新たな出会いと深まる交流(8)
「じゃあ、これからよろしくね。ヨヨちゃん」
輪香は言うと、ヨヨはまたうれしそうに頷いた。
「……! あ、すみません。ヨヨ、お礼もまだで……。あの、ここまでよくしてくださり、ありがとう、ございます。怪我したところ、ばんそーこー貼ってくれたから、元気です」
ヨヨは頭を下げ、また笑みを浮かべた。少しずつ笑顔を見せはじめたヨヨに、この場の空気も和やかになっていく。
「でーも。絆創膏貼ったら大丈夫じゃないのよぉ。ちゃんと健康になるまで、しばらくは保健部で経過観察ですからねぇ」
「ケイカカンサツ」
ヨヨは聞き慣れない言葉なのか、真剣な表情で癒月の言葉を繰り返した。そんなヨヨに「あら〜、かわいいわぁ♡」と、癒月はご満悦だ。
「いろいろあなたのことは気になるけれど、とりあえず、会長の指示が出るまでは根掘り葉掘りこちらから聞くのはやめるわ。まず、あなたのやるべきことはひとつ」
輪香はヨヨの目を見ながら、言う。
「――そんな栄養不足な身体じゃいけないわ。給養部へ行って、何か体力のつくものを食べてこなくっちゃ」
「……ごはんの時間?」
「そうよ」
少女はまた、少しだけ表情が曇った。輪香は「どうしたの? ごはん、食べる気力ないかしら?」と不安そうに問いかけた。
「ごはん食べたら……そのあとは? ヨヨ、今度は何をするの? やっぱり、あっちへ戻されるの?」
輪香は優しくヨヨの手を取り、静かに首を横に振った。
「……それは会長の判断によるわ。でも、あなたが元いた場所に帰りたくないというのなら、その意思を尊重し、行動する。……どう見たって、元いた場所がいい場所とは、何も知らないわたしでも感じるもの」
ヨヨはとりあえずは戻らなくてよいと聞き、安心したようだ。
「今はこのあとのことなんて不安に考え込まなくていいから、せつなたちといっしょにおいしいものでも食べておいで。あなたはとにかく、元気になることが最優先、なんだからね」
輪香にそう言われたヨヨは、しっかりと頷いた。
ヨヨは握りしめていたフラウドストーンを病衣のポケットにしまってから、ベッドから降りせつなを見上げた。
その途端、ヨヨのお腹がきゅーっと、小さく鳴り、ヨヨは顔を真っ赤にさせた。せつなは微笑みながら、「じゃ、早速給養部へ行こっか」と声をかけた。
「よ、よろしくお願い、します」
と、ヨヨはぎこちないながらも礼をした。
こうして、せつなたちは学園給養部へ向かうために保健室をあとにした。
「んじゃ、オレも部室戻るわ」
「此乃も、部長と副部長に会ってくるであります!」
続いて、鉄子と此乃もそう言い残し、保健部を立ち去っていくのだった。
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