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【完結済】異能部へようこそっ!  作者: みおゆ
第3話・初任務とハプニング
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初任務とハプニング(9)

『こちら生徒会会長、王樹華乃(おうじゅ かの)です。せつなさんへ命令します――そのソラビトを、生け捕りにしなさい』


 突如下された生徒会長からの命令に、せつなは「えぇ!?」と声を上げた。


「って、生徒会長、なぜ急に……!」

『質問は受け付けません。あなたはわたくしの命令どおりに動きなさい。ひとつ教えてあげますが、この学園では、会長からの命令は絶対なんですよ』

「そ、そんな……、っ!」


 会話を妨害するように、銃撃がせつなへ襲いかかる。せつなは瞬間移動し、建物の裏へ身を潜めた。


「わ、わたしひとりで、ソラビトの生け捕りなんて……ましてや、あんなのを……」

『そ、そうですよ、何言ってるんですか! 倒すのだって厳しい相手です! 一年に、そんな無茶――』

『大丈夫、あなたはひとりじゃありませんわ』


 途中、乃木羽(のぎは)の声が入ったが、華乃はそれを華麗に無視し、話を続ける。


『わたくしがサポートします。だから、あなたはわたくしの言うとおりに動いて』


 せつなは、離れているのにサポートなんて、と華乃の言葉に疑問を抱いたが、イヤホン越しからも伝わる絶対的自信に、とにかく今は従うことにした。


 一方、ソラビト対策兼司令部にいる華乃は、目を瞑っていた。周りは固唾を飲んで、じっとその様子を見守っている。


「ええ……まさにこの見た目は、ゲハイムニスですわね。……これを失うのは、かなりの損失だわ……」


 何やらひとりごとを呟き出した華乃に、周りにいる一同は困惑する。


「久々に使いますが、上手くいくかしら」


 華乃は言うと、右手を固く握り締めた。


「――ギャッ!!」


 次の瞬間、せつなの目の前にいるソラビトは短く呻き、膝を地面につけた。

 何が起きたのかサッパリわからず、せつなはただその光景を見つめていた。


『何をしているのですか、せつなさん――今のうちに、ソラビトの腹を裂きなさい』

「……え!? ……えっと」

『このソラビトはほかのソラビトよりも再生が遥かに早い。生け捕りと言いましても、腹の中のフラウドストーンを回収すればよいのです。フラウドストーンさえ入手すれば、あとでいくらでも再生するのですから。いいですか、バリアごとフラウドストーンを回収するのです。くれぐれも、破壊だけはしないようにしてくださいね』

「……りょ、了解」

『いい子ね。さすが我が学園の生徒ですわ』


 せつなはその場を飛び出し、瞬間移動を使い一気にソラビトの目の前まで距離を詰めた。ソラビトは油断をしていたか、せつなの襲来に反応しきれず、銃口を向けている途中で、せつなの鎌で腹を裂かれた。


 ソラビトは悲鳴を上げながら仰向けに倒れていく。腹から噴き出したものが、まるで黒い雨のようにせつなは降りかかった。それはソラビトの鮮血か、せつなにはよくわからなかった。だが、一瞬恐怖を覚えたのは確かだ。しかし、すぐにソラビトを倒すことだけに集中し気を逸らし、腹の中をじっと見つめる。

 中には何もなかった。ただただ黒い闇が、永遠と続いているばかりだった。


「……生徒会長、腹の中には何もありません」


 一方、華乃も顔を歪ませていた。その光景を、瞼の裏から見ているのだろうか……。


「……偽物(ダウト)ね。……っ!」


 華乃は何かに気づき、右手を机に叩きつけた。


 刹那、銃弾の音が響く。


「――っ」


 華乃の力によるものか、ソラビトの頭は潰れていたが、右腕の銃口からは煙が上がっていた。


 どさり、と鈍い音が鳴る。


 せつなの黒く染った身体は、今度は徐々に赤く染まりあがっていく。せつなは数秒直立していたが、しかし、ソラビトに足を向ける形で地面に倒れた。


 ソラビトは砂状に変化し形を崩し、風に乗って消えていった。

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