ミッション! 林檎先輩の笑顔を取り戻せ!(3)
「――で、それでなんで武具製作部のとこに来んだよっ!」
奈子の提案で、異能部一同は武具製作部に移動していた。
ここなら異能部の部室と違い、学園の地下にあり、日差しの影響を受けない。さらには空調が整っており、冷房も効いていて非常に涼しい。
これを知ってしまっては、もう元の部室には戻れないというものだった。
「毎年世話になるな、てっちゃん!」
「世話になっていいと言った覚えは一度もねぇ!!」
しかし、こうして来られてしまってはもうしようがないと悟ったのか、鉄子はそれ以上文句を言うのをやめた。代わりに、「あ、そういや」と、違う話題を持ちかける。
「今日お前ら身体検査の日だったんだろ? せつなは……何かわかったのか?」
「何か」とは、せつなの『再生の力』のことだろう。せつなは首を横に振り、答える。
「いえ、現時点ではまだ何も。健康状態は良好ってことくらいですかね。今日いろいろ検査された分のデータは国家に送られるそうなので、あとのことは国家の人たちが調べるみたいです」
鉄子は安堵したようにも見える表情で、「……そうか」と、相槌を打った。
奈子も、ともに安心したようで言葉をかける。
「とりあえず、せつなが元気なようでよかった。……あのときはどうしようかと思ったからさ」
「お前ガン泣きだったもんな」
「……っ! そんなことっ……!」
「そういう鉄子先輩も、涙目でしたけどね〜」
「――っ!? 亜仁、見てたのかよっ!」
亜仁は「あら、図星とは〜」とニヤリと笑んだ。鉄子は「先輩に向かってカマかけやがったなー!」と声を上げた。
せつなはそんな三人を見て笑っていたが、一人だけ輪に入らない人物がいることに気づき、その人物――林檎へと視線を向けた。
林檎はドーナツを食べながら、ボーッと天井を見上げていた。
ほかの三人も林檎を見やり、鉄子は「あー!? それ、オレのおやつだぞ!」と林檎を指差すが、当の本人は上の空だった。林檎のあまりの反応のなさに、ドーナツを盗られてしまった鉄子の怒りも、どこかへいくというものだった。
「り、林檎先輩〜?」
せつなはゆっくりと下から林檎の顔を覗いた。林檎は焦点の合わない目でドーナツにかじりついている。
「林檎……相当引きずってるな」
「今日の授業も、ずーっと話聞かずにボーッとしてただけだったし、これが何日も続くといろいろと支障が出てきそうだよねぇ。林檎ちゃんが授業に集中しないのはいつものことだし、あんまり気にしないでいたけど……」
「いや……それよりも、あの状態でまたソラビトが現れたらヤバいんじゃねぇか?」
懊悩する三人を背に、せつなは何か決意した様子で、どこかへ向かい歩き出した。
「せつな。どこへ行くんだ?」
奈子の問いにせつなは一度立ち止まり、振り向いて答える。
「――学園給養部です!」