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魔導のファンタジスタ  作者: ルジリオ
一章 魔導学院、入学へ
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シュン、魔導学院入学へ

 シュンが見ている建造物、それは見るものを圧巻させるほど大きく、そして歴史を感じさせる雰囲気を漂わせている。

 その建物はこの街オラリマにおいてもっとも有名な場所である。

 マギドラグ魔導学院。

 このエルドラドにおいて一番最初に作られて魔導学院。

 生徒の実力、教育の環境、実績、すべてにおいて他学院よりも優れている。

 大陸中から魔導の才能に満ちたものが集まり、最先端の設備と今も残されている大昔の魔導関係の道具の数々、そして卒業生はこのエルドラドに多くの功績を産み出してきた。

 魔導を極めたいものならこのマギドラグ魔導学院に入学するべし。

 エルドラド大陸中にそう称されるほどだ。

「驚いたぜ……まさか、こんな貴族様や魔術の天才児しか来ない名門中の名門の学院に入学することになるとは」

 学院指定の制服を着ているシュンは半月前のことを思い出していた。




「おねがい~! ウチのサッカー部に入って! 君が入れば優勝間違いないから!」

 出会い頭に抱きつかれ説得される。

「抱きつかないでください! 対応に困る!」

 突然知らない女性に抱きつかれるとどう反応すればいいかテンパってしまうシュン。顔が赤くなるより意識外の行動にシュンは慌てながらもとりあえずすぐさま離れて、

「話は聞きます。俺があなたの所のサッカー部に入るかどうかはそれで決めます」

「聞いてくれるのね! よし! ご飯おごってあげるから来て!」

「ちょ、力強い! 着いていきますから手を離して痛い!」

 女性はシュンの腕を掴んでつれていく。離してくれと頼んでも気分が高揚しているのかシュンの言葉が耳に入っていないようだ。

 我慢してついていくと、そこは大衆食堂。

(ここリーザンたちと来たことあるな。旅行したときに)

 そこで話し合いをするのだろう。

「ここは値段が安いのよ。何でも頼んでいいわ、遠慮入らない」

「そうなんですか。じゃあキノコたっぷりデミグラスソースのハンバーグで」

「いいね、それでこそ奢りがいがあるわ」

 自分の好物であるハンバーグを頼むシュン。

 どんなものでも頼んでいいといいっているのだ、なら自分の好きなものを頼もう。

「ねえ、店員さん! キノコたっぷりデミグラスソースハンバーグとウィスキー水割り」

(酒を頼むのか? スカウトで!?)

「……じゃなくてビーフサンドイッチで」

 最低限の常識はあったらしい。

 初対面で酒を飲みながら面接してくる人なんて信用したくない。

 たぶん、仕事終わりにいつも飲んでいるのだろう。それぐらい自然に頼んでいた。

「アタシはセニース・クアトル。マギドラグ魔導学院の教師兼サッカー部監督を勤めてるの」

「マギドラグ魔導学院……それってこの街にある名門学院じゃあないですか」

 シュンは知っている。

 かなり年上の友達のリーザンと一緒にこの街に旅行に来たときに建物だけなら見たことある。リーザンも有名な名門学院だと喋ってくれた。

 そんな凄い場所の教師をしている人だとは。

 だがしかし、

「マギドラグ魔導学院のサッカー部の評価はあまり耳にしないのですが」

 そう、魔法に関することは様々な結果を残しているこの学院、しかしサッカー部の評価は聞いたことがない。良い評価も悪い評価もだ。本当にサッカー部があるのかどうかさえもクアトルから話を聞くまでは知らなかった。

