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【完結済】異能部へようこそっ!  作者: みおゆ
第8話・量産型少女――コピー・ガール――
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量産型少女――コピー・ガール――(18)

 音の元を辿れば――茂みからクロスボウを構えた鉄子(てつこ)が顔を出していた。


「地下室に引きこもるたった一人の武具製作部のことなんて、お前忘れてただろ」


 ヴァッフェの首筋には、一本の注射器のようなものが突き刺さられていた。


「何……を、やったの?」


 ヴァッフェは問う。

 華乃(かの)はニコリと微笑み、答える。


「わたくし、あなたの異能はとても素晴らしいと思っていますのよ――そりゃあ、()()()()()()()()()()()


 ヴァッフェの力が緩む。華乃はその瞬間を逃さずヴァッフェを押し退け、立ち上がり、スカートを払いつつ、折り目を正し、制服を整えた。


 華乃は膝立ちのまま呆然とするヴァッフェから数メートル距離を取り、再び彼女と対峙する。


唐栗(からくり)さんに即興で、『活性化進行薬』を武器へ改良し、打ち込んでもらいました」


 ヴァッフェはゆっくりと視線を動かし、鉄子(てつこ)のほうを見た――それから、一瞬だけフッと柔らかい笑みを浮かべる。


 その笑みの理由はわからない。ただいえるのは、どこか安心感を抱いたような笑みだった。


 ヴァッフェは再び華乃を睨みつけながら、ヨロヨロと覚束ない足で立ち上がり、首元に刺された注射器を抜き取り捨てる。


「こんなの、わたしにやったって意味ないわよ。だってもうわたし、とっくに兵器にさせられてしまったのよ?」

「それは結果を見ないことにはわかりませんわ」


 ヴァッフェは「何を根拠にそんな――」と言いかけて、突然咳き込んだ。ヴァッフェの手のひらにな赤いものがついていた――喀血したのだと、ヴァッフェもすぐ理解したようで目を丸くする。


 さらにヴァッフェは身体の力が抜けていったのか膝から崩れ落ち、手足の先から肌が鱗のように割れ、剥がれ落ちていく。


 鉄子(てつこ)は固唾を飲んでその様子を見守り、華乃はワクワクとこの状況を楽しむかのように、ヴァッフェの変化を見つめていた。


 ヴァッフェの身体は足元からみるみるうちに崩れていく。最終的に唯一原型を留めたその顔は、最後に絶望の表情を浮かべるわけではなく――穏やかに微笑んでいた。



「ああ、なんだわたし……まだちゃんと、少女(ひと)だったんだ」



 直後、ヴァッフェの身体が発光し、一帯の視界が奪われる――次に辺りを視認できるようになったとき、華乃の前には、何十本もの手足を生やし巨大な尾を生やした、まるでトカゲのような風貌の巨大なソラビトが出現していた。


 鉄子は唖然とし、ヴァッフェだったソラビトを見上げていた。


 一方華乃は、ごちそうを前にした子供のように、無邪気に舌なめずりをした。


「あら、これは食べる甲斐のあるソラビトですわね」


 言って、華乃は両手を合わせた。


「いただきます」


 刹那、ソラビトの頭は縦に潰れ、消失した。


 身体を支えることができなくなったソラビトは、そのまま後方へ倒れていく。


「……こんなアッサリ終わっちまうなんて」


 鉄子はその有様を眺めながら、一人悔しげに呟く。


「……あんまりにも、あんまりだ」


 

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