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シキは気付いた

掲載日:2023/02/07

自分の奥底に澱んでいるものに敢えて名前をつけるとすれば、それは絶望だとシキは気付いた。


日々の生活を繰り返すことに不満はない。

倦怠も戸惑いさえもない。


朝起きてから床につくまでの間、毎日を繰り返すとはいえ、シキはけして単調な日々を送っているのではなかった。


時に友人を誘って羽目を外しては笑い、時にコンビニで見つけた新作を試してあまりの美味しさに無闇にテンションを上げた。

自分が幸せか不幸か選べと二者択一を迫られれば、シキは大して考えることもなく幸せを選ぶだろう。


「でも、しかし。」


シキは透き通った糸でつながれたように、動くことが許されたフィールドの中をぐるぐる回っているだけだと感じた。

明日は来る。

明後日も来る。

多分その次も。


だが、それは、未来につながっていく明日ではない。

今日と同じ日にまた戻ってくるための過程でしかない。


何よりもそのことをわかっているのに、これまでシキは、自分をつなぐ透明の糸を絶とうとは思わなかった。

それが何故なのか。

今までシキはそれを、それなりに生活に満足しているからだと思っていた。


だが、それで説明できる感情の外に何かが澱んでいく。

澱みはあふれ出ることはない。

しかし、次第に澱みは昏く、濃くなっていく。

どこにである日常を、誰でもたどれる日常を、ただ辿っているだけなのに。


他の誰でもない、かけがえのないただ一人の人。

そう教えられ、そう信じて、それでも、自分と同じような人間が隣の教室にも、またその隣の教室にもいる。そのことも教えられた。


知るたびに澱みは拭えない闇となってこびりついてゆく。

固形になって、麻痺させてゆく。


そして今日。


昨日と同じ光景を見て、明日も同じ光景を見てしまうことに、

明日を変えても、遠からずまた同じ光景を見てしまうことに。

シキは気づいた。


何よりも、そのことで心に波紋の一つも起きないことにシキは気づいた。


今日、シキはそれが絶望だと気付いた。






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