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魔導のファンタジスタ  作者: ルジリオ
一章 魔導学院、入学へ
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新入生のお披露目 後編

 マジックシュートを見事キャッチしたエスバー。

 その事にエルドラド魔導学院サッカー部員は驚く。

 新入生が見事シュートを止めたのだ。

「バリアシュートとはいえ止めるなんて」

 審判のミンホイもビックリして目を見開いている。

「そりゃそうよ。彼はサッカー特待生として私が呼んだもの! それに彼はこのエルドラド魔導学院の入学試験にも合格したしね」

「合格したって、魔法の実力もちゃんとあるってことですか?」

「そういうこと」

 エルドラド魔導学院は魔導の名門学院である。ゆえにこの学院に入学するためにはシュンのような部活の特待生を除いてこの学院の入学テストに合格する必要がある。

 だがそのテストはエルドラド大陸最難関で評されるほどであり、毎年多くの生徒希望者がおとされてしまう。

 合格するだけでも魔導の秀才と言われるほどだ。

 そのテストにエスバーは受けて合格をもらっているため、サッカー部の特待生の制度がなくてもこの学院に来れたのである。

「……(ブンっ)!」

 エスバーは無言のままシュンに向かってボールを投げた。

 いきなり投げてきたエスバーにあきれながらもシュンはボールを受け止めて、

「いやせめて誰に渡すか声出してくれよ!」

 そしてゴールに向かった走り出した。

 ゴールにいるエスバーは首を横に振っている姿を見て、シュンはさらに呆れたことはここだけの秘密だ。

(エスバーも力を見せた。なら俺も見せるぜ)

 だがしかし、ゴールキーパーとしての実力を見せたエスバー。高等部一年生で先輩のシュートを止めたことに尊敬するシュン。

 ならば自分も彼に負けないために点を取ってやるとシュンはボールを蹴りながら強く思った。

 フォワードの使命は点をとってこそにある。

「来るか! 何度でも止める!」

 シュンを止めようとマデュランが魔方陣を展開する。

 普通ではシュンは止められない、だからこそ魔法で止めに来る。

(やはり魔法を使ってくるか……ならば!)

