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新しい人


「じゃあ俺はこれから学院に通ってあまり戻れなくなると思うが、元気でな」


 俺は全員を見送る。

 ほぼ全員が悲しい表情を見せる。

 数人は涙を流している様に見えた。

 俺はこんなに人に必要とされる人間になったのか、前の人生に比べれば素晴らしいものだ。

 前は誰かの近くにいて、常に○○の隣の高畑みたいな位置にいたから、別に俺がいなくてもなんとも思われていなかったと思う。

 あいつ以外は、、




「これより、先日の合格者による2次試験を開始する!」


 今回は勿論実技試験だ。


 しかもルールは至ってシンプルだった。

 ランダムに抽出された2人がタイマンで戦う。

 勝った方が合格。ただそれだけが伝えられた。


(こりゃイージーだな……)


 俺は勝ちを確信していた。

 正直負ける訳にはいかない。

 ウィルになんて言われるか分からないし、自分の家に戻って、「試験落ちたわ」とか言ったら流石に恥ずかしい。


 そうこう考えているうちに第一試合が始まる。


 この試合は割と激戦だった。

 互いに魔法では無く、剣でバチバチに火花を散らす戦いには皆んなが真剣な表情で見守っていた。


 そうこの試合だけ、、第二試合からはランダムに選んでいるからか割と実力差がはっきりとしている組み合わせも多かった。


(可哀想だな、左めちゃくちゃ強いな……)


 そんな事を思ってしまうくらいには力の差がある試合もあったし、中には一歩も動かず、やられてしまう者もいた。


 第8試合


「フェールイス=ユグドラシルvsテキーラ・グランド」


 ついに俺が呼ばれた。

 相手は、、まあ誰でも同じか、テキーラさんには申し訳無いが、勝たせてもらう。


 かなりの声援が聞こえる。

 恐らく貴族階級の方なのだろう。

 尚更申し訳ない。


(でも、ここで圧倒的な力を見せつけると後々面倒だな……

 なんとかギリギリで勝つとするか)


「試合開始!!!」


 その合図とともに俺は動かずにまずは相手の動きを見てそこから……来る!!


(何?動けない……)


 そう思っていたが、次の瞬間俺は真っ二つに切断され、倒れ、上を向いていた。

 負けた……しかも過去一無様な負け方をした。

 一歩も動けず、相手の攻撃に反応して、魔法を出そうとした右手がさらにダサさを際立てていた。


 そして、勝ったテキーラはさぞ当然かの様に勝者の方に進んで行った。


 


 俺は斬られた。

 でもこの地面にある魔法陣のお陰で何とか回復はした。

 この魔法陣凄いな、ここに入ったらこの回復魔術も学べたのかと何故かポジティブだ。

 しかし、すぐに現実に引き戻される事になる。

 負けたので元の場所に戻る際には、皆んなに笑われた。

 「一歩も動けてない」とか「ダサい」だのと言われたい放題だ。

 恥ずかしい。


 俺は自分の席に座ると、隣の気怠そうで猫背の男がゆったりと話かけてきた。


「負けちゃったね」


 俺はその言葉に強く反応しようと立ち上がるも、周りの視線も気にしてすぐに座って俺も静かな声だが、少し怒り気味に話しかける。


「お前は俺の事を雑魚だと思ってるのか」

「さっきの戦いの後によくそんな事言えるね

 けど俺は弱い奴には興味無い、話しかける気にもならん」


 と言う事は俺の事を少し評価してくれたのか、いやどこで?

 何も手を出すしかできなかった男をどこで評価するに至った中を聞いてみたいと思った。


「何が言いたいんだ」

「いやあ、その顔だと、負けた事、相当気にしてそうだね

 君初めて見る顔だし、別にこの学院は3度までなら試験受けれるからそこまで気に病むことはないんだけどな」

「だから……」

「分かってる、ファールイスだっけか

 お前貧乏くじ引いちまったな」

「フェールイスだ、で、どう言う事だ?」


「ごめんごめん、

 それはともかくまあ簡単な話だ

 単純に言うとお前と戦った女を勝たせる為に仕組まれたんだよ、違和感……あっただろ?」


 こいつの声はやたらと人を惹きつける。

 ゆったりと喋る声に猫背、歳不相応な貫禄すらある。


「まあ、あるには……」

「次の試合見てみろ」


 そう言われて俺は視線を試合している方に移すとこの試合は俺と同じ様な結末で片方が一歩も出す事が出来ず、そして剣すらも抜く事が出来ていなかった。


「……違和感」

「確かに、言われると反応出来ない速さでは、と言うより遅い」

「これを遅いと言えるとはなかなかやるなあ」


 こいつはまだ戦ってない、実力が知られていないのにやたらと上から目線。

 まあ、あの負け方をした俺よりは幾分マシな試合をするだろう。

 その試合以降は、普通にまともな試合になっていた。

 聞いた所最初の十戦程は貴族など、お偉いさんの娘や孫が選ばれる。合格は確定しているし、ここで選ばれた一般人はドンマイと言う事だ。

 そこのドンマイに俺は選ばれてしまったと言う訳。

 そして、隣のこいつはまだ選ばれていない。


「じゃあ動けない以外に何か気づいたことはある?」

「そう言われると、他には……魔術が使えなくなったな」

「おおーやっぱり見込んだだけはある、

 そこまで気付けるのはかなり……」

「第18試合、グラン・ヴェルドvs――――」

「あ、俺だじゃあ行ってくるわ」

「勝手に行ってこい」


 話していたからか、仕方なく挨拶をしたかのように見える。


(さっきこいつあんなに者詳しく話してたし……この受験の経験者、そこそこの実力だろう)



 数分後──────


「お疲れ」

「何してんだよ!終始ボコボコじゃねえか

 お前あんだけ言っといて強く無いのかよ」

「ここで勝ったらさ……楽しく無いだろうよ」


 その言葉はあまり大きな声ではなかったが、周りがざわつき始めた。


(こいつ何か変だな……)

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