 この学院のことは名前は知っていたが、サッカー部のことはあまり噂になっていないため、マギドラグ魔導学院は記憶の片隅にとどめておく程度だったのだ。

「まあエルドラド魔導祭には出場してないけど……でもサッカー大会ができたのは去年! 今年は出場できる!」

「凄い自信ですね。それほどマギドラグ魔導学院のサッカー部は実力揃いってことですか」

「ええ、皆サッカー上手いの。魔法に関してはどの学院にも負けないわ」

「魔法に関して、ですか」

 マジックサッカーにおいて魔法は大事だ。魔法の名門学院であるマギドラグ魔導学院なら魔法の技術はどの学院より優れているだろう。

 魔法を中心としたサッカーをする、そういうチームなのだろう。

「あの、すいません。なんで俺をスカウトしようとしたのですか?」

 だからなおさらなぜ自分をスカウトしたのか、シュンは疑問に思った。

 魔法に関しては誉められたものではないと思っている。シュンのプレイスタイルとはマギドラグ魔導学院のスタイルと噛み合っていない。

 するとクアトルは、

「それは私が見てきたなかであなたが一番上手いと思ったからよ!」

 即答でそう答えたのであった。

「サッカー部強化のためにこの街で開かれた他学院のサッカー部の特待生を決める試験。その試験を受けようとした選手たちをこっそりと見ていたけど、あなたのサッカーの実力は見ただけで見惚れてしまったわ」

 一息、 

「初めてよ、サッカーのプレイで熱くなるよりも唖然としたの。そして思ったわ、あなたはこの街で一番上手いサッカープレイヤーだって! だからスカウトしたの!」

「それまで誉められるのは嬉しいですね。ありがとうございます」

 自分の実力を高く評価されるのは嬉しい。シュンは喜ぶ。

 そしてクアトルはシュンの手を握って、

「アタシたちの魔法、そしてあなたのサッカーの技術、この二つがあれば優勝が目指せる! だからお願い! マギドラグ魔導学院に入学してサッカー部に入って! 入学金はこちらが出すから! スタメンだって用意するから!」

 破格の待遇を口に出してシュンに入ってくれと頼み込むクアトル。

 シュンは目を閉じてどんな言葉を返すか、一瞬考えて、

「……自分は」




「どうすればいいか……」

 シュンは馬車にのっていた。村に向かって帰っている。

 クアトルからの申し出に対して、シュンは家族と相談して入学するかどうか決めます、と言った。

 彼女もシュンの提案に頷き、後日オドロン村に入学するかどうか訪ねてくると言った。

 それまでに決めなければならない。

「他の学院や学校を選ばなくていいのか」

 マギドラグ魔導学院サッカー部はまだ実力がわからない。もしかしたら自分が試験を受けた魔導学院よりも実力が低いのかもしれない。エルドラド魔導祭サッカー大会に出場していないのだから。

