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手違いだらけの異世界転移  作者: ザッコン
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第六話  Time flies.

年末最後の更新です。筆早い人羨ましいー。

 休日の優雅なティータイムをぶち壊すようなビープ音が部屋に鳴り響く。やれやれと俺はため息を吐きながらポケットから端末を取り出して起動する。表示名は悲報。


「あなたがこの街に来てから今日で三年経つわね、おめでとうジャック。」


「わざわざ連絡をありがとう、オリアナ!じゃあ、俺はその3周年を満喫すべく街に繰り出すからそっちも楽しんで……」


そう言って通信を切ろうとしたが案の定止められる。


「待ってジャック。それだけじゃないわ、任務があるの。」


「えーっと?俺は休日なんだが?」


無駄な抵抗と思いつつも休日である事をついつい忘れている可能性もあるので一応伝える。


「あんたの同僚、ローチがしくじったみたいなの。他のメンツは別の任務に就いてるし、今うちのチームで動けるのはジャック、あなただけなのよ。」


俺の属するチーム内、いやフィクサーの部署内すべてで見ても圧倒的戦闘野郎ローチが戦闘が絡む任務で失敗したとなれば、装備もろくに出来ない俺がやったとて結果は見えてる。


「そうは言うが、俺は徒手空拳、よくてもタクティカルペンでの戦闘しか出来ないし、そもそもこの三年、運び屋の真似事みたいな任務しかやった事無いんだが?」


「今回はアタシも行くから大丈夫。アンタは魔導バイクの運転をして頂戴。この街の経路に関してはジャックの右に出る者は居ない、そうでしょ?ローチからの救難信号が出てからもう三十分が経過してる。グズグズしてるとパッケージが奪われてしまう。」


「そこはせめてローチの救出と言って欲しいところだけどな、労働者としては。」


「フィクサーがしくじれば大勢が死ぬ事もあるのよ。バカ言ってないでとっとと支度して。じゃあ、十分後、ネオグランツソーシングから北2ブロック先のペレス倉庫で落ち合いましょ。」


オリアナはそう言って一方的に通信を切断した。


「はいはい、間に合わせますよ、っと。」


俺は誰に言うでもなく呟き、作りかけのナチョスをつまみ、シャワールーム(と俺が呼んでいるだけで実際はクリーンの魔法が掛かる部屋だが)に入り身綺麗にした後、家を出る。


 異世界からネオ歌舞伎シティに来て三年間、俺はネオグランツソーシングのフィクサー部門で働いていた。とはいえ、ご存知の通り、俺はこのカボチャ頭のせいで装備が出来ず、殺しや戦闘が絡む任務には不向きだった為ひたすらに荷運びを行っていた。

フィクサーの荷運びは普通とは違う。検問を避けろから始まり、三十分で街の端まで届けろってのもある。他にもブルーエリアからレッドエリアへ移送してくれだとか厄介な指定のあるものばっかりだ。

 そんな事情で俺は車やバイクの運転と道にだけは詳しくなった。あぁ、まぁ、市民の安全を守る公務員の"お友達"ってのも一部出来てそっちの方面にも顔は多少効くようにはなった。

大概世話になる事は無いが先行投資ってやつだ。


 そして、さっき魔導端末で話してた女、オリアナは俺の上司でチームのリーダーだ。

休日に呼び出されるのはしょっちゅうだが、オリアナが焦ってるのはこの三年ほとんど見た事が無い。


「やれやれ、なんだかすげぇ不安だな。」


マンションを出て路駐してあるバイクに魔導端末をかざしロックを解除する。


「よぉ、カボチャの旦那!これからデートか?」


すると同じマンションに住む呑んだくれジジイこと、ゲンがビール片手に声を掛けて来た。


「あぁ!これからスーツが似合う長身のブルネットの美女とホットなデートの予定だ!」


「カカカッ!美人局じゃねぇ事を祈っとるわい!」


全くの的外れでも無い、というか、ほぼ当たっている。


「うるせぇ、酔っ払いジジイ!」


俺は精一杯の憎まれ口を叩きながら、キックペダルを踏み込みエンジンを掛ける。


「振られたら一杯奢っちゃるからそう怒んなさんな、カボチャの旦那!」


「約束だぞ!絶対奢って貰うからな!場所はミドルレッド地区のミズチにしよう!」


「お、おい、あんな高級店ワシが行ける訳無いじゃろ!!」


「ハッハッハッ!カボチャを甘く見るからだ、ジジイ!サラバッ!」


そうして俺は高笑いしながらグリーンエリアを爆走し始めた。苦笑いするジジイを残して。

コロナとか色々と大変な事も多いけれど良いお年を迎えてね。

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