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魔導のファンタジスタ  作者: ルジリオ
二章 大会への道筋
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サッカー部、ようやく始動!

 昼休みのサッカーを終えて、午後の授業がまた始まる。

 辞書のように分厚い教科書と魔法で生み出した空中液晶黒板の文字とにらめっこして、放課後。帰宅、そして部活動の時間。

 シュンはこの時間を待ってた、と言わんばかりに、すぐさま教室を飛び出す。

 部活動の時間、すなわちサッカーの時間だ。

「ほら、早く行くぞエスバー。先輩たちが待っているぜ!」

「……ま、待って……早いよ……」

 校舎を出てダッシュで部室に向かうシュン。エスバーも追いかけるがシュンはどんどん離れていく。

「あ?」

 部室前にたどり着くシュン。

 なんと目の前には大人数の人が集まっている。

 この学院の生徒たちだ。

「なんだありゃ。っておいエスバー、俺の後ろに隠れるなよ」

「…………」

 多くの人に人見知りを発動してしまったエスバー、シュンの背後に隠れる。まだ距離もあるのに。

「シュン、早いな」

「マデュランさん!」

「うはー、大人数ですね」

 人だかりに注目しているとマデュラン、そしてサッカー部三年生たちと合流。ほかの三年生たちも驚いている。

「あの人だかりは?」

「驚いたか? あそこにいる人たちはサッカー入部希望者だ。クアトル先生から聞いた」

「えっ、あの人数全員が?」

 あのひとだかりのことを知っていたマデュランがそう答える。

 目の前にいる人たちはサッカー部に入部したい生徒たちである。

「俺たちが選抜戦の試合に勝ったからだな。大注目されてサッカーがやってみたいって思った奴が部室に集まっているってわけか」

「そうだったんですか。それはよかった! サッカーは十一人でできるといっても、十一人だけじゃあ練習の幅も狭まるし、いくら治療師がいるといっても試合中に大けがしたら交代する人も必要だったし」

「そう? 正直部員なんてあんまり来なくてよかったのに……」

 トイズがため息をつきながらそうこぼした。

「でも、入部してくれるのは嬉しいことですよ。サッカーに興味を持ってくれて、一緒に頑張って優勝を目指す仲間ができた。良いことづくめです」

「それはあなたの感想でしょ。はあ、十一人ちょうどでよかったのに。スタメン争いに巻き込まれないし」

「おいおい、一年の前で弱音吐くなよトイズ。新入部員に後れを取るほど下手じゃあねえだろ。サッカー部を作った時から一緒にやってきたじゃねーか」

「そーそー、トイズちゃん、もーっと自信もって」

「……そうだけど」

(確かに部員が増えれば、スタメン争いも激しくなるだろう。でもやっぱり人が多いといろんな練習ができるようになるし、なにより紅白戦ができるのが一番嬉しいな)

 十一人だけではやれることも少ない。部員が多いければ色々とやれることが増える。サッカーを楽しみたいと思って部活に入ってくれるなら、それは嬉しいことだ。

 あと、来年新入部員を必死に探す必要がなくなるのがいい。部員がいなくて試合に出れませんでした、なんてことが起きないのはいいことだ。

「やあやあ! みなの衆! サッカー部によく来てくれた!」

「ワタシ達のサッカーを見に来てくれたのかな!」

「それとも、Aクラスとの熱い勝負のことを語ってほしいんだな!」

(なにやってんですか、アイメラさん)

 新入部員に声をかけようとしたシュン。すると部室の入り口にアイメラ兄姉が話していた。

 たくさん新入部員がやってきて目立ちたいのか、それとも前の試合のことを自慢したいのか。

「いや、お前らの話はあんま興味ないぜ」

「そんなことよりサッカーさせてよ」

「どっちかというと、シュン君や先輩たちの話の方が聞きたいな」

「なんだとー!」「なによー!」

 あまりにも冷たい対応にアイメラ兄姉、怒る。

 そこまで興味を持たれていないのか。もしくは自分たちのサッカーの実力を低くみられているのか。

 トノスが自分と同じクラスの生徒に掴みかけて、

「うお、なんだよてめー!」

「オレらだって他のメンバーよりもつえーだぞ!」

「そうよ! ワタシ達の実力、見せつけてやるわ!」

「こら⁉ 勝手に掴むな! うわー⁉」

 そういってボールと共に同級生の首根っこ掴んでグラウンドに走っていく。おそらくサッカーをしにいったのだろう。アイメラ兄姉は自分たちの強さを証明するために。連れ去られていった同級生はご愁傷様である。

