任務終わりの東京観光!(4)
都会の夜景の一望できる、贅沢なプライベート露天風呂。
一同は、そんな至高の湯に浸かり、今日一日の疲れを癒していた。
「東京観光も、あっという間だったねぇ」
力の抜けた亜仁の声が、浴場に響く。
「ええ、もっといたかったわ。ね、せつな」
「ほんとです……。わたし、もうあの島に帰りたくない〜」
林檎とせつなは深いため息をついて、お互い寄りかかるように、さらに身体を湯に沈めた。
「あ、ふと思ったんですけど、亜仁先輩の実家、東京なんですよね? 今日は寄らなくてよかったんですか?」
せつなは聞くと、亜仁は複雑そうな笑みを浮かべた。
「許可が下りたのは東京観光のみであって、そこに実家の帰省は含まれないからねぇ。ま、そもそも帰省許可が出ても、帰りたくはないけど」
亜仁の回答に、せつなは余計なことを詮索してしまったかと、表情を強ばらせた。だが、そんなせつなの緊張を解すかのように、亜仁は大きく笑った。
「ボクは大して気にしてないからさ〜。そんな顔しないでよぉ」
亜仁に続いて、今度は林檎が口を開く。
「実はわたしもそんなに帰りたいとは思わない派。だって、ルールばっかりで窮屈なんだもの、あの家」
林檎の次は、鉄子が会話に参戦する。
「オレのとこも似たような感じだな。バカみてぇに兄妹が多くてよ、しかも家は極小。ほんっと、オレぁ才能持ちでよかったぜ。おかげで、寮という自分の部屋を手に入れることができたからな!」
三人は実家事情を吐露し、それを互いに笑い飛ばした。
三人のその様子を見ていたら、神経質になってしまっていたせつなの心もようやく緩み、再び湯に身体を預けた。
それから、せつなは奈子へと視線を向ける。奈子は相当湯が気持ちよかったせいか、うつらうつらとし、今にも眠り込んでしまいそうだった。
「――っ!? な、奈子お姉ちゃん! ここで寝ちゃダメだよ!」
せつなは慌てて奈子を呼び起こす。奈子は我に返り、恥ずかしそうにはにかんだ。
「……いやぁ、ごめん。なんかあんまりにも気持ちよくて、眠りそうだったよ」
「つーか、半分寝てたろ! どうりで静かだなと思ったぜ」
鉄子は呆れ混じりに「……ほらよ」と言い、
奈子の身体を支え、湯から上がった。
「奈子ぶちょーさんは、そろそろおねんねしましょうね〜」
「……あんまりバカにするなよ」
鉄子は奈子とともに背を向けたまま、
「んじゃ、大先輩組は先に部屋でゆっくりしてるからよ。お前らものぼせない程度にくつろいでな〜」
と言い残し、浴場をあとにした。
「……ふふ。奈子部長も、少し抜けてるわね」
「それ、林檎ちゃんには言われたくないよぉ」
「なんですって!?」
「今日も平和ですね〜」
◇
――その後、残された三人は徹底的に露天風呂を楽しみ、そしてしっかりとのぼせ上がり、目を回すことになるのだった。