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魔導のファンタジスタ  作者: ルジリオ
一章 魔導学院、入学へ
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領域魔法の攻略戦 後編

『試合後半戦始まって十五分が立ちました! ここでサッカー部がAクラスチームの陣地に入って攻撃が始まる!』

 Aクラスチームキャプテン、フェネクスの攻撃を阻止して攻撃に転じたサッカー部。点を奪うためサッカー部攻撃陣、一斉に前に進む。

 先陣を切っているのはボールを持っているプロスだ。

「邪魔邪魔よ! どけどけどけぃ!」

 全力でドリブルするプロス。サイドラインの近くで走っている。

「アイメラ! 通させるか!」

 目の前にフロストンがいる。しかも魔方陣を展開している。『コールドミスト』でプロスからボールを奪う気満々である。

 正面から挑むのは危険だ。ドリブルで突破しようとしたら冷気の霧で体を凍らされるような

(……ぶっ飛ばしたいわね)

 正直にそう思ったが魔法の準備をしているフロストンにそんなことしたら返り討ちになるのは確実。突撃は下策だ。

「プロスさん! パスで回していきましょう!」 

「ええ! ほら、シュン君!」

 とっさにプロスがシュンにボールをパスする。シュンから前に離れた場所にパスを出す。シュンはボールを受け取るためにダッシュでプロスの出したボールに追いつきに行く。

「あんなパス! カットできるわ!」

 Aクラスメンバーのタルチュラがパスボールをカットしに来る。

 シュンはボールによって来る選手、そして周りにいる選手を確認して、

「よし、奪った――」

「そこ!」

「……え?」

 ボールをカットした思ったタルチュラに一瞬で近づいて、横を通りながらボールを奪った。あまりにも鮮やかに奪ったためタルチュラは足元にボールがなくなったことに気づいたのはシュンがボール奪って数秒後である。

『あーっ! いつの間にかシュン選手の足元にボールが! ディフェンダー顔負けのディフェンス! ボールをカットしたタルチュラ選手もこれは驚き!』

「魔法みたいなプレイしやがって……この――」

「その距離なら!」

 近くにいたタウロスが魔法を唱えてこようとしてきたため、魔法を食らう前にシュンはタウロスに近づく。そして得意の足さばきでボールを拾い、足首にボールを固定させてそのまま回転しながらタウロスを抜く。

「なっ――」

 確かに魔法は強力だ。今は領域魔法の『マジックフォースサークル』でさらに強化されているためより危険。

しかし唱える瞬間は隙だらけ。

 シュンにとって近い距離で魔方陣を展開することが抜いてくれといっているようなもの。魔法が協力でも発動するにはどうしても時間がかかる。その時間がわずかでもシュンなら抜ける。

 シュンのドリブルは誰にも止まらない。

「何度も魔法食らっているんだ! そう同じ手はくらわんぜ!」

 相手ディフェンダーを抜けばゴールキーパーが目の前にいる。

 ゴールキーパーも『マジックフォースサークル』で魔法のキャッチングが強力なものになっている。

 もっと近づいて、ペナルティーエリア内で打たなければそう簡単には決まらないだろう。

「お前にはシュートを打たせないわ! 『ロックタックル』!」

 だがしかし、強力なシュートを持っているシュンを容易くシュートを打たせるような真似をAクラスのチームは許さない。

 ディフェンダーリデッドの石をまとったスライディングタックルが炸裂。しかもスライディングをしている途中で、足についている岩が地面に当たってそれが石となって、シュンに石の弾幕となって襲い掛かってくる。