「あのバカども……まあ、普通にサッカーするならまあ、いいか。イタズラしたら止めに行くが」

「あ〜あ、部員が増えるってことは、これで魔導人形の整備する必要なくなっちゃうのかな〜」

「えっ、あの人形の整備モーグリンさんがしていたんですか?」

 そういえばおっとりした雰囲気を醸し出しているモーグリン。こう見えて手先が器用で魔導道具の修理なんてお手のものだということを、シュンは思い出した。

「うん。人形を整備するの、とっても面白いよ〜。不備があっても、ちょちょいのちょいだね〜」

「はえー、凄いですね」

「チコ、使う機会はあるさ。新技の練習するなら人形相手なら容赦しなくていいからな」

「う~ん……そだね〜。魔法技の練習とかに使うといいかも。それじゃあ〜もっと頑丈にしてみるね〜」

「ああ、君の魔導人形は手強いからな。倒しがいがある」

(先輩たち、物騒だな……)

 これが異世界サッカーのプレイヤーの思考というものなのだろうか。

 サッカーの試合で慣れたが、言葉で聞くと今でも驚くことがある。

「やあやあ、みんな! 元気してる?」

「クアトル先生!」

 先生も部室前にやってくる。とてもウキウキとした気分しているのかステップ気味の歩き方をしてきた。

「ねえねえ、いい話ととってもいい話、どっちから聞く?」

「とってもいい話は部員が来たことですよね」

「そうそう! いやー、これも部員の皆が選抜戦で勝ってくれたおかげだわ!」

「それで、もう一つのいい話というのはなんでしょうか?」

「なんとね、練習試合を組みました!」

「練習試合!」

 それは確かにいい話だ。

 その話を聞いたサッカー部部員全員が喜ぶ。

「まじか! そいつは初めてだぜ!」

「今まで部員が少なかったから、練習試合を申しこむことができなかったんだよね〜」

 二年、三年にとって他校との試合は初めてである。部員が少ないうえに、地区大会はAクラスチームが出てしまったため、試合ができる機会がなかったのだ。

「本当ですか!」

「…………!」

 そして一年生であるシュンとエスバーも試合ができることに喜ぶ。

「監督、対戦の相手はどこの学院でしょうか?」

 シュンは他校のことは案外知っている。

 サッカーが強い学院にサッカー特待生になるための試験によく受けているため、その時の他校の情報を目にしたのだ。

 もし覚えている学院と戦えるのなら、実力のある学院をサッカーができるということ。

 ワクワクしながらクアトルからどの学院と勝負するのか聞くと、

「ダーディススクラプ魔法学校よ」

 シュンはその学校のことを知っている。

「あそこ……噂で聞いたんですけど、不良が集まる学校だって聞いたんですけど」

 だがシュンがこの学校の名前を目にしたのはサッカーに関することではなかった。サッカーが強い学校だということを知ったのはある情報を知った後だ。

 それはダーディススクラプ魔法学校は札付きの不良学校。

 授業のボイコットにケンカは当たり前。悪質で陰湿ないじめもあった。

 他校に迷惑をかけて、街の魔導警備員のお世話によくなっている、などなど。

 名前を知っていればその学院に入学する気なんて全く起きない。もし行くとするならば問題児か家の近くにこの魔法学校があったから仕方なく、そんな理由ぐらいであろう。

「まあ、そうだな」

「でもーそれは昔の話だよ。今は転校する生徒もいなくなったー、てっ聞いたね」

(転校する生徒は多かったのか……)

「不良の溜まり場なのは変わってないが、他校や街の人に迷惑をかけるようなことは減ったな」

「へー」

 今は不良の生徒はいるものの平和にはなっているらしい。

 でも話を聞く限り、普通の学校に変わる前のダーディススクラプ魔法学校はかなりヤバい所だったことがわかる。噂で聞いたことは間違いではなかったようだ。

「まあ、試合ができるならいいじゃないか」

「だな。もし襲いかかってくるなら蹴り飛ばしてやりゃあいいし」

「リンナイト、あなた過激よ」

「リンナイトさんも根はヤンキーなのではありませんか?」

「んだと?」

「ほ、ほら! その睨みつけるような眼ですよ!」

 リンナイトの威圧にビビるミンホイ。

 マデュランがたしなめていると、シュンはクアトルから言われた練習試合について考えていた。

(練習試合……! そして新入部員! いやー、充実してきた。この学院に来たときは色々と大変だったが、しばらくはサッカーを楽しめそうだぜ)

 マギドラグ魔導学院に入学したときは、サッカー部員は少ない、公式の大会に出られない、校内戦で負けたら即退学、など中々に大変なことだらけであった。

 だが今はそれを乗り越えて、充実な学院生活を送れるようになった。

(試合なら勝つ! 楽しみだ!)

 サッカー部に新たに部員加入。

 中には元からサッカー部にいてやめたり幽霊部員になった生徒たちも戻ってきた。

 サッカー部の半数は不満を持っていたがマデュランが必死に怒りを鎮めていたとか。

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