ミッション! 林檎先輩の笑顔を取り戻せ!(4)
せつなはくるるを連れて、学園給養部へと訪れた。
くるるとは、たまたま給養部へ向かっている途中で出会い、せつなの話を聞いたくるるがついてきたのだ。
給養部には米来と歩煎のほかに、すでに茉莉もいた。
せつなは一同を集め、ある話を持ちかけた。せつなの話をひととおり聞き終えた米来と歩煎は、それぞれ口を開く。
「ふんふん。なるほどなー。元気のない先輩のために、先輩の欲しがってたクッキーを再現して作ろうというわけやんな。……うぅ、なんていい後輩なんや!」
「ステキですねー。そういうことなら、厨房は好きに使ってどうぞ。……ふふ、これでその間に、ボクは合法的に休めるというもの……! それじゃ、あとはがんばっ――」
「――ウチと歩煎も応援するっ! みんなで、林檎のためにクッキーを作ろうやないかっ!!」
休もうとこの場から去ろうとしていた歩煎は、米来に肩を掴まれ、心底うんざりした顔を浮かべていた。
「スイーツ作りは歩煎の十八番や! いっぱい頼ってや!」
「クソっ……勝手なこと言いやがって、このタコ部長が……」
せつなとくるるは、そんな歩煎のネガティブな態度にすっかり適応しているのか、大して気にかける様子もなく、「はいっ!」と、二人揃って元気な返事をしていた。
話もひと段落したところで、茉莉の咳払いが入る。
「事情は聞いて理解したわ。だけど、ひとつだけ教えて、せつな――どうして、アタシまでいっしょにクッキー作りに参加しなくちゃならないのよっ!!」
声を荒らげる茉莉に、くるるは「まあまあ」と宥めてから言う。
「みんなで作ったほうが楽しいですし、いいじゃないですか」
「アタシはさっさと夕飯を済ませようと給養部へ来ただけなのに……。タイミング悪く来てしまったわ……」
そう言って、この場から離れようとする茉莉。しかし、せつなとくるるはそれぞれ茉莉の腕を組むようにして逃げないよう捕え、笑顔を向けた。もうそれは、「いっしょに参加しろ」と、無言で訴えていることと等しかった。
「わ、わかった! わかったわよっ! だから、その腕を離しなさい! 暑いったらありゃしないんだからぁっ!」
せつなとくるるは顔を見合せ、笑いあった。
茉莉は嘆息を洩らしていたが、どこかその表情はうれしそうにも見えた。