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魔導のファンタジスタ  作者: ルジリオ
二章 大会への道筋
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二人っきりの朝練

 ダーディススクラプ魔法学校の生徒、イルマ・イクオスとの一騎打ちを終えて、シュンはレイカとともにグラウンドで朝練を始めた。

 軽くウォーミングアップをして、体を温めたあと、基礎練習をする。

「『ゲイルステップ』!」

「クッ!」

 シュンは魔法を使ったドリブルでレイカを巧みにかわして抜き去る。

 今している練習は魔法を使った技の練習。

 魔法のドリブルとシュートの威力を上げるためにだ。最初はシュートを見せたあと、今はマジックドリブルの練習をしている。

 抜かされたレイカは今のドリブルを見て、

「なるほど……足から風を放出して、スピードを上げて抜き去るのね。あんなに速く動いているのに、ボールをキープし続けれるなんて」

「何度も練習すればできるさ。ドリブルは俺の十八番だからね」

 ボールに触れ続けて身に着けたキープ力。魔法を使ってスピードを上げてもその精度は落ちない。

 レイカはシュンのその技術力を目の当たりにして素直に称賛した。

「なあ、俺の【ゲイルステップ】、どう思うよ?」

「いいスピードだけど、あなたならフェイントも加えることができるんじゃない?」

 シュンは自身のマジックドリブルのことを聞いてみる。

 レイカはサッカーも上手いうえに魔法の扱いも一年生ながら上級生に負けないぐらい上手い。

 魔法を使った技に関してはレイカとともに話し合う方が上達すると思った。だから魔法を使った技の練習をしようと考えたのだ。

「どうやって?」

「空中で風を出して進む軌道を変えればいいのよ。空気を蹴るような感覚でね」

「なるほど……空気を蹴るようにか」

「最初はボールを持たないでやってみてはどう? 先生ほどじゃないけど魔法を扱うコツなら教えることができるから」

「まじか⁉ いやー、ありがたい。サッカーの練習だけじゃなくて魔法のことも教えてもらえるなんてよ」

「いいわよ、練習に付き合うならとことんやるってだけよ」

 レイカの献身的な対応に感謝するシュン。

 魔法を教えてもらえるなら教師や上級生に頼む選択肢もある。だが魔法を使ったサッカーの技を教えてもらえるならレイカが一番頼りになる。

(やはりレイカと一緒に練習するのは楽しいな)

 サッカーで互いに教えあいながら練習できる相手はレイカぐらいしかいない。

 するとシュンはあることを考えた。

「なあ、レイカ。久しぶりに『あれ』をやってみないか?」

「あれって?」

「コンビネーションパスだよ」

 コンビネーションパス。

 パスを送りあいながら前線に進んでいく技。

 ダッシュしながらの連続パスは相手を惑わせ、ハイスピードで前線を上げることができる。息の合うコンビだからこそでき、効率よく敵陣を進める技なのだ。

 パスを出し受けしながら前に進むのは高度な技術が必要であり、相手のディフェンスによってパスの軌道も変えなければならない。

「あー、それね」

「な、どうだ?」

 そしてこの技はシュンとレイカの得意技でもあった。

 ボールを一度も地面に落とさず、ハイスピードのダッシュと連携パスの攻撃はだれにも止められず、まさに二人の攻撃の要といえる技。

 しかもこの技を使ったのは二人が出会ったばかりのころ。初めて使ったときは途中で止められてしまったが、それでも思い出深い技なのだ。

「いいわ。やりましょう」

 笑みを浮かべてシュンの提案を受け入れる。

 レイカも久しぶりにやってみたいと思ったからだ。

「よし! ミスるなよ!」

「そっちも、私もパスを受け止められない、なんて情けないことしないでよね」

 二人は距離を置いて、シュンがボールを持つ。

 久しぶりの連携だ。

 きちんと息の合う行動ができるかどうか緊張する。

「行くぞ! レイカ! コンビネーションパスだ!」

「ええ!」

 レイカが走り出し、シュンはレイカが走っている場所より奥に思いきり強いパスを出してダッシュ。

 レイカは走りながらパスボールを蹴り返して、シュンもそのボールに追いついて蹴り返す。それを繰り返しながら前に進んでいく、

(いいぞ! タイミングはばっちりだ!)

 コンビネーションパスをやっても淀みなく進んでいく。久しぶりに行ってもミスすることとなく、正確なパスを繰り出しながらゴールへと駆けていく。

 しかも、前に進むほどパスのスピードも走る速度も上昇。シュートでも打っているのかと思うぐらいの速度のパスをしながら進んでいる。

(足がしびれるいいパスだぜ! たく、返すのも一苦労だ!)

(スピードもコースも厳しいところばかりね……私なら取れると思ってそのコースを出しているでしょう)

 二人ともボールを返すのが一苦労。だがだからこそ全速力で前に進めている。互いにパスの受け取り方、渡し方で実力を見極めながら。

 そしてゴール前まで移動して、

「レイカ! 足を振れ!」

「ええ! わかったわ!」

 シュンがボールがチップキック。軽く浮かせて両者が同時に足を振った。

「「いけっ!」」

 二人の足がジャストタイミングでボールにヒット。魔法陣が現れ、氷と風が混ざり合い、氷の竜巻となったシュートがゴールに飛んでいく。

『ユニゾンツインシュート』。

 二人の魔力が組み合わさり、強大な魔力の塊となって放たれたシュート。並のゴールキーパーでは止められないほどの威力が秘められていた。

「イヤッホォッ! 完璧だ! 一年ぶりにやってみても鈍ってないぜ!」

「ええ! いい連携ね!」

 久しぶりのコンビプレーの完成度に喜ぶ二人。鈍っているどころか、より速く、より的確にパスを出しながらゴール前まですすることができた。

 実力が上がっただけではない。一年ぶりのコンビプレーでも二人の息は合っているということだ。

「なあ、レイカ。やっぱり一緒にサッカーやろうぜ! 俺と君なら誰にも負けねえ! どんな守りでも崩せるぜ! エルドラドで一番のコンビになろう!」

「…………その言葉は嬉しいけど、前にも言ったでしょう。私はヴィルカーナ家の長女としてしてふさわしい当主になるために勉強しないといけないって」

「――あっ」

 ついサッカー部に勧誘してしまうシュン。

 しかしレイカの答えはサッカー部には入らない。それは変わらなかった。

「ご、ごめん。さっきのプレイで興奮しちまって」

「謝らなくていいわ」

 一瞬、気まずい空気が流れる。

 しばらくするとレイカの方から切り出して、

「そろそろ教室に行かないといけないんじゃない。学院にいるのに遅刻しました、なんてことしたら恥ずかしいわよ」

「もうそんな時間か。レイカ、練習に付き合ってくれてありがとう」

「私もいい運動になったわ。じゃあ、私は先に教室に行くから。また今度ね」

 グラウンドの外のベンチに置いてあった鞄を手に取り、教室に向かうレイカ。

 シュンも朝練を終えて、すぐさま教室に向かうことにした。

「……なんであんなこと言っちまったんだろうな」

 レイカはサッカー部に入らない。家を継ぐために部活動をしないことを決めた。

 だがシュンはレイカの意思を知っていても、一緒にサッカーがしたいと、強く思った。

【エルドラドサッカー日誌】

 ユニゾンツインシュート

 二人が魔法を発動させて、同時にボールを蹴ってシュートを放つ連携技。

 複数人で行われる合体魔法シュートの基礎とも言える技であり、息の合うコンビが得意とするマジックシュートである。

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