表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結済】異能部へようこそっ!  作者: みおゆ
第9話・わたしたちだけの文化祭
90/110

わたしたちだけの文化祭(4)

 異能部に戻ったせつな。そこでは、ホワイトボードいっぱいに出し物の案が書き出され、会議に盛り上がる三人の姿があった。


「おっ、せつなおかえり。どうだった?」


 奈子(なこ)はせつなにいち早く気づき、そう声をかけた。


「異能の許可、下りました! ……ただ、やっぱり林檎(りんご)先輩が異能を使うのだけはダメでした」

「なんでわたしだけはダメなのよ!? っていうか『やっぱり』って何よ!」

「そりぁあ、やっぱり危なっかしいからじゃない〜?」


 ホワイトボードに立つ奈子は冷静に、「そうなると、このへんの案は使えないな〜」などと取り消し線を引いていた。


 せつなはホワイトボードに書かれた案を見て、数々のアイデアに目を輝かせる。


「――にしてもすごいです! こんなに多くアイデアが出るなんて……!」

「とりあえずやってみたいことを話し合って書き出していたんだ。あとはここから実現できそうなものを探すか……ってところだが、せつなは何か意見はあるかい?」

「わ、わたしは……」


 せつなは数々のアイデアとにらめっこしながら考える。その中にひとつ、目を引くものがあった。


「あ、これとかいいんじゃないですか?」


 せつなが指差したその案に、一同は深く頷いた。


「はいはーい! それ、わたしが出した案なのよ! せつな、見る目あるわね!」

「ボクも結局はそれがいいかなぁと思ってたんだぁ」

「同意だ。わたしもそれが一番異能部らしくていいと思う」

「それじゃあ……これで決まりですね!」


 奈子はその案に赤丸を付け、三人を見やりこう話す。


「――では、必要な物品は生徒会へ後ほど申請するとして……明日からは準備に取りかかろう。文化祭まで残り一週間、全力で楽しむぞ!」


「「「了解!」」」


 こうして異能部は文化祭へ向けて動き出したのだった。


 果たして、文化祭当日はどうなるのだろうか――。




 ◇




「文化祭なんて……珍しいこともいうものね」


 二人の人影だけが映る、夕方の生徒会室にて、一人の少女――茉莉(まつり)が口を開いた。


「あら、そうかしら? 白咲(しろさき)さんは、あまり文化祭がお好きでないの?」


 そう言い、デスクの上に腰掛け足を組み、茉莉を見下ろすは――華乃(かの)だ。


「好きとか嫌いとかじゃないわ。……ただ、今度は何を企んでいるんだろうと思ってね」

「『企む』とはどういったことかしら? わたくしはただ、みなさまに息抜きしてほしいだけですわ。……もう残り時間も少ないんですもの、みなさまには学生らしく、思い出作りをしてもらわないと……ね」


 華乃は微笑んだ。その笑みは偽りらしきものは一切感じない、優しさだけが見えた。


「残り時間……って、誰の」


 訝しげに問う茉莉に、華乃は目を細めた。


「――三山(みやま)さんの、です。彼女の残された時間はもうあまりありません」


 茉莉は目を見開いた。


「これは三山さんに向けての、最後の思い出作りともいえますわ」

「……っ、待って! 三山先輩はせつなにとって姉のような人なのよ……! どうにかして助けてやれないの!?」

「――無理です。なぜなら、尾張(おわり)さんの異能(ちから)は、尾張さん自身にしか適用されないからです」

「……っ」


 茉莉は両の拳を握り、奥歯を噛み締めた。


「……ですが、ひとつ条件を満たせばこの異能はさらに強くなりますの」

「強く……?」


 華乃は目を細め、こう言い放つ。


「――それは『絶望』です。人は窮地に追い込まれてこそ、真の力を発揮する」


 茉莉は華乃を鋭く睨みつけた。


「わたくしはそのタイミングで、尾張さんの異能をいただきます。そして、学園生徒たちだけの永遠の楽園を築きあげるのです」

「何……それ」

「実現すれば、わたくしは此乃(この)を失わずに済むことができる。学園生徒のみなさまも失わずに済むことができる――永遠に少女のまま、この学園で過ごしていけるのです」


 茉莉は何かを言おうとしてか口を開きかけたが、一度言葉を飲み込んだ。


「……その理論だと、三山先輩とせつなは失われてるんだけど?」


「そんなことはありませんわ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「……相変わらず、頭イカれてんじゃないの」


 茉莉は軽蔑した眼差しを華乃へ向けたが、華乃は一切気にする様子はなかった。


「身勝手で、自己中だわ……アタシたちのこと、どう思ってるのよ……!?」


 華乃は可憐に笑い、デスクに腰を下ろし真っ直ぐ茉莉を見つめる。



「もちろん、心の底から愛していますわ。親よりも、大人たちよりも、権力よりも……国よりも」



 その発言は、誰が聞いても嘘だと疑いようがないくらいに、真面目なものだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