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魔導のファンタジスタ  作者: ルジリオ
二章 大会への道筋
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プロローグ いつも通りのサッカー日和

 オラリマの街のあるところ。大人子供学生、様々な声でにぎわっている。

 人が集まって芝のグラウンドでサッカーボールを蹴っている。

 ここはオラリマのサッカー広場。サッカーをしたいなら誰もがここで集まってサッカーをする。

「見ろ! これが僕のカーブシュートだ!」

 フィールドでシュートを打つ構えを取っている少年、ワドゥはボールを思いきり蹴る。

 強烈な横回転をかけたシュートが炸裂。ブーメランのように大きく曲がってゴールに向かっていく。

「なっ⁉」

 止めようと動こうとしていたゴールキーパーは真横に曲がっていると錯覚してしまうほどのカーブシュートに驚くも、なんとか体を動かしてシュートを止めようとした。

 するとボールがゴールキーパーの手をすり抜けて――ゴールポストの外に飛んでいった。

「あー、外れちゃった……」

 回転をかけすぎたのが原因か。曲がりすぎてゴールから外れてしまった。

「あっ!」

 フィールドにいる学生は外れたシュートボールの先に人が立っているのを見て驚いた。

 このままではボールが彼に当たってしまう。

「避けて!」

「おっと!」

 ボールをよけてくれ、そう叫ぶと男はそのシュートボールを軽く蹴り上げて、そして打ち上げたボールは地面に落ちていき、胸で受け止める。

 無駄のない動きで繰り出されたこの動作。

 そして受け止めたボールを山なりの緩い軌道を描くように、力を加減させた蹴りでフィールドにいる子供たちにボールを返した。

「危ないね。でもいいシュートだな」

 ボールを止めたのはシュンだ。

 マギドラグ魔導学院の運動用魔導服を身に着けて。

「よっ、ワドゥ」

「あー! シュン!」

「久しぶり!」

「シュンだ!」

「ダイナミックなサッカーを見せてくれるの⁉」

「見たい! 私も真似したい!」

「一気に大人数集まってきたな。みんな、元気してる?」

 サッカーをしている子供たちがシュンに集まってきた。久しぶりに出会えて話がしたい、サッカーのことをもっと知りたい、だからシュンに教えてもらおうとシュンの周りに子供たちが集まっている。

 急に子供たちに囲まれたためちょっと戸惑うが、それでもサッカーを一緒にしたい、サッカーのことを教えてほしい、そう言われるとサッカー好きのシュンにとってはとても嬉しいことである。

「元気してるよ! そっちは元気どころか大活躍だね!」

「大活躍? それはいったい?」

「シュン、あのマギドラグ魔導学院の生徒になったんだよね?」

「よく知ってんな。あっ、この服を見りゃわかるか」

「知っているも何も。この街じゃあ君はもう有名人だよ! ほら掲示板の新聞紙に君のことが載っているよ」

「え、まじ?」

 いつの間に新聞紙に載るようなことをしたのだろうか。

 気になってサッカー広場の入り口に立てられている掲示板を見てみる。

『マギドラグ魔導学院選抜戦 サッカー部の新星、シュン』

 載っている。

 シュンのことが。

 文章だけでなく大きな写真も。

 選抜戦での試合の内容も、シュンの活躍がほとんどだ。

「本当だ! これってマギドラグ魔導学院の選抜戦ことだな」

「そうだよ。なんせあのAクラスに打ち勝ったんだよ! 新聞に載らない方がおかしいって!」

「あんな魔法が上手に使えるAクラスの人たちに勝つってとっても大変なことなんだよ!」

「見たかったなー! シュンが活躍するところ!」

「はぁ……」

(掲示板に載っているってことはこの街のいたるところにこれが貼られているのか……ちょっと照れるな)

 評価されるのは嬉しいが、ここまで大きく取り上げれると照れてしまう。

 サッカーで戦ったシュンも彼らの魔法は驚愕したものであるが、この街にとってもマギドラグ魔導学院のAクラスの存在は大きいものらしい。

「ねえねえ、どうやって勝ったの?」

「しいていうならサッカーは魔法だけじゃあないってことさ。運もよかったのもあるけど」

「ねえねえ、シュンが勝ったってことは、シュンたちがエルドラド魔導祭に出れるってこと?」

「そうさ!」

 エルドラド魔導祭。

 この大陸の魔導学院に在学している生徒たちが磨き上げた魔法の技術をお披露目する祭り。

 この祭りで活躍して名を残せば、国から認められる魔導士になれる可能性がグッと高まる。そのためどの生徒も真剣に大会に臨んで努力し、実戦で結果を残そうと頑張るのだ。

 そしてこのエルドラド魔導祭にはサッカーも競技として入っている。

 シュンはマギドラグ魔導学院のサッカー部として出る予定である。

「シュンが出るなら応援するよ!」

「ありがとよ。優勝するためにがんばるからさ」

 シュンの目標はそのエルドラド魔導祭のサッカー大会で優勝することである。サッカーが大好きで、だからこそ頂点を目指したい。

 それに自分を慕ってくれている子供たちに応援をされたのだ。それに応えるのがサッカープレイヤーというもの。

 シュンの闘志がより燃え上がる。

「ところでシュン、部活は?」

 シュンはサッカー部になった。ならばマギドラグ魔導学院のグラウンドで練習するのではないかと疑問に思っていると、

「自主練になったからよ。この場所でサッカーしたいと思ってな。やっぱり、サッカーはいろんな人とやるのが一番楽しいのさ。新しい刺激を受けて練習にもなる」

「へー……学院から離れても大丈夫なの?」

「大丈夫。監督から許可をもらったよ」

 チーム練習は終えたから自主練習していいよ、とサッカー部監督クアトルから言われたのでシュンはサッカー広場に行って練習すると伝えた。

 クアトルは、いいよ、とシュンが学院から離れてサッカーの練習をすることを認めたのだ。

(それにサッカー部じゃあ実践に近い練習ができないからな……そろそろ部員増えねえかな)

 シュンがサッカー広場に来た理由は実戦練習が目的。

 ここなら人が多いし、夕方の時間なら子供たちだけでなく部活活動を行っていない学生や、午前で仕事を終えた大人、そしてたまに町の外の危険な場所を探索する冒険家もいたりする。

 練習相手には事欠かさないのだ。

「じゃ、サッカーしようか! 誰でもいいから俺も混ぜてくれ!」

「じゃあ僕のところに入ってよ!」

「ちょ、ワドゥずるい! 私たちのチームに入ってよ!」

「ほかのチームに入って! 今度こそシュンを止めてやるぞ!」

 シュンは今日もサッカーを楽しむ。

 それはどんな日でも変わらないことだ。

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