初任務とハプニング(1)
「んにゃ……ふあぁ、よく寝たぁ……」
日差しを受けて、せつなはベッドの上で目を覚ました。
音萌女子中等学園での生活がはじまって、早一か月。
学園での生活もだいぶ慣れてきたせつな。初めて迎えた学園での夜は、家族との離れた寂しさから中々寝つけないこともあったが、今は、ともに生活を送る大切な仲間たちのおかげで、そんな不安も消え去っていた。
何よりも、せつなには家族同然である奈子の存在がある。それがせつなにとっての、一番の支えになっていた。
せつなはベッドから身体を起こした。背伸びをし、「イテテ……」と小さく呟きながら肩を揉む。ここ最近、異能部での戦闘訓練で鍛えられているせつなは、毎日が筋肉痛だった。
「……先輩たちはこの痛みも乗り越えて、あんなに強くなってるんだもんね」
なんからしくないセリフ言っちゃったー、と言いながら、せつなはふと、枕元の置時計を見やった。
時刻は、8時45分。
「……え」
――それは、一時限目の授業開始時刻であった。
「……っ! いっ、急がなきゃ〜!!」
一気に眠気の吹き飛んだせつな。大慌てで身支度をしはじめる。
「アラームかけてたはずなのに〜!!」
せつなは半泣きでひとり文句を言いながら、制服へと着替えていく。
今朝、アラームがなった瞬間、自分でアラームをオフにして二度寝をしていたのは、せつな自身なのだが……きっとそれは、もう彼女の記憶にはないのだろう。
せつなは支度が終わった瞬間、その場から姿を消したのだった。
◇
部屋から教室へ着くまで、わずか0.1秒。
突如教室に姿を現したせつなに、くるる、茉莉、そして教師は驚いた表情で固まっていた。
「お、おはようございま〜す……」
せつなは、少しでも教師の温情を受けられないかと笑顔で挨拶をしてみるが、それも虚しく、教師の顔はたちまち般若面へと変わる。
結局せつなは『遅刻をしたこと』、『異能を認可外の場で使用した』という、二つの罰を受けることになってしまったのだった。