わたしたちだけの文化祭(2)
「――というわけで! 文化祭の出し物について会議をしたいと思います!」
異能部部室にて、せつなは高らかにそう号令をかけた。
部室隅にあったホワイトボードを取り出し、せつなは意気揚々とペンを片手にみなに期待の眼差しを向けている。
一方、せつな以外のメンバーはいつもどおりの様子だった――ひとり亜仁だけは、かつて部室にいた猫がいなくなったことにより、代わりに猫のぬいぐるみを抱いていたが。
あまりにも積極的ではないメンバーにせつなは、
「あれぇ!? 先輩たち、全然やる気なくないですか!?」
と驚きの声を上げた。
林檎はせんべいにかじりついてから、せつなを一瞥する。
「うーん……なんかいまいちピンとこなくって、文化祭って今まで経験したことないから、何したらいいかわからないのよ」
林檎はそう話し、隣で亜仁も頷いていた。
「各部が出し物を決めて行う……って会長さんは話していたけれど、ボクも何したらいいか全然思いつかないよぉ」
亜仁はソファに寝転がりながら、大きくあくびをした。その姿は気ままな猫そのものだ。
「せつなは文化祭とやらには詳しいのか? そうならぜひせつなの意見を聞きたいかな」
奈子はそう言ってせつなへ意見を促した。せつなは「わたしも特に文化祭の経験はなくて、マンガで見た知識だけなんだけど……」としばらく考えてから、こう続ける。
「文化祭って、とにかく明るくて自由でお祭りみたいな感じで楽しむものなんです! よく出し物として見るのは、メイド喫茶とお化け屋敷ですかね?」
「お化け屋敷なんて絶対嫌!」と林檎は即座に否定した。亜仁はその後ろから、「林檎ちゃん、お化け苦手なの〜?」とからかっている。
「なら、メイド喫茶をやろうか? ところでせつな、メイド喫茶とはどんなものだ?」
素直な奈子に、今度は亜仁が「め、メイド喫茶は恥ずかしいからパス……!」と声を上げた。奈子は首を傾げ、「そんな恥ずかしいものなのか……?」と呟いていた。
「アハハ……この二つって結構メジャーですし、できれば異能部らしいものをやりたいですね!」
せつなは二つの案を下げ、次なる案を模索する。
ほかの三人も何がいいか考え込み、一番最初に口を開いたのは林檎だった。
「異能部らしさっていったらやっぱり異能を使ったものにしなきゃ!」
林檎の発言に、みな苦笑いを浮かべる。
「林檎ちゃん〜、みんなその上で何かできないか考えてるんだよぉ」
「むー……」
亜仁に説明された林檎は顔を赤くし、また思案を始めたようだ。
「だがしかし、異能を使うとしても事前に許可が下りるかどうかだな。校則で戦闘以外の異能の使用は禁じられているし……」
そんな奈子に対し、「今は先生もいないし、いいんじゃないですかぁ」と亜仁は言うが、奈子は「いや、会長が許さないだろう」といたって真面目だった。
「なら、まずは会長から許可をもらわないとですね。わたし、会長に相談してみます! 先輩たちは、異能部の出し物考えといてください〜!」
事が決まれば即行動のせつなはそれだけ言い残し、さっさと部室を出て行ってしまった。
――残された三人。
林檎はまた何か思いついたような顔をして、こんなことを言う。
「あ、運試しゲームなんてどう? 三つのスイカを並べて、どれかひとつ選んで叩くの。当たりを引いたらお菓子をプレゼント。そのうち二つのハズレはわたしが爆弾に変えてるもので、それを引くとドカンと爆発!」
「「却下」」
奈子と亜仁に即座に否定され、林檎はまた頬を膨らませるのだった。