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魔導のファンタジスタ  作者: ルジリオ
一章 魔導学院、入学へ
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一時の休憩

『前半終了の笛が鳴りました! 両チーム、休憩に入ります! 点数は二対一、サッカー部のチームが一点リードしている状況です。正直な感想ですが、これは驚きです!』

 素直に思ったことを口に出す実況のメロエウタ。

 Aクラスは今までの選抜戦の競技で全勝、その実力は学院内でもトップクラス。

 そのAクラスがサッカー部に押されている状況に驚いていたのだ。

 なぜそうなったのかは試合をよく見ていた彼女はわかる。

『やはり、サッカー部に新入生、シュン選手の活躍のおかげてしょうか。彼を中心とした攻めの姿勢がチームに勢いをつけています。今までサッカー部はフォワード不足で決定力が欠けていたチームでしたが、シュン選手のおかげでその弱点がなくなったというわけでしょう。一年生ながら恐ろしい実力です!』

 そしてもう一方のチーム、Aクラスに対して思ったことは、

『Aクラスのチームも今はリードされていますが、サッカーは時間があれば逆転できます! 点差も一点差ですし。Aクラスチームの魔法を中心とした作戦は制圧力は見事なもの、動きは悪くないように見えますので、点を取り返す可能性は十分! ワタシとしてはフェネクス選手の初得点が見たい! 後半戦も楽しみです! ハーフタイムが終わるまで十五分、トイレ休憩に行ったり、ドリンクでも買いに行って時間を潰しておいてください!』

「いやー、こんないい勝負するなんてよ。驚いたぜ」

「ホントホント。いつも通りAクラスが勝つと思っていたけど」

「やっぱあのサッカー特待生の一年生が入ったのがデカいよな」

「でもやっぱり結局、Aクラスが勝っちゃうんじゃない?」

 観客はサッカーの熱戦を見て大興奮。どちらが勝つか予想しあっている。

 試合の行方が気になって仕方ない。

「シュン、あの時からずっとサッカーをしてきたのね。動きのキレが凄まじいし、シュートの威力も前と一緒にしていた時と比べたら威力も桁違いだわ」

 そうとう練習を重ねてきたことが前半の試合を見て理解する。

 新入生でありながら、すでにチームの中心になって活躍している。

「……私も試合に出たいな」

 そんなシュンとサッカーができたらな……そう思うレイカは自身の足を見つめていた。


「いやー! 皆、前半お疲れさま! 皆、凄いじゃない!」

 サッカー部メンバーがベンチに戻ると、クアトルがはしゃぎながら迎え入れてくれる。今、試合に勝っていることが嬉しいのだろう。

 あそこまで喜んでいるとサッカー部メンバーも笑みが溢れる。

「いやー、それほどでも!」

「トノスさん、喜ぶのはまだ早いかと。試合はまだ終わっていませんから」

「油断禁物ってカンジ♪」

「だね〜、気を緩めたら負けちゃうわ〜」

「なんでしょうか、ユーミールさんとモーグリンさんだと説得力が……」

「ミンホイさん、モココだよ!」

「あ、はい」

「怒るのそっちかよ」 

 わちゃわちゃと賑わっているサッカー部のベンチ。

 勝っていることがそれほど嬉しいのだろう。

「こらこら、喜ぶのは試合に勝ってから」

 チームの気の緩みようにクアトルは気を引き締めるように注意する。

 まだ試合は終わっていないのだ。油断はいけない。

「ねえ、シュン君。魔力の残量はまだ大丈夫?」

「大丈夫です。今の試合の流れなら後半ももちます」

 クアトルの心配にシュンは安心させるように元気に答えた。

 シュンの体質のことはサッカー部の全員が知っている。

 入部してすぐに自分の体内にある魔力を貯める器が他人よりも大幅に少ないことを、シュンは伝えたのだ。試合中に魔力切れで倒れてしまう可能性もある。だから伝えておかなければならないとシュンはそう思ったからサッカー部のみんなに教えた。

 あなた、よくこの学院に来れたわね、とトイズが言ってきたときは、まあそれは確かに、と頷くしかなかった。

「しかし、不便な体質よね。アナタ魔法を扱う技量は優れている方だから、普通の人並みに器が大きければ、シュートもバンバン打てるのに」

 プロスが正直にそんなことを言った。

「俺が魔法をうまく使えるのは、魔法を教えてくれた魔導士さんがいい指導をしてくれたからですよ」

「へえ、そんな人いたんだ」

「はいはい、私もちょっとシュンの話に興味を持ったけど、今考えることは後半戦のことよ」

「はーい」

「そうですね。監督、どうしますか?」

 サッカー部は後半の作戦はどうするかを話し合う。

「後半もシュン君を中心に……っていきたいけど彼だけにシュートを打たせてたら魔力が切れてしまうわ。だからミッドフィルダー陣、とくにトノス君、プロスちゃんの二人は積極的にシュートを打って」