 ならば実績のある魔導学院を選ぶべきだ。

 だが、

「でも……他の学院は俺を求めていない」

 己の体質が原因で魔力量が極端に少ないこの体。

 それが他の魔導学院サッカー部が不合格にした理由。

 魔法を使う回数が少ない、強力な魔法を覚えることができない、そんな生徒は特待生として勧誘するなら他にもっと魔法の才能がある選手を迎えた方がいい。

 だからシュンは選ばれない。

 そしておそらく、今から他の学院の試験に受けにいってもそれが付きまとう。

「ならば」

 マギドラグ魔導学院のサッカー部に入るの悪くはないのではないか。

 学費もあちらが払ってくれる。

 家族に負担をかけさせずサッカーにのめり込むことができる。しかも一年目からスタメンに入れされてくれるから大会に参戦できる。

 いいことづくめだ。

「そうだな。マギドラグ魔導学院は俺を求めている。そして俺も、学院に希望を抱いている」

 サッカー部の実力は未知数だ。

 それでもいい。

 問題があるなら、転校でもすればいい。問題がなければ、それでよしってことだ。

「……決まった」

 スカウトの話、受けてみよう。

 それを両親にはなそう。

 すると馬車が止まり、到着したした、と声をかけられる。

 オドロン村に帰ってこれたみたいだ。シュンは馬車の御者にお金を払ってそのまま家に帰った。

「父さん、母さん。ただいま」

「おかえり、シュン」

 玄関を開けると両親が出迎えてくれる。

「おかえりなさい、試験大変だったでしょ。ゆっくり休んで」

「ああ、ありがとう。でもそのまえに、結果について話しておくよ」

 街にいって試験のこと話そうとすると両親は険しい顔をする。内心、シュンが受かっているかどうかドキドキしているのだろう。

「試験には落ちたけど、スカウトが来た」

「スカウト……ということは勧誘されたってことか?」

「うん、学費も出してくれるっていった」

「学費も?」

「うん。しかも、あのマギドラグ魔導学院だ」

「マギドラグ魔導学院って……この大陸一の学園と言われるところじゃないか」

「だからそのスカウトの話、受けようと思っているんだ。どうかな」

 マギドラグ魔導学院に入学したい。

 そう話すと、父モメントは腕を組んで悩むそぶりをみせる。そしてシュンにこう言った。

「正直なことをいうと、シュンはこの村にいてほしかった。君がこの村に残ってくれれば店を次いでくれると思ったんだ」

「父さん……」

「でも君は選んだんだ。自分の子供がしたいと思って選んだ選択肢を否定する親はいないよ。悪いことじゃあなければね」

「――父さん!」

「行ってきなさい。シュンはサッカーが好きだもんな。応援している」

「大丈夫よ。シュンはサッカーは上手だもの。あなたならテッペンにたどり着けるわ」

 両親はシュンを応援するようにマギドラグ魔導学院に入学することを祝福した。

 自分のしたいことを喜んで応援してれる両親にシュンは心が暖かくなる。

 するとシュユが部屋のなかにいって、

「シュン、これを受け取って」

 戻ってくるとなにかを持っている。それは紐で編んだアクセサリーだ。青と白の二色模様のミサンガだ。

「これは……ミサンガか」

「あなたの好きな色で作ったお守りよ。腕でも足でも、もしくはネックレス代わりに首にでも巻いてくれたら嬉しいなって」

 シュユからミサンガを受け取ってシュンはどこにつけようか悩んだあと、

「――どうだ、似合っているかな」

 ヘアバンドのように頭につける。

 前世でも昔のサッカー選手は頭にミサンガをつけていた人もいた。

 このエルドラドサッカーはアクセサリーをつけても問題ない。

 だからミサンガを頭につけて試合にでてもいいのだ。

「似合っているわ、素敵よ」

「ああ、カッコいいよ」

「ありがとう。これなら父さんと母さんが応援しにきたとき遠くからでもわかるしな」

 このミサンガはシュンが不幸なことがないように、そんな祈りが込められているのだとシュンは思った。

 お守りのミサンガをくれたことにシュンは感謝して、

「俺、頑張るよ。絶対にサッカーの頂点に立ってみせる」

 転生してこの世界に生まれて見つけた夢。

 自分の好きなサッカーで頂点に立つ。

 それを成し遂げてみせる。

「――」

「ん?」

 後ろから声が聞こえる。

 玄関の扉に誰かいるのか。

 なんとなく誰なのかはシュンは察していた。

「隠れてないで出てこい!」

「「「わあ!?」」」

 扉を開けると玄関に人がなだれ込んでくる。

 ドーロン、カガリ、リズルがいた。

「こっそり聞いていたのか?」

「いやー、馬車が見えていたからよ。帰ってきたのかなって」

「そのミサンガ、似合っているな」

「試験合格したんだろ! よかったな!」

「まず盗み聞きしたこと謝れよ」

 いつもの三人組にしかりながらも、魔導学院にサッカー特待生として入学することを喜んでいる姿を見たシュンは心のなかでは嬉しい気分になっていた。

【エルドラドサッカー日誌】

 シュン

 身長177センチ 体重68キロ

 前世の記憶をもってこの世界に生まれた生粋のサッカー少年。前世の名前は風間瞬。

 彼のサッカーの情熱は本物であり、普段は穏やかだが、サッカープレイヤーとしてフィールドにいる時は勝利の執念で勝ちをもぎ取るまで諦めない。

 村で鍛えた身体能力とサッカーの技術は素晴らしいもので、とくにサッカーの技術は前世から鍛えたものと身に付けた知識、そいてこの世界の修練で鍛えられ、大人相手でも手玉にとるほどの技術を持っている。とくにドリブルやボール捌きは誰にも負けないほどの腕。

 小さい子供達によくアクロバットプレイを要求されるらしい。

 実は体が滅茶苦茶柔らかい。

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