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魔導のファンタジスタ  作者: ルジリオ
一章 魔導学院、入学へ
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魔法陣の抜け道は

『決めた! 決めた! 逆転だ! フェネクス選手のシュートがついに決まった! Aクラスチーム! 逆転です!』

 ついに試合に大きな動きが。

 後半にAクラスチームが二点取って逆転に成功したのだ。

「よしっ! 私はやったぞ!」

「やった! あの新入生がゴール目前まで来たときはだめかと思ったよ!」

「フェネクスさんの『エクスプロージョン』! やっぱり凄まじいですね!」

 三度目のマジックシュートで点を取れたことにグッと握りしめてガッツポーズ。ようやくチームの皆の期待に応えられたこと、キャプテンとして相手から点を奪い取れたことに喜んでいる。

 そしてチームメイトもフェネクスの活躍に喜んでいた。

「流石! やっぱこの学院のトップは違うな」

「こりゃ今年もAクラスが全ての競技勝っちまうか?」

「もう決まったようなものじゃないの」

「サッカー部の連中も頑張ったんだけどな」

 観客もAクラスが勝利するだろうと言い張っている。試合後半を有利に進め、逆転したことが理由であろう。

「やられた……あんな強引に守りに来るとは」

 観客席にいるレイカが先ほどの攻防戦を見てそうつぶやく。

 いつの間にかゴール前まで移動して何が何でもゴールを決めさせないという気迫で守ったフェネクスの執念には驚く他ない。本当に半月程度しかサッカーをしたことがない者の実力なのかと疑ってしまうほどだ。

「シュン……」

 心配そうにサッカー部チームを見守るレイカ。

 自分はここで試合を観戦するしかない。そう思いながら。

「大丈夫か‼ エスバー!!」

「……だ、大丈夫……腕が持っていかれる前に弾かれたから……情けない話ですけど……」

 吹き飛ばされたエスバーは無事であった。もっとも点を取られてしまったため表情は暗い。

「すいません……ゴールを決められなくて」

 サッカー部が集まり、シュンが点を取れなかったことに頭を下げる。

「いや、今のは仕方ない。まさか急にフェネクスがカットしてくるとは思わなかった」

「確実に、点が入ったと思ったのですがね……お相手のプレイに見事という言葉しかありません」

 先輩たちのフォローが入るが、シュンは険しい顔を崩さない。

(マズイな……ストライカーとして、あの場面は決めるべきだったのに)

 悔しがり強くこぶしを握りしめる。

 ゴールが直前まで着た瞬間、心のどこかが決めた、そう思ってしまったのだろう。シュン本人が意識していないところで。

 それが原因でフェネクスにカットされてしまった。

 千載一遇のチャンスを逃してしまったのだ。

(俺は負けるにはいかない。エルドラド魔導祭に出場するのは俺たちだし――負けっぱなしでいられるかよ!)

 このままAクラスに勝利を渡してなるものか。

 フェネクスも負けず嫌いだが、シュンもサッカーに関してはそれ以上だ。絶対に勝ってやるという勝利への執念が瞳から見られる。

「シュン君!」

「クアトル監督!」

 どうやって点をもぎ取ってやるかと考えているとクアトルがやってくる。心配そうな表情を浮かべて。

「体は大丈夫? だるくない?」

「は、はい。何も問題ないですけど」

 心配そうに聞いてきたので体は何も異常がないことを伝える。

 痛みもだるいような感覚もない。体はいたって健康体、プレイに支障が出るような異常はなにもない。

 ひょっとして先ほどのフェネクスに『豪快なカット』で吹き飛ばされたことが心配になったのかと思って心配になってきたのか。

「そう、それはよかった。シュン君、かなり魔法を使ったから君の体内にある魔力のことが少し心配になって」

「それは確かに……」

 どうやら魔力の残量のことが気になって聞きに来たらしい。

 そしてクアトルの言葉にシュンは思わず考え込む。

(いくら『ゲイルステップ』が魔力の消費量が低い魔法だからって、マジックシュートを打った後に連発したらかなり減るよな)

