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魔導のファンタジスタ  作者: ルジリオ
一章 魔導学院、入学へ
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練習開始

 フィールドを風のようにかけるシュン。

 足にボールを、共に走るようにドリブルする。

「シュンを止めなさい! 彼を止めれるようになればどんな相手のドリブルでもボールを奪えるわ!」

 なぜか監督のクアトルがフィールドにいる。マギドラグ魔導学院のサッカーユニフォームを身に付けて。

 シュンを止めるために指示を飛ばしている。

(部員十一人だからチーム分ける五人と六人になって均等にならないから、足りない人数を先生が代わりに入ったんだ)

 ――人数が不公平だから練習にならない。だから私が入るわ。

 そう言って、五人のチームの方に入ったのだ。しかもそこそこ上手いときた。

「先生相手か……」

「クアトル監督は魔法の技術と身体能力が私たちより高いからな。気を引き締めて突撃するんだ!」

「わかりました、マデュラン先輩!」

 マデュランの言葉に気を引き締めて、シュンはクアトルに向き合う。

(クアトル先生相手にスピードで戦うのは悪手だな……ならば)

 一瞬立ち止まって、からのハイスピードドリブル。

「あなたの高速ドリブルは見切った!」

 それを目で追って、すぐさまシュンにチャージを仕掛ける。

 相手の起動を読んだチャージだ。普通ならば吹き飛ばされるだろう。

「それを待っていた!」

「あれ!?」

 闘牛の突進を避けるかのような体を回転させてのフェイント回避。そしてそのまま抜き去ってゴールに向かっていく。

「ぐええっ!?」

「先生!?」

 背後から悲鳴と心配の声。

 後ろに視線を向けると盛大にこけたクアトルの姿が。顔からいっている。

 シュンのボールをとろうとして失敗しただけでなく、勢いよく足をふったことで体制が崩れて倒れてしまったようだ。

 本気でシュンからボールを取ろうとしたがゆえに起こった悲劇である。

「ええ、先生相手でも抜かせるのかよ……」

 同じチームのトノスも思わずシュンのプレイングに静かになる。いつも騒がしいトノス、口を閉ざすのはサッカー部員からしてみれば珍しい光景である。

「やっぱりフェイントが正解だったか。よし、シュートをうちにいきますよ、トノスさん!」

「お、おう! ソロだって上手いんだぜ! 俺のシュートを見てろ!」 

 そのあとも、ミニサッカーは続く。

 選抜戦で勝って大会に出るために。



 