 自分も魔法を使うほかない。

 魔方陣を展開、風がシュンを包み込む。

「『ゲイルステップ』!」

 風を身にまとい、風と共に駆け抜ける。

 一瞬でマデュランの横を抜けて背後に立っていた。

「なっ!?」

 まばたきもしないまま姿を消したシュンを探すマデュラン。

 シュンはすでにゴールに向かって走っていた。

「そんな技もあったのね。でも!」

 だがそう簡単にはシュートは打たせない相手チーム。

 トイズがシュンの横から炎をまとったスライディングタックルを仕掛けてきた。シュンに蹴りを当てて吹き飛ばすつもり満々だ。

「先輩、俺に同じ技は二度は効かんぜ!」 

 シュンはボールを両足で挟み、そのまま横に大ジャンプ。地面をスライディングしているトイズの頭上を大きく越えてかわしたのだ。

「えっ!?」

「属性をまとっていても元はスライディングタックル! 大きな動きで避けれるぜ!」 

 魔法のディフェンスにサッカーの技術で避けきったシュン。そして着地した瞬間にボールをチップキックで浮かばせてバックステップだ。

「……あのシュートだ」

 エスバーはわかった。

 あの風のシュート。まさに音速で飛んでいく暴風。

 シュンはそのまま風に吹き飛ばされつつ体勢を保ったまま前にハイスピードのステップを繰り出して、

「決める! 『ティルウィンドジェット』!」

 シュンのジャンピングボレーから強烈な暴風シュートが放たれた。

 音速を越えるかのようなマジックシュートが相手ゴールに襲いかかる。

「きたっ! 『コットンガード』!」

 モココは地面を軽く踏むと彼女の回りに白い空間が現れた。

 その空間に入ったボールは急に速度が落ちて、緩やかな速度になった。

 これなら止めれる。

 そう思って手を伸ばそうとした瞬間、

「あれっ!?」

 手がボールに触れた瞬間、手を思いきり弾き飛ばされて白い空間も消えていった。そして再び風の速度を取り戻したシュートボールはそのままゴールに入っていった。

「よし、見たか俺のシュートを!」

 シュートを決めてガッツポーズ。

 ようやく一点あげれたことに喜んでいる一方、

「な、なんだ今のシュート……ほんとに新入生が打ったシュートなのかよ」

「モココ、大丈夫か?」

「……指、動かない。泣きそ……」

「ミンホイ。治癒魔法使ってくれ」

 手がいまだにしびれて涙目になっているモココ。それだけで今のシュートの破壊力が伝わってくる。

「お見事です、シュンさん。あのシュート、見ただけで震えましたよ」

「もっと、もっとシュートを決めてやるぜ。先輩たちも一緒に攻めましょうよ」

「え、わたしたちも?」

「そうです! その方が楽しいですよ!」

「楽しいか。ならいいパスだすよ。俺はディフェンダーだがパスにも自信あるんでね」

「シュートならわたしのほうが得意よ!」

 点をとったことにシュンたちのチームは驚きと喜びが混じった雰囲気を見せていた。驚きはシュンが放ったシュート、喜びはそのシュートのインパクトに。

「はい、終わりましたよ」

「ありがと、ミンホイ先輩♪」

 そしてゴールキーパー、モココの治療が終わって試合が再開。

「先ほどのお返しだ! 点を取ってやるぜ!」

「ああ、待って、トノス!」 

 キックオフでボールを受け取ったトノス、いきなり前にドリブル。

「あの新入生にやられてばかりじゃあいられない! こっちも活躍してやるぜ!」

 トノスが燃える。心を燃やし、体が燃える。そして炎とかして前進していく。

「じゃまじゃま! 燃やすよ!」

「うお!?」

 業火をまとったトノスのドリブルでシュンを吹き飛ばす。

「なんてな!」

 だがシュンは空中で体を回転させて地面に着地。

 自分から飛んで相手の攻撃ドリブルを避けきった。

(あぶねー、燃やされるかと思った)

「自分から避けたか! プロス! ここからシュートを打つぞ!」

「うん! シュンくんをシュートで吹き飛ばせばいいんだね!」

 トノスとプロスがボールを踏みつけて火柱が生まれる。互いが足を振り上げてボールに同時に蹴りが炸裂した。 

「「『ツインフレイムシュート』! イケェッ!」」

 完璧に息のあったコンビネーションシュート。

 灼熱のシュートボールがゴールめがけて飛んでいった。

(連携シュート! ゴールの距離が遠くても、このままじゃあゴールが破られる! ならば!)

「俺相手にロングシュートを打つってか! 上等だぜ!」

 シュンはすぐさまシュートに向かってダッシュしながら背中を向けた。

 そしてそのまま足を頭より上にあげて、

「『ウィンドオーバーヘッド』で止める!」

 足を旋風をまとわせて、炎のマジックシュートにオーバーヘッドキックをかました。

「ふっふん! そんな蹴りじゃあ止められないよ!」

 自信満々に答えるトノス。

 その言葉通り、シュンの足に伝わってくる彼らが放った『ツインフレイムシュート』の威力は凄まじい。足に高熱とパワーが襲ってくる。

 たしかに止められない、だが威力は下げることはできる。

 そう思って必死に足に力を込めていたが、

「うお! なんてパワー……」

 限界がきた。シュンは炎のシュートに弾き飛ばされてしまう。

 だがそれでいい。

 今のブロックでシュートの威力は弱めることができた。

 あとは、

「だがしかし! エスバー!」

「……うん!」

 エスバーが止めてくれればいい。

 吹き飛ばされたシュンのその先には、すでに魔方陣を展開しているエスバーが待ち構えていた。

「……『ファイアボール』!」

 手から火の玉を発射してシュートボールにぶつける。火の玉と業火のシュートが激しくぶつかり合って大きな火の粉が巻き散らかせる。

 そして互いのボールの炎が消え去り、サッカーボールは地面に転々と転がっていった。

「なに!?」

「そんな! 私たち双子のシュートが!」

「シュンの蹴りで威力が弱まったんだ……だがそれにしてもエスバーの魔法も素晴らしい威力だ」

 マデュランの指摘は正しい。

 シュンの強烈なシュートを繰り出すことができる蹴り方は、相手のシュートをブロックするときにもその強さを発揮する。

 オーバーヘッドブロックは生半可なシュートでは逆に蹴り返してしまうほどのブロックキックなのである。

 地面にこぼれたボールは味方のバルバロサが拾って、

「バルバロサさん! パスを中心で!」

「わかりました!」

 すぐに指示をだしパスで前線に進んでいく。

「よし、バルバロサ! シュンとモーグリンと共に進め!」

「わかりました! 任せてください!」

 パスを繰り広げ、前に速く進んでいく。

「シュンくん! パスよ!」

「そんなパスじゃあ!」

「甘いですよ、トノスさん!」

 パスカットしたトノスにショルダーチャージを瞬時にぶつけて、すぐにボールを奪い返す。ボールを取られてもすぐ取り返せばパスは渡ったのも同じだ。

「うげっ!」

「バルバロサくん、助かったよ~!」

「シュンさん!」

 バルバロサの鋭いパスがシュンの胸元に届いた。

 優しくトラップしてゴールに視線を向けると、

「シュン! もう打たせんぞ!」

「ええ!」

 今度はマデュランとトイズがコンビを組んでシュンの行く道に立ちふさがってきた。

 一人でもかなり厄介なのに、二人でこられたら勘弁だ。

(これはキツいな……ならば!)