 シュンは風の魔法にバリアの魔法だって使った。

 シュンの体内に保存できる魔力はほかの人よりも少ない。それこそマジックシュートを連発して放つことができないぐらいは。

 あそこまで連続で使ったのに眩暈を起こすどころか、体が重くなるような感覚もない。

 少し疑問に思った。

 いつの間に自分はここまで魔法を多く使えるようになったのかと。

「それはAクラスの『マジックフォースサークル』のおかげね」

 思考にふけっているとトイズがその答えを言った。

「そうね、トイズちゃん」

「監督、ちゃん付けはやめてください」

「えっと、トイズさん。『マジックフォースサークル』のおかげというのは」

「簡単なことよ。あの領域魔法は魔法に関する性能を向上させる魔方陣。当然、魔力を回復することや、魔力の消費を抑える効果だってあるのよ」

「なるほど」

 そのような効果もあったとは。あの領域魔法はまさに魔導士をサポートすることに特化した魔法なのだとシュンはあらためて思った。

「まあ、あの魔方陣を操作している人は魔力を消費していくだけなんだけど……そこはさすがAクラス様ね。操作している人を複数人にしつつ一定時間で交代させているんだわ。後半戦が終わるまでは発動し続けることができるんでしょう」

「そうですか。あの魔方陣をとめることはできないんですかね」

「無理よ。複数人で操作しているから一人ぐらい妨害しても意味なし。ボールを持っていない選手に攻撃仕掛けたら一発でレッドカードよ。魔方陣を崩さない限り止まらないわね。もっともAクラスの作った領域魔法の魔方陣を壊せるのなら、とっくに私たちが行動しているわよ」

 あの魔方陣がまた発動されると思うとかなりきつい。

 なにせAクラスの魔法の腕はサッカー部より一枚も二枚も上。差がありすぎる。

『マジックフォースサークル』を発動させたAクラスチームは無敵に近い。しかも先ほどのカウンターが失敗し、さらには逆転に成功したことによって、Aクラスはより守りに力入れてくるであろう。

(あの『マジックフォースサークル』の中でなら俺は魔法をいつもより多く使えるってわけか……だけど逆にAクラスの生徒も強力な魔法を連発できるっつーわけだ)

 攻めるのも一苦労だったのに、さらに堅固な守りを敷いてくると考えると思わず頭を抱えてしまいそうになるほどだ。

「まっ、とりあえずシュン君が大丈夫でよかったわ」

「監督、シュンとの話は終わりましたか」

「うん、終わったわ。マデュラン君。それで何か用?」

「どうしますか? これからどうやって点をとりますか?」

「そうね……」

 そう聞かれて悩みこむクアトル。ほかのサッカー部のメンバーも不安げな表情をしている。

 後半になって試合のペースはAクラスに傾いている。しかも逆転されてしまい、自分たちは無理にでも攻めなければいけない状況に追いやられた。

 だがしかし、Aクラスの得意の魔法を活用したサッカーの守りは固く、生半可な攻めでは逆にカウンターを仕掛けられてしまうのが落ち。そうなれば追加点を取られてサッカー部の敗北は確実となってしまう。

 そんな状況に追い込まれたがゆえにサッカー部のメンバーは心の中は不安に満ちている。

「……」

 このチームの雰囲気を見て、シュンはまずいと感じる。

 完全に負けの流れ。このままでは逆転のチャンスさえもこない。一方的な試合が展開されていくであろう。

(このまま負けっぱなしでいられるかよ!)

「先生、皆さん。少しいいですか」

「シュン君?」

 この状況を覆すには流れを変えるしかない。

 ではどうすればいいか。

「――俺に攻撃の指揮を任せてくれませんか?」

 勝利の風向きはこちらに変えるには自身のプレイで証明する他ないであろう。

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