異能部へようこそっ! (3)
「え!? 茉莉さん、生徒会に入るんですか!?」
放課後の教室で声を上げたのはくるるだ。
「そんなに驚くこと? なぁんかもうひとり書記がほしいとかで、会長から頼まれちゃったのよね」
「す、すごすぎます……! バリバリ出世していきますね!」
「出世って何よ。それより、くるるはなんか部活でも入るの?」
「部活は決まらなかったんですけど……とりあえず、今は保健委員の仕事に集中しようかなって」
「ああ、なんかアンタ、怪我してる先輩を助けてスカウトされたんだっけ?」
「はい。処置の動きが無駄なくてすごいとかって……まさか、手当した人が保健の委員長だとは思いませんでした」
「アンタも出世してるじゃない」
二人が会話していると、「くるる〜、料理部でご飯ごちそうしてもらえるって! いっしょに食べない?」と、教室の外から誘いの声が。
「輪香先輩! それに、癒月先輩も!」
輪香と癒月と呼ばれた二人は教室の中に入り、茉莉も一瞥した。
「あらぁ、クラスのお友達ね? かわいいわぁ♡」
「あなたもいっしょにどう? アイツらの作る料理、絶品なのよ」
茉莉にも誘いがかかったが、茉莉は「いえ、アタシは遠慮します。このあと生徒会に行かなきゃなので」と断った。
「くるる、先輩たちと楽しんできなさい」
「はい、ではいってきます!」
茉莉は手を振り、先輩たちと教室をあとにするくるるを見送ると、一度窓の外を見た。
「……なんか、ひとり足りない気がする」
呟いてから背筋を伸ばす茉莉。よし、と言って、教室を出て生徒会室へと向かっていると、「まつりん」と声を掛けられた。
「……きんぎょ先輩」
振り向き、茉莉はその名前を読んだ。
制服を気崩し、背中にテディベアのぬいぐるみを背負う少女は、学園の中でも特に目立つ格好をしている。
「まつりん、なんか元気なさげ?」
茉莉は一瞬黙ったが、すぐに「別になんにもありませんよ」と答え、こう続ける。
「それよりも、相変わらず副会長はその格好どうにかしたらどうですか? 生徒会がこんな格好って……風紀を一番に乱しちゃいけない立場の人が、よくないんじゃないんですか?」
「この学園は個性を大事にしてるから問題なし、みたいな? そーゆー細かいとこ、気にしすぎてたら、ストレスでハゲるよ〜」
「ハゲませんし、頭撫でないでください!」
茉莉はきんぎょの手を振り払い、スタスタと先を歩きはじめた。きんぎょは構わず、「あのさぁ」と呼び止めた。
「きんぎょも、なんかたまに思うんだよねぇ。意外と近くにいる気がするのに、それがわからないの」
きんぎょの不意の発言に、茉莉は目を丸くして振り返った。
「でも、きんぎょはそれでいい気がする。このままが一番幸せな気がする……みたいな」
きんぎょは不器用にも微笑み、こう話す。
「いずれ答えはわかるよ。なんかかはわかんないけど」
なんの答えにもなってない言葉に、茉莉は妙に安心した。
「わかんないって、きんぎょ先輩相変わらずですねー」
「えー? まつりん、きんぎょのことバカにしてるー?」
二人は他愛ない話をし笑いながら、生徒会室に向かって再び歩き出した。