初任務とハプニング(2)
「……というわけで、課題が山積みというわけです……」
せつなは大量のプリントに囲まれながら、そう言った。
現在は放課後。せつなは山盛りの課題を持って、異能部の部室で課題の片づけをしていた。
ただ、元々勉強が苦手なせつな。集中力も続かず、今はテーブルに突っ伏していた。
「あはは〜。まあドンマイドンマイ〜。遅刻は、異能部誰しもが一度は通る道だからねぇ」
「うむ。遅刻はまさに、異能部の伝統ともいえる」
「そんなのを伝統化するな」
亜仁、奈子の頷きに、林檎はすかさずツッコミをいれた。
林檎はひとつため息をついたあと、少し厳しい顔つきになり、せつなを見た。
「……遅刻はともかく。ダメじゃない、異能を勝手に使うなんて。もし、それで事故でも起きてしまったらどうするの? あなたの異能なんて、特に事故が起きそうなものなのよ。誰かと思わぬ衝突事故でも起こしてしまったら、どうするつもりだったの?」
「ご、ごめんなさい……」
そこまで考えていなかったせつなは、深く反省した様子で俯いていた。
「わかればよろしい。今後は、異能使用許可範囲と、非常時以外では使わないこと」
「はい……」と返事するせつな。亜仁はその隣に座り、せつなの肩を抱いた。
「まあまあ、そんなに落ち込むことないよぉ、せつなちゃん。林檎ちゃんもあんなこと言ってるけど、一年の時に異能を勝手に使って、謹慎処分受けてるからねぇ」
「き、謹慎!?」
「亜仁! それはもう忘れてって言ってるでしょ!」
林檎は席から立ち上がって言った。
「謹慎処分って、林檎先輩何やらかしたんですか……」
せつなが聞くと、林檎はバツが悪そうに目を逸らした。そんな林檎に代わり、奈子が、
「去年浜辺でさ、異能部でスイカ割りをしていたんだけど、林檎がスイカ割る番が回ってきたときに外しちゃってさー。負けず嫌いの林檎はそれに腹を立てたのか、スイカを爆発させたんだよね」
と、答えた。
「林檎ちゃんにスイカを持たせてしまったのがいけなかった……」
と、亜仁も腕を組みながら話した。
せつなは、そんな林檎の短気で暴力的な面を知ってしまい、白い目で林檎を見ていた。
「そ、そんな大規模な爆発なんて起こしてないし! それに、今はもうそんなことしないから、わたしをそんな目で見ないでっ!」
三人はわかったわかったと、林檎を宥め、再びせつなは、課題の山と向かい合う。
そんなせつなを見かねてか、奈子はこう提案する。
「……ここ最近は戦闘訓練ばっかりだったし、今日の訓練はお休みにして、せつなの課題に付き合うことにしようか」
その提案を受け、せつなにひとすじの光が差し込んだ。早速わからない箇所をピックアップし、奈子へ質問を始めるせつなだったが、そのあまりの多さに、奈子はもちろん、ほかの二人も呆れ果てるばかりだった。
「せつなちゃん……戦闘センスはだいぶよくなってきたけど、勉強センスはイマイチかもねぇ……」
亜仁の言葉に、せつなはただただ項垂れた。
部室のソファでくつろいでいた猫は、ニャーとひと声鳴いたのだった。