抜く。
(これは原物だから使いたく無かったが……
もうそんなの言ってる状況じゃ無いしな…)
俺は全力で魔法を唱え魔人の周りに炎の籠の様な物で動きを封じたかの様に見せる。
少し動きが止まるが、流石の魔人もそこまで馬鹿じゃない。
熱くないと判断したらすぐに抜け出した。
が、その一瞬、目を閉じた。
俺はその一瞬、一秒を奪う為に俺は見せかけの魔術を使った。
魔人が籠から出た瞬間に俺は魔人の胸元に魔力を込めた魔剣を突き刺す。
すると、そこから火柱が立ち昇る。
魔人の内部で魔剣は壊れた。
そこから火柱が出た為、いくら攻撃が弱かろうと心臓から持続的に焼かれれば十分な威力になる。
「周りの木々が燃えてしまいます」
警備の男は慌てて水魔法で消化しようとするのを俺は止める。
「これは単体なので大丈夫です」
周りの森林の被害だけ抑える為に、一応、火柱から少し離れた所を囲むように水魔法を複体で守る。
少し経ったら囲んだ水を中央に収束させ消化する。
魔人は綺麗に絶命していた。
「すいません、指示を無視して」
「次からは気を付けて下さい」
流石にイリムも謝っていた。
1番体力が残っているワノンがイリムを背負って転移石に戻る。
やはり自分達の班が1番最後だったみたいだ。
「……流石に堪えたな」
「うん、初めての依頼で魔人なんかと出会うなんて
俺は何も出来なかったよ」
「初めてにしては、頑張りすぎだわ
少しは休んだ方が良い」
ワノンはほぼ全ての授業を受けている。
だから翌日になれば朝早く起きてまた普段通りの生活に戻るだろう。
それではいつかは身体が壊れてしまう。
俺は身体を休ませるのも大切だとしっかり教える。
転移石の前に立っても彼女は疲れ果てて起きない。
「イリムがこんなに必死になるとはな……」
「それは彼女にしか分からない」
「…それもそうだな」
眩い光で起こされるのも可哀想なので起こす事にした。
「起きて戻るよ」
「ん……ぅあ」
本当に寝起きみたいだ。
声は普段とは違って少し可愛げのある声だ。
そして3人は学院に戻った。
病院に行きました。
休みます




