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魔導のファンタジスタ  作者: ルジリオ
一章 魔導学院、入学へ
32/130

試験終了

 ゴールのネットが揺れたとき、誰もが息を止めていた。

 シュンが放ったマジックシュートに驚愕していたからだ。

「なんだ、今のシュートは……俺たちと同じ中等部が放つシュートなのか?」

 誰かがそう呟いた。

 あの威力、あのスピード、そしてあのシュートの撃ち方。すべてが規格外。

 学院の高等部でもあれほどのシュートを打てるものはそうそういない。

 ティンクレイの『カノンファイア』にも負けないテクニカルなマジックシュートだ。

「やった……入った……うっ!?」

 点を取ったことに喜ぶシュンだが、体をふらつかせて膝をつく。

「え、ちょっとシュン!」

 急に膝をついたシュンを心配して集まるレッドチーム。

 シュンの様態を見ると息が荒く、顔も青白い。体調が悪いことが一目でわかる。

「だ、大丈夫。ちょっとふらついただけだ、立てるよ」

 そういって立ち上がるシュン。

 理由は明白。

 シュンの体内の魔力残量が底を尽きかけているからだ。

 産まれながら魔力量が少ないシュン。短時間で魔法を連続しようしたことによって魔力が大量に消費されてしまった。

(まあ、試合時間が十五分だから無茶できたってわけだが)

 マジックサッカーの試合ではスタミナだけでなく魔力量も考えながらプレイをしなければならない。いつもの前後半各三十分、四十五分の試合ならここぞというときにしか魔法を使わない。

 だが今回は試験であり、さらに前後半各十五分の試合だからこそ魔法を連続しようできたのだ。

 それによる反動が来ただけ。最低限動ける魔力も残している。

 ふらつくが、深呼吸して落ち着けばいつも通りのプレイもできる。途中交代されないようにシュンはきちんと魔力量を考えながらプレイしているのだ。

「試合終了! 実践形式の試験は終わりだ!」

(もっとも試合はもう終わりだから問題ない、か)

 審判の声がフィールドに響く。

 シュンの得点で試合終了。

 スコアには六対一とかかれているが、前半の得点を外せばに二対一。

「よっしゃ! やっぱ勝つと気持ちいいな!」

「まあ、勝ったとはいえあなたに出番を取られたから素直に喜んでいいのかわからないけど」

「喜ぼうぜ! たとえ試験でも全力だしてサッカーをして勝てたんだ!」

「そうそう!」

 レッドチーム、勝利に大喜び。

 試験とはいえ相手が強敵でそれに勝てたなら喜ばないはずがない。いいプレイをして、試合に勝つ。サッカープレイヤーなら誰もが喜ぶことであろう。

 当然、シュンもチームの勝利にガッツポーズ。

「く……まさか負けるなんてよ」

「相手の攻めを止めていれば……」

「あー、もうちょっとうまくできたよな」

 一方ティンクレイがいるブルーチームは暗い雰囲気に――とはなってはいるものの、試験官にアピールできたことに内心喜んでいるものもいる。それに次勝負して勝つために頭のなかで練習のメニューを考えているものもいる。

「まあ、試験官にアピールできていればいいんじゃねえの。一部のフォワードの人はお気の毒って感じだけどな」

「あの二人が別格だからねえ」

 この試合は、シュンとティンクレイは中心になって動いていた。

 試合している途中に彼らにボールを渡せばいける、そんな希望を抱いてしまうほどの実力者。

 実際、他のフォワードの選手はあまり活躍できていない。シュンとティンクレイはシュートを打って点を決めていたからだ。

「……」

 その活躍したティンクレイは黙ったまま相手のチームを見ていた。

 拳を強く握りしめて。

「ティンクレイ……」

「話しかけてくんじゃねえよ」

 気分が悪そうにそう言った。

 睨まれて他のメンバーは体を震わせる。だが一部のメンバーは首をかしげていた。ティンクレイの背中からどこか悲しさも感じてしまったからだ。

 



 試験はすべて終わった。

 試験に受けに来た人は会場の椅子に座って結果を待っている。中にはいまだにフィールドにいてボールを蹴っている人もいる。皆心臓をバクバクさせて待っている。

 シュンはリフティングして結果を来るまで待っていた。

 マジックポーションも飲んで体調も回復済みだ。

「たぶん、結果は大丈夫のはずだ」

 試合ではきちんと結果を残せた。

 チームを勝利に導くことができた。

 大丈夫なはずだ。

「うん、なんの問題ないな」

 そのはずだ。シュンは結果が来るまでリフティングで時間を潰していた。




「シュンさん、申し訳ありません。不合格とさせていただきます」

 試験官から返ってきた言葉は予想できない聞きたくないものであった。

【エルドラドサッカー日誌】

 トゥール魔導学院

 エルドラド大陸中央地区にある学院。【可能性の開花】が学院が志すものであり、魔導士の技術の結晶てある、魔力を燃料とする『魔道具』の生産、開発を主としている学院。

 トゥール魔導学院サッカー部は『魔道具』をトレーニングの道具として活用して、部員の練習の質を上げている。

 キャプテン、スパーナ・ボルトナトか率いるサッカー部は魔道具の開発員であると同時にサッカープレーヤーである。魔道具によって鍛えられたサッカー技術でどこまで強くなれるか、が目標である。

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