任務終わりの東京観光!(6)
もぞもぞと腹のあたりをくすぐられる感覚。奈子はそれに気づき、徐々に意識を覚醒させながら、ゆっくりを目を開けた。
すぐ鼻の先には、せつなの笑顔があった。
せつなと目が合うや、「おはようございまーす」と、優しく囁きかけられた。
「……おはよう」
奈子も微笑みながら返事をし、身体を起こした。周りを見渡すと、部屋には奈子とせつなの二人しかいなかった。
「ほかの三人はね、もう先に朝食会場へ行ってるよ!」
せつなは奈子の疑問を汲み取り、先に答えた。
奈子は改めてせつなを見た。せつなは、すでに昨日買ったワンピースに着替えており、髪型も整えられていた。とっくに準備は済ませており、奈子のことを待っていたのだろう。
「待ってくれてたのか? わたしだけ置いて、先に食べていてもよかったのに。せつな、おなか空いてるだろう?」
「ダーメっ! 奈子お姉ちゃんといっしょに行くの! わたし待ってたんだから、奈子お姉ちゃん、早く準備して!」
奈子の言葉に、せつなは頬を膨らませながら反論した。奈子は「ごめんな」と言いつつも笑い、布団を畳んでから身支度を始めた。
◇
朝食会場へついたせつなと奈子は、三人の待つテーブル席へと向かった。
ようやく三人とも対面し、それぞれ挨拶を交わす。
次に目に飛び込んできたのは、林檎の目の前に置かれた、山盛りの皿の数々だった。
クロワッサンの山、ポテトフライの山、スクランブルエッグの山……小さなボールには、かわいらしくきちんとサラダも盛られていた。
「り、林檎先輩! こんなにどうしたんですか!?」
せつなは思わずそう聞くと、林檎は首を傾げながら答える。
「ど、どうしたって……。バイキングだし、好きなだけ取って食べてもいいから、そうしているだけよ? ……あ、お金なら平気よ! バイキングってね、最初に決まったお金を払えば、いくら食べても追加料金なんてかからないんだから!」
「せつなちゃんは、そういうことを聞きたいんじゃないと思うよ〜……」
林檎の的外れな回答に、亜仁は呆れ気味に訂正を入れた。
「林檎ったらやべぇんだよ。朝からすげぇ食うんだ……。この制服のせいで、たぶん周りの人は音萌学園の生徒だってわかってるし……こんな食い意地張ったやつが学園内にいるって知られるなんて、マジ恥ずいぜ」
鉄子がそう話すと、林檎は頬を真っ赤に染め睨みつけながらも、クロワッサンにかじりついていた。鉄子の言葉に否定できないでいるが、しかし、食べ物を食べたいという欲求のほうが上回っているらしい。
いつもなら、林檎が菓子の食べ過ぎたときには注意をする奈子だったが、今回は特別に与えられた観光休暇ということもあるのだろう、ただ微笑ましそうに三人を見つめていた。
「……じゃあ、わたしらも朝食を取りに行こうか」
「うん! 塩辛あるかな〜?」
奈子はせつなを誘い、二人で朝食を選びにいった。
その後もみなで朝食を囲みながら談笑し、その中で、帰りの飛行機の時間まで、昨日に引き続き東京観光をすることに決まった。
林檎は欲しかった東京土産があるらしい。林檎の目当ての土産を見に行きつつ、音萌学園で待つほかの生徒の分の土産も買って帰ろうと、プランを話し合う一同であった。