 これも『マジックフォースサークル』によって魔法が強化されたからだ。

 抜き去ろうにも、普通にいけばあの硬い石に包まれた足で吹き飛ばされるだろうし、よけようにも石の弾幕がシュンを襲う。

 ここで攻撃を止められるのはマズイ。

 シュンは迫ってくる岩の魔法攻撃を見ながら、

「――だったら! 『ゲイルステップ』!」

 シュンはすぐさまに魔法を発動。風をまとって高速ステップだ。

 今度は魔法の威力を見誤らず、丁寧にボールをタッチして風のように移動する。

 これで抜き去るのか、

 リデッドは気合を入れて魔法の出力を上げようとした。

「えっ⁉」

 だがここでありえない光景を目にする。

 シュンは魔法を使ってドリブルをしてきた。

 ――進む方向はゴールとは逆に進んでいた。

 なんとシュンは後ろ向きに走り出したのである。

 これには観客驚き。

『ここで大きく後ろに下がった⁉ 魔法から逃げたのでしょう!』

 ボールを取られないようにするならその選択は悪くはない。

 しかしこれではせっかく相手陣地に踏み込んだのに、ここで離れるのは必至に相手を抜き去ってきた意味がなくなる。

「シュンを捕まえろ!」

「なんでもいいから弾き飛ばして!」

 さらにAクラスのチームがシュンをチェイスしてボールを奪いに来る。このままではボールを奪われてしまうのは時間の問題。

 シュンだってただ逃げるだけでは意味がないことが分かっている。

 とるべき選択肢は一つだ。

「モーグリンさん!」

『ゲイルステップ』でハイスピードに移動しながら、空中で体を動かしてボレーパス。空中でありながらも鋭いパスを繰り出した。

「え、はや!」

 不意にパスを出して驚くAクラスのチームメンバー。反応して足をのばしたがリーチが足りない。

シュートのような勢いのあるボールがモーグリンの胸元に届いた。

 シュンは魔法から逃げつつ味方にパスを出してシュートを味方に託したのだ。

「頼みますよ!」

「うん!」

 落ち着いて受け取ってゴールに見るモーグリン。

 距離はまだ遠い。自身のキック力ではゴールを奪えない。

(パスなら私も!)

「トノスくん!」

 ミッドフィルダートノスにパスを出す。パスは高めのループ軌道。空中でシュートを打たせるために放った。

 そしてトノスはすでに空中にいる。

「へっ! 決めるぜ!」

「やらせるか!」

 空にいるトノスにやすやすとシュートを打たせはしない。ペナルティーエリアまで下がっていたフロストンがボールに向かって大地を跳ねて空へと向かう。

 そしてボールを奪おうと魔方陣を展開。

 魔法でトノスを妨害するつもりだ。

「こいつ! ぶっ飛ばしてやる! 『フレイムシュート』!」

「お前にはシュートを決めさせん! 『アイスシュート』!」

『ここで両者のマジックシュートのぶつけ合い! 空中戦が勃発!』

 両者の魔法の蹴りが炸裂。

 炎と氷の魔法がぶつかり合い、火花と氷雪が二人の空間で舞い散る。

「ぐぐぐっ! うわ⁉」

「なっ⁉」

 決着は互いに吹き飛ぶ。

 魔法ではフロストンの方が上だったが、先に蹴れたのはトノス。そのおかげでシュートの威力が互角となり、互いに吹き飛んだのだ。

「ボールを拾え!」

「相手に取らせちゃダメ!」

 まだサッカー部の攻撃は終わっていない。Aクラスも守りに全力だ。

 そして落ちたボールを両チームが追いかける。

「うん!」

『アイメラ姉、プロスがボールに先に触れた! そして魔法のシュートを放つぞ!』

「『フレイムシュート』!」

 地上で炎のシュートがゴール向かって飛んでいく。

 誰かに妨害されるよりも早くシュートを放つ。

「こい! 俺もAクラスのメンバーだ! 『リフレクトシールド』!」

 これ以上点は上げない。ドレイクの目が本気だ。絶対に止めてやつという気迫が見える。

全てをはじき返す魔力の盾が右手に現れる。

 そしてプロスのシュートに真正面から受け止めた。

「くぅ!」

 ペナルティーエリア内でのマジックシュート。いくらAクラスといえど顔を歪ませてしまうほどの威力だ。

 それでも維持でボールを止めようと魔力の出力を上昇させて魔法の盾をより堅固にする。

「ぐあっ!」

 ドレイクははじかれてゴールに転がり込む。

 そしてボールはなんと、地面に点々と転がりながらゴールから離れていった。決死の守りでボールをキャッチすることはできなくても弾くことはできた。失点を防いだのだ。

「そんな⁉」

『ドレイク選手! 至近距離でのマジックシュートを何とかはじく! 守護騎士の如き守り!』

「まだだ!」

 こぼれたボールにダッシュで追いつくシュン。まだ攻撃は終わっていない。

『シュン選手がボールに追いつく! シュートを打ち込むぞ! これが決まれば一人で三点取ることになります!』

「お前だけにはシュートは打たせんぞ!」

 Aクラスのディフェンダーが決死の表情でシュンに近づいていく。

 シュンのシュートの威力を知っているため、彼にシュートを打たせてはいけない、打たせても自分たちが盾になって防ぐ、何が何でもシュンに点を決めさせてないために全力で防御してくる。

