初任務とハプニング(4)
「いいか〜。お前の尊敬する鉄子先輩はな、このスーパーハイテク器用な才能を国に認められ、ひと足早くに操縦許可をもらっているわけよ。ちなみにほら、免許もちゃんと交付されてる」
現場へ向かう中、鉄子は自身のことについてそう説明した。
「認められているとは思いますけれど、鉄子先輩、単純に異能部の送迎係押しつけられただけですもんね」
林檎は冷静にそうツッコミをいれた。鉄子はハンドルを握りしめ、
「言うな、そんなこと! クソっ、どうして我が部はオレが入ってきてから誰も入ってこないんだ……!」
と、肩を震わせるのだった。
「鉄子先輩より、優秀な子が中々発掘されないんですよ〜」と亜仁が言うと、鉄子は機嫌がよくなったのか、「それならしょうがねぇな〜」と、今度は鼻を高くしていた。
「そういえば、今回はソラビト警報は急なんですね。その……前にわたしが入学式でソラビトと出会ったときは、前日に警報が出たと聞いていましたから」
話を変え、せつなはそう質問すると、奈子は答える。
「ああ。あれは此乃さんの予知夢があったからな。普段はこんな感じで急行することが多いんだ」
「な、なるほど……!」
そんな話をしていると、大村湾上空へと差しかかった。
窓の外を見ると、ソラビトらしき巨大生物が海の中から顔を出しているところだった。
せつなは窓に震える指を押しつけながら、小さく呟く。
「……わたし、今からあれと戦うんだ……」
不意にせつなは背後から抱きつかれ、振り向けば、亜仁が自身の身体に腕を回していた。さらに視線を上げると、奈子と林檎も笑みを向けてくれていることに気づいた。
「大丈夫だよぉ、せつなちゃん。わたしたち先輩がついてるから」
「訓練どおり動けば問題ないわよ」
「部長として、何があってもせつなを守りきるさ」
せつなは頷く。もう震えは収まっていた。
ヘリコプターは現場へと着陸する。異能部はヘリコプターから降り、眼前には巨大なソラビトの姿があった。
奈子はみなを鼓舞するようにソラビトを見上げ、叫ぶ。
「異能部、戦闘配置につけ! 住民区域に入る前に、ここで片をつけるぞ!」
三人は武器を構え、「了解!」と、声を合わせた。
ヘリコプターから異能部の背中を見守る鉄子は「頑張れよ」と、小さく応援を送っていた。