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【完結済】異能部へようこそっ!  作者: みおゆ
第6話・ミッション! 林檎先輩の笑顔を取り戻せ!
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ミッション! 林檎先輩の笑顔を取り戻せ!(2)

尾張(おわり)せつな、ただいま戻りまし――うぅ……」


 暑い陽射しを受けながら、ようやく辿り着いた異能部……だが、その扉を開けた途端、せつなは呻いた。

 流れ込む冷気を期待していたせつなだったが、全身に浴びたのは立ち篭る熱気だったからだ。


「な、なに……この暑さ〜」


 せつなは言いながら、テーブルの上に突っ伏した。


「せつなちゃん、検査お疲れ様ぁ〜……」


 亜仁(あに)は猫といっしょに氷枕の上でダラりと寝転んでいた。暑さで身体が溶けてしまっていると形容してもよいくらいである。


 異能部の部室内にある小さなテレビからは、今年最大の暑さ到来とアナウンサーが銘打っていた。

 扇風機はそんなのお構いなしに、マイペースに首を回して、部員たちに風を送っている。


 せつなの向かいに座っている奈子(なこ)は、暑い中せっせと自身の武器の手入れをしていたようだ。せつなが戻ってきたことに気づくと、一度顔を上げ、「頑張ったね、せつな」と言って微笑んだ。


 せつなは身体を起こし、「奈子お姉ちゃん、冷たい風、起こせたりしないの〜?」と、あまりの暑さにそうボヤいた。


「わたしは周囲の風の動きを操れるだけで、温度の調整はできない。……仮にできたとしても、こんなことに異能は使えないよ。基本的に、戦闘以外の異能の行使は禁止なんだから」

「わかってるけど〜」


 奈子の真面目な回答に、せつなは不満そうだった。


「……あーあ。保健部はあんなに涼しかったのになぁ」


 せつなは呟いて、急にスイッチが入ったのか、突然立ち上がった。


「――そうだよっ! 保健部は涼しいのにっ! そもそもどうして異能部だけは、部室が外にあるプレハブ小屋なんですか! エアコンないし! ちょっとお古な扇風機しかないし!」


 せつなは異能部だけ不遇の扱いに怒りの声を上げた。亜仁はそんなせつなを宥めつつも、「確かに、どうして異能部だけ外なんだろうねぇ……?」と、疑問を呈した。


「任務が発生したらすぐに出動できるから……とかじゃなかったっけ? あんまり考えたことなかったなぁ」

「奈子部長、そういうところはあんまり気にしないですもんねぇ」


 三人が会話を繰り広げていると、横から突然、「あーっ!!」という、林檎(りんご)の悲鳴が。


 三人は一斉に林檎へ注目すると、林檎の手元には、ドロドロに溶けきった板チョコがあった。近くの棚が漁られていることから、どうやら、チョコレートはそこにしまわれていたのだろう。


「……わ、わたしのチョコレート……」


 林檎は膝をつき、手を汚しながらもチョコレートを舐めるように食べた。亜仁は「あ、食べるんだ……」と、呟いていた。


 せつなは林檎の近くへ行き、「この暑さですもん。溶けるようなものは冷蔵庫へ移しときましょう、林檎先輩」と言って、棚の中に残っているチョコレートや飴など、冷蔵庫へ移しはじめた。


「うん……。ありがとう、せつな……」


 林檎は立ち上がり、「一回手、洗ってくる……」と、哀愁を漂わせながら部室を出ていった。


「……林檎先輩、ここ最近元気ないですよね」


 せつなは、林檎の背を見送ったあと、奈子と亜仁に問いかけた。


「きっと、このあいだの東京観光のときにさ、楽しみにしていたクッキーが買えなかったことが相当ショックだったんじゃないかなぁ。あれ、現地でしか買えないやつみたいだったし……」


 亜仁はそう答えて、奈子を見やった。奈子は小さくため息をついてから、


「……そうだな。また東京へ買いに行くのも難しいだろうし、今はただ、林檎が元気になるのを待つしかない。しばらくは見守っていよう」


 と、言った。


 そうは言われても、せつなの林檎への心配が消えることなかった。


 奈子はせつなを見つめ、「大丈夫だよ。林檎のことだ、きっとまたケロッと元気になってるさ」と優しく声をかけてから、席を立つ。


「……しかし、本当に今日は暑いな。このままでは熱中症になってしまうし……。ここは一旦、部室を別に移すことにしよう」


 奈子の発言に、せつなと亜仁は目をパチクリさせ、


「……部室を」

「……移すぅ?」


 と、順番に奈子の言葉を反芻した。

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