「モーグリンさん!」

 シュンはかかとで後ろにボールをパスして、モーグリンに渡した。

「後ろに? 逃げたか!」

 シュートを打ちに来なかったシュンに戸惑いつつも、

「いや、シュートは打ちますよ、モーグリンさん! ゴールにシュートを!」

「わかってるわ! 『ウォーターシュート』!」

 モーグリンのマジックシュートが炸裂。

 水をまとったボールが、激流となりゴールにまっすぐ進んでいった。

(味方にシュートを打たせたか。だが)

「トイズ!」

「ええ、コースがわかりきっている!」

 同じチームで同学年だからこそ、モーグリンのシュートの癖はわかる。のほほんとした性格にあわず、シュートは針の穴を通すよう正確さ。

 ゆえにシュートコースがわかりやすい。

 そのコースを防ぐように立ちふさがってブロックすればいいのだ。

 そう考えてトイズは激流のシュートを止めようと走り出した。

 シュートが通る道に止まろうとしたその時、

「えっ」

 ――シュンがすでにいた。

 しかも彼の足には魔方陣を展開させて。

「シュン、あなた一体!?」

「いいシュートだ! これなら合わせられる! ノートラップの『ウイングボレー』だ!」

 後ろから飛んでくるシュートにタイミングを合わせてボレーを放つ。

 シュートの起動が代わり、シュンのシュートパワーが百パーセント足された水と風のシュートがゴールに向かっていく。

「シュートチェイン!?」

 ゴールキーパーモココ、驚きながらも魔方陣を展開。

 まさかレベルの高いシュートチェインを繰り出してくるとは。彼のプレイには驚かされてばかりだ。

 だがこっちだって先輩の意地がある。

「今度こそ! 『コットンガード』!」 

 先ほどの空間を作り出し、ボールの勢いが弱まった。

 今度は確実に止めるために、ジャンピングボレーで吹っ飛ばしてゴールを防ごうとした。もとはミッドフィルダーのモココにとって蹴りの方が得意なのは当然。

 ゆえにボレーで止めようとしたが、

「お、重いし……」

 足にずしっと衝撃が襲ってくる。

 魔法の衝撃ではない、ボールそのものの衝撃。

 シュンが放ったシュートは強烈な回転がかかっている。それがボールに重さと威力を与えている。マジックシュートにサッカーの技術を加えることによって更なる威力を発揮しているのだ。

 なんとか蹴り飛ばそうとしたものの、シュンのシュートに押されて飛ばされてしまったモココ。

「ま、また!」

「何度も決めさせてたまるか!」

 ゴールを防ぐようにマデュランが横から入ってきて胴体でボールを受け止めた。

(体にバリアを!)

 体を張ったボディシールドにシュートボールは次第に勢いを弱めていき、そのまま地面に落ちてゴールを防いだ。

 モココはすぐさまボールをキャッチする

「さすがキャプテン! 危なかった♪」

「いくら腕がよくても新入生にいいようにされてばかりではな……くっ!」

 腹を押さえて膝をつくマデュラン。突然の行動にモココは心配になって声をかける。

 フィールドにいる全員も心配そうな目でマデュランを見つめた。

「マデュランさん! どうしたの!」

「いや、大丈夫だ……いいシュートをくらったってだけさ」 

 口ではそう言いつつもマデュランは腹に手をやって、痛みに必死に耐えている。

 予想以上のシュートの威力に、止めることはできてもダメージも多くくらってしまったためだ。

(俺のシュートを取られるとはな……ボールを止めてやるって執念、今のプレイから感じ取れたぜ)  

 シュンは自身のシュートが取られるとは思っていなかった。今のチェインシュートは完璧にタイミングがあったマジックシュート。

 それをモココが威力を下げたとはいえマデュランは止めきったのだ。

 特に自身の体で止めきるプレイは根性あるプレイ。絶対にシュートを止めてやるという執念がなければできないプレイだ。

「面白くなってきた。何点でも取ってやるぜ」

 シュートを止められたのなら何回でも打てばいいだけの話。シュンはゴールを見つめた。

(正直、人数が少ないから心配してたけど。あんなに心熱くなるプレイをするなら、この学院に来てよかった)

 マギドラグ魔導学院の特待生としてここにきたことに喜びを抱き始めたシュン。

 彼らとのサッカーが楽しい。

 それだけでこの学院に来てよかった。

 やはりサッカーをするなら楽しくなければならない。

(まあ、なんでこんなに人数少ないのか、絶対に聞くがな)

 それはそれとして疑問に思ったことは、試合が終わった後に聞くことにしたのである。

【エルドラドサッカー日誌】

 チェインシュート

 味方のマジックシュートをさらにマジックシュートで威力をプラスする技術。魔法のシュートを使うエルドラドだからこそできたサッカー技術。

 このチェインシュートは難しい技術であり、味方が打ったシュートよりも速く、そしてタイミングも合わせてシュートを打たなければきちんとボールにパワーが乗らず威力が落ちてしまう。それだけならまだしも、力が正しく伝えられずにシュートコースがゴールから外れてしまうこともある。

 実力ある高等部でもできる人はそうそういない。

 シュン曰く、「ノートラップシュートで放つマジックシュートのようなもの」

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