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【完結済】異能部へようこそっ!  作者: みおゆ
第3話・初任務とハプニング
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初任務とハプニング(5)

 異能部一同がヘリコプターから降りたときには、すでにソラビトは県道ヘ足を踏み入れていた。


 地面を這うように移動するそいつは、全身青い鱗で覆われており、所々、太陽の光を反射させ輝いていた。その全長は軽く十メートルは超えているであろう。以前、せつなが対峙したソラビトよりも、ひと回り大きい。

 ただその巨体ゆえか、動きはあまり早いとも言い難い。これなら、三人と協力すればせつなでも倒せそうなものだった。


『――こちら司令部、練馬咲(ねりま さき)です』


 そのとき、咲からの音声が四人のイヤホン()へと飛び込んだ。


『周辺の住民の避難は完了しています。なんとしても、ここでソラビトを食い止めるよう、お願いいたします』


 四人は「了解!」と返答し、奈子(なこ)は一歩前へ出て、指揮を取る。


林檎(りんご)は前方へ回り込み道を塞げ! わたしとせつなはソラビトの体力を削る! 亜仁(あに)、都度サポートを頼む!」


 奈子はひととおり指示を出し終えると、林檎、亜仁は素早く動き出した。

 残された奈子とせつな。奈子はソラビトを見据えながら、せつなに話しかける。


「四足歩行型のソラビトだな、動きものろいし、狙いも定めやすい。……だが、倒しにくい点がひとつある。何かわかるか?」


 奈子はせつなへと視線を向けた。ソラビトの知識を問われていると理解したせつなは、奈子の質問に答える。


「コア――奴の心臓は腹部にあるため、まずはその隠れたコアを(あらわ)にさせなければなりません」

「そう、そのとおり。前にせつなはソラロボと模擬戦闘をしたと思うけど、あのセンサーの位置は、実際のソラビトの弱点(コア)の位置に倣ったものだったんだ」


 奈子はそう悠長に説明するが、せつなは目の前のソラビトに気が気でしかたなかった。今度は、せつなから奈子へ話を投げかける。


「……でも、腹部の下には回り込むのは不可能です。どうやら、おなかを引きずった状態で歩いているようですし……」


 せつなの不安の声に、奈子はまったく(ほだ)されることなく答える。


「――それは、我が部のエースが解決してくれる」


 奈子の視線の先には、ソラビトより先に回り込んでいた、林檎がいた。


 林檎の手には弓が握られていた。林檎は狙いを定め、ソラビトの足へ向けて矢を放つ。矢は、ソラビトの足首であろう部分に突き刺さるや、大爆発を巻き起こした。たちまちソラビトは仰け反り、低い悲鳴を上げた。


 だが、ソラビトはそれだけで倒れることはない。すぐに地に足をつけようと、体勢を戻しはじめる。


「……っ、もう一発……!」


 林檎は再び矢を取りソラビトへ向けるが、ソラビトは攻撃を察知したか、対抗するように背中から蔓のようなものを出し、林檎を襲いはじめた。


「――〈断裂〉」


 そのとき、拡声器を通し、亜仁の言葉が放たれる。刹那、ソラビトが伸ばした蔓は、亜仁の言葉通りにバラバラに刻まれた。


「ナイス、亜仁」


 林檎は呟き、再び矢を放った。矢はソラビトの胸元部分に突き刺さり、再び爆発が起こる。

 二発目は相当堪えたか、ソラビトは絶叫し、身体を翻した。

 背中から倒れ、無防備になるその身体。


 瞬間、「せつな、今だ!」と、奈子は叫び、双刀を鞘から抜いた。せつなも慌てて大鎌を握りしめ、奈子の言葉を合図に、瞬間移動を使い、ソラビトの真上へと移動した。


 一点だけ赤く石化しているものが見えた――その奥に輝いているのがコアだ。すべてを打ち砕く気持ちで、せつなは思い切り鎌を振り下ろした。

 手応えはあったが、コアの手前の石化した部分――()()()にヒビが入っただけで、破壊までには至らなかった。せつなは悔しげに顔を歪める。


「上出来だ、せつな」


 だが、そんなせつなへ奈子はしっかりとフォローをし、自身の異能を使い、高く舞い上がった。重心を下方へ傾け、風の力を使い加速(ブースト)し、ソラビトへ向けて一直線に剣を叩き込む。

 バリアは砕け散り、ソラビトは最後の足掻きの如く咆哮し、脱力した。


 奈子は軽々と地面に着地し、三人は奈子の元へと集まる。


「す、すごいです! 奈子部長!」


 せつなは目を輝かせながら言った。対して、奈子は――いや、ほかの三人は、未だ戦闘態勢を崩さず、厳しい表情をしていた。

 せつなはその雰囲気を察し、緊張状態を取り戻す。


「せつな。まだ気を抜いちゃダメ」


 林檎はせつなを制すと、直後、ソラビトの足がピクリと動いた。


「まだコアは生きている……みたいだねぇ」


 亜仁は呟き、拡声器を構えたときだ。


『緊急連絡であります! 非常事態でありま〜す!』


 と、四人の耳に此乃(この)の焦る声が飛び込んできたのだった。

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