「よーし! ミニサッカーは終わり! 次はチームでフォーメーションと連携の練習だ!」

 ミニサッカーを終えて、今度はチーム全員での練習。

 サッカー部のメンバーで十一人でやるサッカーは初めて。ゆえに今のうちに慣れて、試合に備えなければならない。

「はい! って待ってください」

 シュンは頷こうとしたが、練習の内容を聞く前に止める。

「どうした?」

「俺たち、十一人ですよね。それだと相手はどうするんですか?」

 そう、ちゃんとしたチーム練習をするなら相手のチームがほしい。

 普通の連携練習なら先程のミニサッカーで練習できるが、フォーメーションでの連携練習なら妨害する相手がいたほうが練習になるとシュンは考えているためだ。

「これを使う」

 するとマデュランはゴールの横にいつのまにかおいてある人形に指を指す。

 外見は木でできており、デッサンで人体を描く練習をするときに使われそうな姿をしている。

「これは?」

「魔導人形さ。魔力を動力源とした自動で動かせる人形だ。もともとは魔導人形士が兵器として活用していたものをサッカーの練習道具にしたんだ。これでチーム練習が行える」

「おー!」

 魔法の道具でこのような練習方法があるとは。シュンも魔導人形によるチーム練習が楽しみになってきた。

 そしてマデュランは紙を持ってきてみんなに見せるように開く。

「フォーメーションは5-4-1。作戦はシュンがシュートを打つ、そして中盤のミッドフィルダーがシュンをサポートするんだ」

「まあ、これが妥当だな」

「俺たちサポートか? でもシュートは打てるときは打っていいよな」

「当然だ。チャンスだと思ったらなら打ってくれ。新入生のシュンだけに負担をかけさせるわけにはいかないからな」

「オッケー♪ モココたち、シュートもパスも頑張っちゃう!」

「そして私たちディフェンダー陣は防衛に徹底する。Aクラスの魔法攻めに負けないように踏ん張れ。いくらシュンたちが点をとっても、逆に点をとられたら意味ないからな」

「ああ、わかってる。来るやつ全員吹き飛ばしてやるよ」

「物騒なこといっているけど、リンナイトの意見に賛成だわ。ボールを奪って前線に渡す、やることはわかりやすいわ」

 サッカー部全員が話し合い、チームの作戦を決め合う。

 サッカーにおいて自分達がしたいプレイの形を作ることは重要。

 自分達が決めたサッカーをすることこそが勝利への近道なのだ。

「攻めるってなら、先輩たちのパスが大事だと考えてます。生半可なパスじゃあ取られてしまいますよ」 

 シュンは前に見たAクラスの練習を見てそんな意見をいった。

 サッカーの技術以外の身体能力と魔法技術は自分達よりも上。それゆえに普通のパスではボールをカットされてしまうだろうと考えたのだ。

 そしてシュンの意見に他のメンバーも納得する。

「Aクラスの身体能力ならあり得る話だな」

「では、最初はパス中心のチーム連携で練習するのは?」

 ミンホイの意見に頷くシュンたち。

「ではあの魔導人形たちにカットされないようにパスを出すんだ。そして先程決めた作戦でシュンにとにかくボールを渡してシュートを打ってもらう。それを実践でもできるように練習しよう」

「わかりました!」

「シュンはどちらかというと俺たちのパスをきちんと受け止めればいいぜ」

「俺相手なら乱暴なパスでも大丈夫ですよ! どんなボールでもトラップして見せますから!」

 ノートラップシュートが得意なのだ、トラップもなんのそのである。

「おお、言ってくれるな! じゃあ、自慢の蹴りでパスするからな!」

「スタートはゴールキーパーからいくぞ! エスバーが味方にボールを渡してシュンにパスで繋げていくんだ! 魔導人形にとられないように、なおかつ素早くだ! 皆、練習始めるか!」

「「「おう!」」」「「「はい!」」」

 キャプテン、マデュランの指示に大声で答えて練習開始。

「……いきます!」

 ゴールキーパー、エスバーがマデュランにボールを渡す。すると魔導人形がボールを見て人間と同じ動きで走ってマデュランに近づいてくる。ボールを奪うためだ。

 今の魔導人形は敵チームのメンバー。積極的にボールを取りに行く。それだけでなく他の魔導人形もパスコースを読んで移動を開始している。絶対にボールをとるという命令に従う、そんな無機質な気迫が伝わってくる。

「だが! 先に渡せばいいだけの話! チコ!」

 全力の蹴りで放つフルパワーのパス。あまりの力強いボールに魔導人形追いつけない。

 ボールはモーグリンに渡った。

「おっと! モココちゃん!」

「はいはーい♪」

 今度は的確なコースを描くようなパスでモココにボールを渡す。ボールは魔導人形が届かないギリギリのコースを通っていって、少しでもずれると取られてしまったであろう。

 正確なパスコントロールだ。

「トノス君、パスだよ!」

「よし! いくぞ! 『ファイアシュート』!」

 ここでまさかのマジックシュート。

 モココから受け取ったトノスがすぐさま魔方陣を展開して火の玉シュートが炸裂。

 火玉が魔導人形を吹き飛ばしながらシュンに向かって飛んでいく。

「え!? ちょと待て! うへ!?」

 突然のシュートになんとか対応するも、足で受け止めようとする前に胸にボールが直撃して吹き飛ばされた。

 地面をものすごい勢いで転がっていくシュン。ボールは魔導人形が拾っていった。

「あっ、まず……」

「トノス、ねえねえ、あれまずくない?」

「プロス、まずいぞ。シュン、生きてるか?」

 すぐさま走ってシュンのもとに駆けつけるトノス。手をさしのばして大丈夫かと心配してきた。

 シュン本人は痛がりながらもなんとか立ち上がって大丈夫だとアピールする。

「痛い……トノスさん、マジックシュートでパスは止めてください……威力がありすぎてとれません……仮に取れたとしても、おれ自身全力でボールをとることに集中しますから、そうなったら相手に簡単に奪われてしまいます」

「シュンならとれると思ったんだけどな~。やっぱりマジックシュートじゃあダメか」

「期待してくれるのは嬉しいですけど。さすがに厳しいです」

 どうやらいきなりマジックシュートを打ったのはシュンならトラップしてくれるのではないかという信用があって放ったみたいだ。

(まあ、マジックシュートは強力だし、相手にカットはされないだろうけどさ……味方がとれなきゃあ意味ないな)

「おーい、トノス。あまりふざけたことしてるとお前をボールでぶっとばすぞ」

「ふざけてないよ! シュンなら俺のマジックシュートを止めれると思ったんだ!」

「じゃあ、先にマジックシュート打つことぐらい言っておけよ!」

「うわ! 怒った! 追いかけてくるなよリンナイト!」

「どうします? 私が止めにいきましょうか?」

「いや、バルバロサ。しばらくしたら戻ってくる。あーなったスラはそう簡単には止まらないからな」

 シュンがパスのことを考えていたら、サッカーフィールドにリンナイトの怒声が響くのであった。







「フロストン、彼が新入生のシュンか?」

「ええ、そうです」

「そうか。あの少年が……」

「どうしましたか?」

「いや、正直にいいプレイをすると思っただけさ。さっきのミニサッカー、彼だけ動きのキレが凄まじいと思ってね。あの技術があれば……」

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