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【完結済】異能部へようこそっ!  作者: みおゆ
第7話・新たな出会いと深まる交流
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新たな出会いと深まる交流(1)

 白咲茉莉(しろさき まつり)は寮の自室で一人、窓の外を眺めていた。


 ほとんど街灯がないこの島はすっかり暗闇に染まり、月の光を反射する海だけがかろうじてその存在を感じ取れ、穏やかな波音が囁かに聞こえている。


「お姉ちゃんは、どこにいるんだろう」


 茉莉は誰に伝えるわけでもなく、思いを口に出す。


「――会長は言っていた。『あなたのお姉様の頭を潰してしまいそう』って。……それって、お姉ちゃんがどこかにいるってことよね」


 茉莉は視線を動かし、机の上に置かれた写真立てを見た。

 その写真には、音萌(おともえ)学園の制服を着た少女と、ランドセルを背負った少女が写っていた――茉莉の姉と、茉莉本人だ。


「……いなくなってしまっていたらどうしようと思っていたけど、よかった。お姉ちゃんは絶対にいる。でも、どこに……。会長が協力してくれるわけないし、むしろ、『千里眼』の異能を手にした会長の前では迂闊に行動もできない。下手に動いた姿を見られれば、『重力を操る』異能でアタシはたぶん、きっと殺される。まさかあの会長が、『他者の能力を奪う』異能だとは想定していなかったわ」


「〈生命搾取(カニバリズム)〉、ねぇ……」と、以前会長――華乃(かの)が自称していた異能の呼び名を呟いた。


「……会長の名づけた名前を借りれば、〈千里眼を持つ少女(クリア・ガール)〉と〈重力と友達の少女(グラヴィティ・ガール)〉は、すでにこの世に存在しなかったことになっている。きっと彼女たちは、会長の〈生命搾取(カニバリズム)〉によって殺された……と、考えていいのかしら。それとも、彼女たちが死んでしまったあと奪われたのか……どちらにせよ、会長は直接的に、もしくは間接的に彼女たちを殺したことに違いはないわ。会長はわたしの能力を奪おうと考えている様子はないけど、急に気分が変わるかもしれない」


 そのとき、小さなバイブ音が聞こえた。

 茉莉はスマホから充電コードを抜き取ってから、通知を確認する。


 一年生だけのグループトークルームには、せつなからのメッセージが入っていた。


『クッキー作り楽しかったね! ありがとう! 林檎(りんご)先輩、すっごく喜んでくれてね、今はとっても元気だよ!』


 茉莉は、せつなのメッセージを見て思い出す。

 昨日、生徒会へソラビト対策兼司令部が現れ、乃木羽(のぎは)たちが伝えに来たことを――せつながゲハイムニスに狙われている、ということを。


 せつなのメッセージから数秒後、


『よかったです〜! またみなさんで、料理したいですね♪』


 と、すぐにくるるから返信メッセージが入った。


 茉莉は少し考える。ただメッセージを確認するだけで終わるか、それとも、何かメッセージを返すべきか。


「…………」


 茉莉は悩みながらも指を動かす。


『だから言ったでしょ。元気になるに決まってるって』


 素直じゃない言葉。自分でも自覚はあるが、中々ありのままの想いを伝えるということは難しいものだ。


 でも、彼女らはそんな自分を理解してくれる。それがうれしい反面、鬱陶しくもあった。初めて出会ったころ、他者を一切無視していたというのに、なおも話しかけ歩み寄ろうとしたせつなは、茉莉にとって非常に厄介である。


「本当は、関わらないでほしいのに。距離を縮めたくはないのに。だってどうせ、せつな、アンタは、きっと……」


 茉莉は、思わず弱音を吐いてしまった自分の頬を叩いた。


「――そんなことはいいのよ! とにかく今は生徒会として、せつなを守りきることに専念しなくっちゃ。わたしは会長とは違う。わたしは、ただせつなを守らなくちゃ……ムカつくくらい、この学園のことを好いてくれているせつなをね」


 スマホを握る茉莉の手に、力がこもる。


「……せつなだけじゃない。アタシは、学園のみんなを救い出さなくちゃいけない。アタシはそのために音萌学園(ここ)へ入学したんだから。……それから、お姉ちゃんを見つけ出して、お姉ちゃんといっしょに、どこかで暮らすのよ」


 茉莉は嫌悪を込めて、「ああ、そういえばわたしのこの異能(ちから)を、会長はこう名づけていたわね」と前置きし、言う。


「――〈消滅への導き(ブラック・ハンド)〉、と」

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