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【完結済】異能部へようこそっ!  作者: みおゆ
第3話・初任務とハプニング
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初任務とハプニング(6)

『前代未聞であります! 大ピンチなのでありま〜す!』


 イヤホン越しで慌てふためく此乃(この)に、奈子(なこ)は「落ち着いて、何があったか説明してくれ」と、冷静に此乃へ説明を求めた。


『こ、此乃、今夢を見たであります。見たことないソラビトが、人を撃っ――』

『此乃! 一旦変わりなさい!』


 一瞬、ガサゴソと何やら擦れるノイズが入る。向こうで、乃木羽(のぎは)が此乃からマイクを奪い取った音だろう。


『異能部、緊急事態よ。別地点でもソラビトの出現が確認されたわ』

「なんですって!?」


 驚きの声を上げたのは林檎(りんご)だった。


「今まで二体同時に現れるなんてこと、なかったじゃない!」

「……乃木羽。二体目のソラビトはどこに?」


 声を荒らげる林檎を視線で制しつつ、奈子はそう問うた。

 イヤホン越しの乃木羽の吐息から、相当切羽詰まった状況なのが伝わってくる。


『……二体目の出現場所は、雷門よ』

「――雷門!?」


 これには奈子も冷静ではいられなかったようで、途端に冷や汗が滲み出す。


「か、雷門って……東京、だよね? 今まで、都心にソラビトが出るなんてこと、なかったのに……」


 亜仁(あに)の瞳が焦りの色に変わる。


 せつなはそんな先輩たちを見て、一気に胸の奥で不安が渦巻く。同時に、小さな使命感も芽生えていた。


 悠長に立ち止まってはいられない。さきほど仕留め損ねたソラビトは、今にも身体を起こそうとしている。


 奈子は立ち上がろうとするソラビトを見てから、三人のほうを向く。


 その瞳を見て――せつなは覚悟を決めた。

 不安がっている場合ではないと、せつなの心が強く訴えかけていた。


『……無茶なお願いだとはわかっているけれど、ここは二手に分かれて、ソラビトの対応にあたってくれないかしら』


 乃木羽の申し訳なさの混じった声が響く。

 奈子は静かに頷き、指示をしようと口を開いたときだった。


「――わたし、雷門なら、昔行ったことがあります!」


 せつなが先に、そう口火を切った。


「わたしが瞬間移動して、ソラビトの対応にあたります! 先輩たちは、ここのソラビトの掃討をお願いします!」

「せつな! まだ初任務でそんなこと、できるわけないだろう!」


 奈子は止めようとしたが、せつなの意志は固かった。


「わたしはもう、異能部の一員です。国のために、全力を尽くすのは当然のことです!」


 奈子は「ダメだ!」と、せつなの腕を掴んだ。


「部長命令だ。わたしとせつなでヘリで向かおう。単独行動はさせられ――」

『部長! 避難誘導をかけていますが、すでに重傷者が出てしまっているようです。このまま放置していたら、被害はもっと広がります!』

『わかってるわよ! 異能使いがつくまで、自衛隊のほうでなんとか持ち堪えるよう伝えて!』


 奈子の言葉を遮るように、聞こえてきた現場の悲鳴。もうせつなの中で、自身の異能を生かさないなんて選択肢はなくなった。


 せつなは、奈子を真っ直ぐ見つめ言う。


「……奈子お姉ちゃん。わたし、待ってるから!」


 その瞬間、奈子の手から温もりは消えた。もう目の前には、後輩であり、妹でもある大切な彼女の姿はない。


「……せつな」


 悲しみに暮れる奈子の肩に、林檎と亜仁はそれぞれ手をかけた。


「部長。せつなを信じましょう。わたしたちは、まず目の前の敵を片づけるべきです」

「ちゃっちゃと終わらせて、せつなちゃんのところへ行きましょう、部長」


 奈子は悲しみを振り払い、ソラビトと向かい合う。


「――ああ。相手はだいぶ弱っている。三秒で片づけるぞ、みんな!」

「「了解!」」


 残された三人は一斉に地面を蹴りあげ、ソラビトに立ち向かった。

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