(ここは――)

 この時、シュンの脳裏に浮かんだのはここでどのようにボールをゴールにぶち込むか、であった。

 マジックシュートを打つべきであると考える。ゴールキーパーは体勢を崩している。ならばシュートを素早く打つべきだ。

(……いや、違うな)

 シュートを打つのは悪手だと本能で察知した。

 そしてシュンは魔方陣を発動させて、

「抜き去る! 『ゲイルステップ』!」

 選択したのはドリブルだった。

 風と一体となったドリブルでディフェンダーを抜き去っていく!

「えっ⁉」

「ここでドリブルだと⁉」

 Aクラスチーム、シュンの選択に困惑。

『シュン選手⁉ シュートを打たないぃ⁉』

 シュートではなくドリブルだということに。こぼれ球をねじ込んでくると思っていたが、まさかのシュートはなし。

 そして先ほどのトノスとの空中の一騎打ちで弾かれて、地面に倒れているフロストンはシュンの行動にすぐさま理解する。

「止めろ! シュンはボールと一緒にドリブルでゴールに入り込むつもりだ!」

「なにっ⁉」

 点を取るには何もシュートだけではない。

 ドリブルでゴールキーパーを抜いてゴールに入り込むことだって点を取れる。

 シュンがドリブルを選んだのは目の前にいるディフェンダーたちがシュートをマジックディフェンスで止められる可能性があると思ったためだ。ならドリブルでディフェンダーとゴールキーパーまとめて抜き去ればいいと考え、『ゲイルステップ』で相手の守りをすり抜けてゴールを奪おうと行動した。

 フロストンはすぐさま気づいたが、シュンはすでにディフェンダーを風と共に抜き去る。

 スピードを落とさずディフェンダーの横をすり抜けながらステップを刻む。その華麗で隙なき動きにAクラスの守備陣、反応はできても防御が間に合わない。

「決める!」

 シュンはそのまま走りこんでゴールにボールとともに飛び込んだ。突風がゴールのネットを揺らす。




「Aクラスを! マギドラグ魔導学院の生徒をなめるな!」

 突如、紅い衝撃がシュンの体を襲う。

「ぐあっ!」

『ふぇ、フェネクス選手がゴール前まで下がってきた! そしてシュン選手のドリブルを炎をまとった足! 『豪快なカット』で間一髪止めたっ!』

 あと数センチでゴールに入り込む、その瞬間にェネクスの足の一振りがシュンの足元のボールに炸裂し、そしてボールごとシュンを蹴り飛ばした。

 シュンの奇策であるシュートに見せかけたドリブルを見事止め切ったのだ。

(いくらドリブルが上手かろうとディフェンダーとゴールキーパーを抜くように動けば、ドリブルの軌道は予測できる)

 シュンの進むルートを予測し、すぐさまゴールの前に現れてシュンに『豪快なカット』を叩き込むことができた。これも味方がシュンにシュートを打たせないように動いた結果だ。