「りょーかい!」

「守りは先程通り、フェネクスちゃんをマークして。遠くからのシュートならマデュラン君とリンナイト君がきっちり止めてくれるから、エスバー君ならキャッチできるわ」

「監督、俺らを便利な壁みたいに思ってないか?」

「それほど私たちの実力を買っているということだ」

「まあ、それは嬉しいがな。エスバー、後ろは任せたぜ」

「……はい!」

「よし、みんな! 試合はまだ終わっていない! このリードを覆されないように、全力で行くぞ!」

「「「おう!」」」

 作戦会議は終わり、短い休憩時間をとって後半戦も頑張ると意気込みサッカー部。

 エルドラド魔導祭のサッカー大会に出場するために、絶対に勝つ。そう思って。




「予想以上にやるな……」

 Aクラスチームは険しい表情をしている。

 自分たちが負けている状況だ。暗い雰囲気にもなる。

「他の競技で戦った生徒たちより強い。サッカーがとにかく上手い」

「うん、サッカー部だけ気迫が違うって感じ」

「とくにあのシュンって新入生、シュートもドリブルも上手いわね。色んなバリエーションがあってどれも動きのキレが凄いわ」

「あのマジックシュート。威力が段違いだぜ。あれ、ただの下級魔法の『ウィンド』のマジックボレーシュートだろ? どうやってあんな威力を……」

「あのボールに触れた俺だからわかる。中級魔法並の威力を秘めている」

「マジかよ! あの少年、村生まれだよな?」

 自分たちが苦戦を強いられている相手、シュンのことを話し合ってた。彼が原因で今負けているのはチーム全員誰もが思っていることである。

「うむむ……どんな原理かはわからんが、あのシュートの打ち方になにか原因があるのかな? ねえ、フェネクス、わかる?」

「…………」

「フェネクス?」

 Aクラスチームフォワード、ケットシーがフェネクスに意見を聞いても何も言葉が返ってこない。

 もう一度名前を読んでみると、

「……ああ、すまない。申し訳ないが、少し一人にさせてくれ」

 そう言ってチームのみんなと離れてベンチに座るフェネクス。

 いつもなら冷静な態度で対応してくれるフェネクス。だがいつもと様子が違うためチームメイトは困惑してしまった。

「なんか、いつもと雰囲気が違わない? 怖いっていうか……」

「なあケットシー。お前、フェネクスさんと一年の頃から同じクラスだったよな。なにか知っているか?」

「責任を感じているんじゃないの? 彼女、リーダーシップあるし、責任感も強いし。今負けているから」

 試合に負けているこの状況を悔しがっているかもしれないとチームメイトはフェネクスの様子を見てそう感じた。

「この少ない時間で彼らのプレイの特徴を把握しましょう。そして後半戦に活かしましょう」

「そうだな」

 前半戦の試合の流れと相手チームの選手の活躍を話し合って、後半戦はどうやって動けばいいか話し合うことに決めたAクラスチーム。

 フェネクスはチームの話し合いには参加せず、ただ仲間の意見を耳にして、

「…………」

 黙ったまま、ただフィールドを見つめ続けるフェネクス。

 その目には彼女自身が生み出す炎のように、赤く燃えている。

 エルドラド魔導祭に出場するための選抜戦。その試合、後半戦がそろそろ始まる。

【エルドラドサッカー日誌】

 マギドラグ魔導学院Aクラス

 エルドラドの大陸の中でも有数の魔法の名門学院であるマギドラグ魔導学院。

 その中でもトップクラスに優秀な生徒を集めたクラスがAクラス。このクラスの卒業生は国から認められた魔導士になる人がほとんどのため、Aクラスに入ることが魔道士になる道と評されることも。

 学力、実技共に高得点を叩き出し、去年のエルドラド魔導祭では半分以上の競技で入賞、優勝で貰えるトロフィーや旗なども他学院よりも多く持ち帰っている。

 Aクラスに入って部活をやめる人が多いのは、課題が多い、試験の内容が難しい、実戦授業で危険な場所に行くことが多い、などで勉学が忙しくなるためである。

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