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【完結済】異能部へようこそっ!  作者: みおゆ
第7話・新たな出会いと深まる交流
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新たな出会いと深まる交流(15)

 ヨヨがこの学園に来てから数日経った日のこと。

 学園生徒たちは講堂に集められていた。


「講堂へ来る度に、入学式のことを思い出しちゃいますね」


 そう話すくるるに、せつなも笑顔で頷いた。


「あれ? そういえば茉莉(まつり)ちゃんがいないね」


 せつなは空いた右隣の席を見ながら言った。


「茉莉って子なら壇上の裏にでもいんだろ。ほら、アイツ生徒会だろ?」


 そのとき、そう後ろから鉄子(てつこ)の声がかかった。


「あ、そういえばそうでした。……えへへ、なんだか生徒会って、会長と副会長だけなイメージがあって……」

「それ、茉莉さんが聞いたらほっぺを膨らませながら怒りそうですね」


 せつなとくるるは小さな声で笑いあった。


「……三人とも、仲いいんだな」


 ふと言われた鉄子の言葉に、せつなとくるるは不思議そうな顔で鉄子を見つめ返す。

 鉄子はそんな二人の視線に気づき、笑いながら言う。


「……別に、深い意味はねぇよ。ただ見ててそう思っただけだ」


 せつなとくるるは顔を見合わせたとき、ちょうど講堂の明かりが落ちて、壇上にスポットライトが当たった。


 一同は壇上への注目し、会の始まりを見届ける。


 舞台袖から生徒会長である華乃(かの)が現れ、演台の前につくとゆっくりと口を開く。


「ごきげんよう。今日は新しい仲間を紹介しようと思いまして、生徒集会を開きましたのよ。……といっても、もうみなさま存じ上げていると思いますけれど、形式上、この場を持ってきちんとお伝えさせていただきますわ。早速ですが、紹介いたします――」


 華乃は舞台袖に視線をやった。その合図を受けてか、舞台袖から恐る恐るといった様子で、新調したての音萌学園の制服を身に纏った少女――ヨヨが登場した。


 華乃の横についたヨヨは、緊張した面持ちで座席に座る生徒一同を見上げた。


「さあ、ここへ来て、自己紹介なさって」


 華乃は優しく演台へと誘導する。そのままでは演台に頭が届かないヨヨは、慎重に演台手前の階段を使い頭を出し、マイクの前へと立った。


 大きく息を吸い、緊張を落ち着かせてからヨヨはマイクに手をかけた。


「よ……ヨヨは、ヨヨです。今日、から……この学園に、お世話になる……なり、ます。えと……ヨヨは、異能があるけど、みんなみたいに、まだ上手に使えません。……でも! 迷惑かけないように、ちゃんと目隠し(これ)をしているので、こ、怖がらないでくれたら、うれしい、です。……よ、よろしくお願い、します!」


 ヨヨは自己紹介を言い切り頭を下げた――次の瞬間、ヨヨの「あうっ!」という声と衝撃音が、マイクを通して響く。ヨヨは最後の最後で、マイクに頭をぶつけてしまったのだ。


「あらあら、かわいいわぁ〜♡」


 そんなドジっぷりを見て、癒月(ゆづき)は頬に手を当て微笑ましそうにしていた。


 ヨヨの隣で自己紹介を聞いていた華乃も微笑みを浮かべてから、生徒一同を見やる。


「以上、今日から我が学園の仲間となるヨヨさんの自己紹介でしたわ。みなさま、新たな仲間を迎え入れる拍手を!」


 華乃の一声を機に、講堂は温かい拍手の音に包まれた。

 拍手が止むと、また華乃は話を再開する。


「今回特例での入学となりましたが、みなさま新たな後輩ができたと思って、いろいろと教えてあげてくださいね。……さて。次は彼女のつく部ですが……」


 せつなは込み上げてくる気持ちを抑えながら、華乃の発表を待った。

 ヨヨは異能使い。つまり、十中八九異能部への所属になるだろうと、せつなは睨んでいるのだ。


 正直気が早いが、もう後輩を持ち、ヨヨと部活動をともにできることに、うれしさを感じていた。


 せつなはスカートの裾を握り締め、壇上に立つ華乃を見つめた。



「――ヨヨさんを、『生徒会』に任命いたします」



「ええーーー!?」


 ヨヨの所属する部が発表されると同時に、せつなの驚きの声が響き渡った。


 席から立ち上がって呆然とするせつなに、奈子(なこ)は慌てて近づき、席に座らせる。


「せつな! 集会中になぜ大声を……! 申し訳ありません、生徒会長! 後ほど彼女にはキツく注意しておきますので……」

「ご、ごめんなさい〜……。だけど、ヨヨちゃんは絶対異能部に入ると思ってたから……」


 奈子に頭を押えられながら、せつなはそう言った。

 奈子は呆れ交じりにため息をつき、壇上からせつなの様子を見ていた華乃は可憐に笑った。


「あなたの期待を裏切るようなことをして申し訳ありませんわ。だけれどね、異能部はソラビトと戦う最前線の部隊。そんな部へ、まだ小さなヨヨさんを入部させられませんもの。だから、ヨヨさんには生徒会でのお手伝いをしてもらおうと、わたくしたちのところへ任命したのですわ」


 華乃の説明に、せつなも渋々ながら納得した。部活が離れ離れになる現実には、まだショックは癒えずにいたが……。


 とにかく、せつなが今言うべきことはただひとつ。


「突然声を上げて、すみませんでした……」


 華乃の「いいのよ」という、柔らかい許しとともに講堂には囁かな笑いが起こり、せつな(本人)の気持ちとは反対に、和んだ空気がしばらく続いたのだった。

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