「ドレイク! 前に蹴り飛ばせ!」

「はい! 『フレイムシュート』!」

 フェネクスに大声で指示されたドレイク。すぐさま体勢を立て直して、弾かれたボールにすぐさま追いついて、マジックシュートでボールを思いきり蹴り飛ばす。

このシュートはゴールを決めるためのシュートではない、これ以上相手チームの攻撃を防ぐためのシュートだ。

『Aクラス! やってみせた! サッカー部の猛攻を防いでみせました! シュン選手の攻撃を防いだフェネクス選手のファインプレー!』

 見事守り切ったAクラスチーム。そしてサッカー部が深く攻め込んだということはその分守備ががら空きということ。

 Aクラスチームにとって得点のチャンスがやってきた。

 蹴とばされたボールはフォワード、ケットシーが受け止めて前に進み始めた。

「させるかっての! 『ストライクタックル』!」

「キャ⁉」

『おっと! オーバーラップしていたリンナイトの目にも止まらぬスライディングがケットシー選手に襲い掛かった!』

 リンナイトがケットシーを吹き飛ばしてボールを奪い去る。サッカー部の攻撃が失敗していた時点でセンターラインまで上がって相手のフォワードの攻めを潰そうと考えていたのだ。

 ボールを奪って前に大きくボールを蹴りだそうとしたその瞬間、

「このボールは絶対に渡さんぞ!」

「うおっ!」

『これは上手い! ドゥラハン選手の決死のチャージがリンナイト選手を吹き飛ばした!』

 Aクラスチームも簡単にボールを取られたりはしない。奪われてもすぐに取り返せば取られたというわけではない。攻撃がつぶれたその時がボールを取られた、なのだ。

 先ほどの味方のすさまじい守備を見て、絶対にこのボールは渡すか、と必死にボールを奪い返すドゥラハン。

 そして前に走ってシュートを打ちに行こうと考えていたその時、

「ドゥラハン! 私に!」

 自陣のゴールから走りこんできたフェネクスが叫ぶ。

 全力疾走でセンターラインまで上がってきたため、サッカー部の選手は追いかけても追いつけていない。サッカー部の攻撃陣がフィールドの中央にいない今、フェネクスの超ロングシュートのチャンスがやってきたのだ。

「フェネクスのシュートを打たせるな!」

 サッカー部ディフェンダー陣、キャプテンのマデュランとバルバロサがフェネクスのシュートを止めようと走りこんでくる。絶対に止めようと全力で走るが、フェネクスの足元には赤い魔方陣が。

「遅い!」

 右足に炎をまとい、ボールに灼熱のエネルギーが充満する。

 近づくものを焼け焦がす熱が彼女の周囲に漂っている。

(二度も妨害されたが……今度こそは決める! ここで決めてこそこの学院の代表である!)

 自分は誇り高きAクラスの生徒だ。

 自分はこの学院の模範なる生徒会長だ。

 私はバニス・ウー・フェネクスだ。

 ――ならばマジックシュートを決めて当然だ。

「私の魔法を止められる、なんておこがましいことを考えるなよ! 『エクスプロージョン』! 全てを吹き飛ばすッ!」

 センターラインから紅い流星が空を駆ける!

『マジックフォースサークル』で強化された『エクスプロージョン』の威力は凄まじく、大地を抉りながらゴールに音速のような速度で飛んでいく。

「な⁉」

「なんと⁉」

 シュートを打たれて、すぐさま止めようとマデュランとバルバロサがシュートの前に出ようとしたが、あまりのシュートの速さにすでに横切る。

 シュートはすでにエスバーの目の前!

「…………ッ⁉ ふぁ、『ファイアーボール』!」

 それでも持ち前の反射神経で何とか反応して、『ファイアーボール』で立ち向かおうとしたが、

「うわあああ⁉」

 火の玉がすぐにかき消され、エスバーの右手を吹き飛ばしてゴールに叩き込む。

 速攻のカウンターで、点差は逆転されてしまったのであった。

【エルドラドサッカー日誌】

 バニス・ウー・フェネクス

 身長 165センチ

 魔力属性 火

 この大陸の名家であるフェネクス家の長女。そしてこのマギドラグ魔導学院の生徒会長を務めている

 成績優秀、文武両道、この学院の模範なる生徒と評され、危険区域の冒険においても活躍している。

 冷静で自身に厳しく、向上心に満ちたフェネクスはマギドラグ学院の人々に頼りにされている。

 それと同時に彼女は大の負けず嫌いであり、その負けん気の強さは普段の冷静な彼女からは考えられないほど苛烈。特に自身の好きなスポーツであるコメットレースでは負けると自宅で暴れまわるほど。どちらも彼女の性格である。

 実はショートスリーパーで三時間程度寝れば疲れも眠気もなくなる。

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