わたしたちだけの文化祭(3)
「文化祭当日の異能の使用の許可、ですか。もちろんいいですよ」
生徒会室へ訪れたせつなは、会長である華乃に事情を説明したところ、あっさりと許可が下りた。
「ただし、危険が及ぶようなことは絶対にしないでくださいまし。例えば、叡天さんの異能は……」
「もちろんです、副部長の異能はさすがに使用しません」
せつなは苦笑い気味に答えた。林檎は『触れた対象を爆弾に変える』異能を持っている――文化祭で使用するには、あまりに危険すぎる。
「異能部はどんな出し物をするかもう決めましたの?」
「いえ、まだ内容までは思いついていなくって……。ただ、異能部らしい出し物にしたいなとは考えています」
「ふふ、そうですか。楽しみですわ」
華乃とのやり取りも終わり、せつなはここで失礼しようとしたとき、生徒会室の扉が開いた。
そこへ現れたのは、きんぎょ、茉莉、ヨヨの三人だ。
三人はそれぞれ何か大きな荷物を抱えていた。
「あ、せっつーじゃん〜。どしたん?」
きんぎょはせつなを見るなり、そう言った。せつなは「文化祭当日に異能の使用ができないかと会長に相談に来ていました」と答えつつ、三人が抱える荷物へ視線を向けた。
きんぎょはせつなの視線に気づいたようで、「ああ、これ?」と、部屋の隅に置きながら答える。
「文化祭に向けての飾り付けグッズとか……あと、ほかの部から申請があった備品とかだよ。みんな張り切ってるみたいでさぁ、用意するの大変〜みたいな?」
「ヨヨ、お手伝い、頑張り、ました!」
ヨヨは荷物を掲げて、せつなに笑いかけた。せつなは「えらいね〜」とヨヨのかわいさに頬を緩ませながら褒め言葉をかけた。
「もうほかの部はどんな出し物にするか決まってるんですね……! あの、ちょっと中身――」
「中は見せないわよ。出し物は当日のお楽しみ」
せつなの目論見を先読みしたか、茉莉は荷物の前に仁王立ちして遮った。
「えー、ちょっとだけ見せてよ!」
「ダメよ。自分たちの出し物は自分たちで考えなさい」
「茉莉ちゃんのケチ!」
「ケチって何よ!」
「まあまあ二人とも落ち着け、みたいな〜」と言い争う二人の間にきんぎょは入った。
「まあ文化祭なんだから気楽にさ? 大層なものを作ろうとかしないでもいいっしょ」
「そうですけど……」
わかってはいるが、そう簡単に出し物のアイデアも降ってこないのが現実だ。
「あ、そういえば、生徒会はどんな出し物をやるか聞いてもいいですか?」
少しでもアイデアの一助にならないかと、せつなはそう聞いたが、しかし――
「生徒会は出し物はやらないわ。当日の文化祭が安全に運営できるように見回りするだけよ」
と、茉莉からまさかの返答が。
「見回りなんて! 文化祭楽しめないじゃん!」
「そんなことありませんわよ。見回りといいましても言葉だけで、実際はみなさまの出し物を楽しませていただこうと考えていますもの」
華乃も輪に加わるように、せつなの後ろからそう声をかけた。
「ヨヨ、文化祭はきんぎょと、せつなの見に行きます。せつなの出し物、楽しみ、です」
ヨヨに期待を向けられ、ますますプレッシャーのかかるせつな。
頭を抱え出すせつなにヨヨは不安そうに、「ヨヨ、ダメなこと、言った?」ときんぎょを見上げ問うたが、きんぎょは「ううん。せっつーたちの出し物、楽しみにしてようね」と、よりせつなへ追い討ちをかけたのだった。