エピローグ 夢見つけて、突き進んで
エルドラド魔導祭のサッカー観戦を終えて、その後も祭りとサッカーを楽しんだシュン。その日のプレイは一段とキレのある動きで、本人も翼が生えたかのように軽い、そう思ったほどだ。サッカーの観戦のおかけだろうか。
そして翌日、シュンはオドロン村に帰ることになった。旅行費は家の貯金を使っても、一日しか持たなかったのだ。
「ワガママ言ってこの街に来てよかった。父さんと母さん、ありがとう」
「いいんだ、こっちも楽しかったからね」
「そうそう、仕事のことを考えないで家族と一緒に旅行するの楽しいわ」
家族にお礼を言う。
この街では大事なことを思い出すことができた。
シュンの夢、最高のチームに出会って、サッカー大会で優勝すること。
この異世界でも成し遂げてみせる。
シュンの心は燃えている。
「シュン!」
レイカの声だ。
振り向くと、走ってやってくる。
別れの挨拶を言いに来たのだろう。
「レイカ。おはよう」
「おはよう、もう帰るの?」
「うん。両親も仕事があるからね」
「そう、なら仕方ないわね。また、会えるかしら……」
「会えるさ、サッカーをし続ければ。だっていま会えたのもサッカーを今日までし続けていたからさ」
両者、サッカー観戦でこの街に来た。もしかしたらレイカは他に理由はあるかもしれないが、サッカー観戦で来たのは間違いないはず。
サッカーを愛していたからこそ、再び会えたようなものだ。
「そうね。シュン、頑張って」
「ああ、レイカも頑張れよ」
「約束よ! 会ったらまたサッカーしようね!」
「もちろんだ!」
サッカーで繋がれた絆。二人はサッカーを再びしようと約束を交わして、シュンはこの街を去った。
キャペルから馬車に乗って、オドロン村に帰ってきたシュン達。
「おっ、シュン! おかえり! で、どうだったよ、祭は!」
「お土産ない? あったらくれ!」
「出会ってばかりで土産をねだるな! ああ、シュン。エルドラド魔導祭のサッカー大会は凄かったか? ほかの競技のことも詳しく聞きたいのだが……」
馬車からでるとドーロン、カガリ、リズルのいつもの三人組がいた。
シュンの土産話を聞きにここで待っていたみたいだ。
「ああ、最高だったよ。俺の知らない技も見えたし、本格的な試合を見ることができた。新たな技や練習も考えつくほどにね」
シュンはキャペルの旅行の思い出を話した。
サッカーのこと、そしてエルドラド魔導祭の様々な白熱した競技の話。
シュンの話を聞く三人組は皆目を輝かせていた。
「おー!」
「そして、レイカにも出会ったよ」
「レイカにか! そっか、サッカー好きなあいつならエルドラド魔導祭に来てもおかしくないのか!」
「彼女ともサッカーをしたよ。上手くなってた、シュートの威力もテクニックもな。負けられないって思ったよ」
今回の旅行はいい経験になった。
そして、自分がしたいことも見つけた。
「だからよ、サッカーしに行こうぜ!」
「「「え!?」」」
シュンの言葉に三人共驚く。シュンはいつの間にかサッカーボールを手にしていた。
「俺、思ったんだ。あんな熱い戦いを繰り広げるサッカー大会を見てさ。俺も出たいって、優勝したいってな。だから、その特訓だ! 今よりうまくなるためにサッカーするぞ!」
そういって村の広場に向かって走り出すシュン。すでにサッカーをする気満々。
三人は遠ざかっていくシュンを見つめながら、
「おいおいおい、あのサッカーバカ。村に帰っていきなりサッカーしようだとよ」
「それほどいい刺激があったんだろう。しかしエルドラド魔導祭に出るには魔導学院に入学しなければならないのだが……」
「なんか考えがあるんじゃねーのか?」
「お土産ないのか? まああとで聞くか! 俺もサッカーするぞ!」
とりあえずシュンを追いかける三人組。
村の中を走りながら空を見上げて、
(前世で果たせなかった夢――絶対に叶えてやるぞ!)