新たな出会いと深まる交流(9)
せつなとくるるはヨヨ連れ、学園給養部へと訪れた。
「いや〜! 何この子!? めちゃくちゃかわいいやん! 天使や〜!!」
給養部へ着くなり、米来はすぐにヨヨの存在に気づいたようで、歓喜の声を上げながらヨヨの元へと駆け寄ってきた。
ヨヨは緊張しながらも、「ヨヨ、です。よろしくお願い、します」と、挨拶をした。
米来は、「ウチは凧坂米来や、よろしくな〜!」と、ますます頬を緩めて、挨拶を返した。
「任務中にこの子と出会って……どうやら施設から抜け出した孤児のようです。おなかが空いているみたいなので、ここへ連れてきました」
「おお、そうなんかいな。まあいろいろありそうやけど、今は聞くのはやめるわ。とにかく、いっぱい食べてき!」
せつなの説明を聞き、米来もとやかく聞くのは控えてくれるようだ。
「歩煎! かわいい子が来てるで! そこに籠ってないで挨拶せな!」
米来は厨房の扉へ向かって、そう声をかけた。扉は少しだけ開き、細い隙間から歩煎がこちらを覗き込む。
「……ぼ、ボク、小さい子、苦手……」
怖がる歩煎。
一方、ヨヨは扉の前に近づき、ヨヨからも、歩煎の顔を覗き込もうとする。歩煎は「……ヒッ!」と声を上げ、扉を閉めかけた。
「こ、怖くないです。わたし、今はこれしてます。大丈夫、です」
ヨヨは「これ」と言いながら、自身の目に巻いている包帯を指した。
歩煎が恐怖している理由はヨヨの目についてではないと思うが、ヨヨからしたらそう感じ取ったのだろう。
歩煎は首を傾げつつも、歩み寄ろうとするヨヨを見て、ゆっくりと扉の外へと出た。
「わたし、ヨヨです。よろしく、お願いします」
「ヨヨ」と口にする度、うれしそうにはにかむヨヨに、歩煎も少しだけ警戒が解けたようだ。
「墨田歩煎……です。えっと、デザートは、そうだな……パフェでいいかな……?」
ヨヨは「ぱふぇ?」と、パフェの存在を知らない様子だったが、それでも笑顔で、
「はい、ありがとうございます! よろしくお願い、します」
と、礼儀正しく頭を下げた。
そんな二人の様子を微笑ましく見守っていたせつなだったが、くるるから声をかけられ、意識を彼女へ向ける。
「もしかしてヨヨさんも、異能使いなんでしょうか? 何か目にまつわる異能があるのかもしれません……目のことをすごく気にしていますし。あの様子を見るに、自分で制御できない異能なのかも……」
くるるの推測に、せつなも概ね同意だった。
「そうかも。わたしも異能が発現してからすぐは、うまく自分でコントロールできないことあったし……ヨヨちゃんも、異能が目覚めたばかりかもしれない。もし異能使いなら、わたしは異能使いの先輩として、ヨヨちゃんを支えていこうって思うよ」
「ふふ。未来の異能部員になるかもですね」
――「未来の異能部員」。
その言葉を聞いて、ヨヨは数年後異能部の後輩になるのかもしれないと思うと、期待の膨らむせつななのであった。