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手違いだらけの異世界転移  作者: ザッコン
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第三話 持たざる者の輝き

とりあえず今週は3話までです

レイホーン御一行の後を追うべきかとも考えたがこの世界の知識が全く無い全裸の人間が貴族と関わってまともな事態になる筈が無いとすぐに気付き追うのを辞めた。


「解脱出来るほど徳を積んだ人間に対する仕打ちなの、これ……。」




そんな愚痴を呟くが、見知らぬ土地を適当に歩いて村を見つけられる気もしなかった為、とりあえず道沿いに歩いて野宿出来る場所を探す事にした。


しばらく歩いていると尿意を感じた為、少し森に入り安全に用を足せそうな場所でサッと済ませようと視線を下に向けた時に、気付いてしまった。


なんと股間と乳首が光っているのである。

それだけでなく、尿すらキラキラと輝くエフェクトで隠されているではないか。



「な、なんじゃこりゃーーー!?」



思い当たる可能性はあの女神の仕業以外に無いが、こんな事をする理由が分からない。

まさかこの世界の人間は全員がこうなのだろうか?

それとも何かもっと高次元の者への配慮なのか、あるいは自分の徳の高さがこういう状況を招いているのか女神に問わなければさっぱり分からないが、夜へと変わりつつある時間帯の森では目立ち過ぎるという事だけはハッキリしていた。



煌々と輝く光を少しでも目立たないように手で隠しながら森を歩く。


当然、そんな、無駄な努力は報われるはずもなくすぐに緑色をした小鬼たちに囲まれた。


「あなた方はゴブリンですか?いや、もしかすると、宇宙人?私は争う気はありません!助けて!」


ダメ元で対話を試みたがどいつもこいつもグギャギャと嘲笑うだけで相手にすらされず、

そのまま植物のツタで作ったようなロープで縛られ彼らの拠点らしき場所に運ばれた。


その場所は、まさに蛮族の拠点そのものといった感じで至る所に人の首が晒されていたり頭蓋骨が飾られていたりしており、グロ耐性の無い俺は思わず嘔吐してしまう。


吐瀉物すらレインボーに輝かされ、嘔吐する声は小鳥の囀りに変換されているという知らなくて良い事を知った俺はそのまま緑色の小鬼たちによりグツグツと煮えたぎる鍋のようなものの中へ縛られたまま落とされた。


こんな死に方は嫌だー、と叫ぶ余地もなく呆気なくドボンと音を立てて俺は鍋に落ちる。


程よく温かいお湯がじわじわと疲労と全裸のせいで冷え切っていた俺の身体を温めていく。


そして、何故か俺を縛っていたロープはグニャグニャになって解けた為、手足も自由になった。


お湯からザバッと頭を出した俺はその瞬間に気付いてしまった。


「五右衛門風呂だコレ!!!」


五右衛門風呂をわざわざ用意してくれたと考えると不思議なもので、だんだん緑色の小鬼たちも気の良い小さいおっちゃんに見えて来る。


そうして、しばらく五右衛門風呂を満足していると緑色の小鬼たちが騒ぎ始め、とうとうそのうちの1番偉そうな小鬼が湯に浸かる俺の方へとボロボロの斧を持って近寄って来た。


「え?」


と思った次の瞬間にはその斧は俺の首に向かって振り下ろされていた。


思わず目を瞑ると


ガキンッ


と鈍い音が聞こえ、次に目を開けたときには斧は折れ、折れた刃が振り下ろして来た小鬼に刺さっていた。


よく理解が追いついていないが何となく1番偉い小鬼を殺してしまったのだと気付き、慌てて風呂から飛び出る。


小鬼たちは明らかな殺気を持って俺を槍や剣で攻撃して来るものの、全てが弾かれ、折れた刃によって死んでいった。


気付くと集落に居た小鬼たちは全員死に俺一人がポツンと佇んでいた。


あまりの凄惨な状況にまた虹色の輝きを吐き、思い出した。


「あぁ、そうだ無敵なのか、俺は。」


スキルを選んでいた時にはこんな凄惨な状況を作るとは想定していなかった。


精々、殺されたくないなとか、怪我したくないなとか、その程度で決して殺す覚悟があったわけじゃないし、殺す事になるようなスキルとも思っていた訳じゃ無かった。


なんとも言えない胸糞悪さを感じながら、何か着る物が無いかゴブリン(暫定)の藁小屋が並ぶ集落を見て回ると恐らく過去に殺された冒険者達の装備が複数見つかった為、自分のサイズに合うものをとりあえず装着していく。この際デザインは無視だ。


「そうして出来上がった姿がカボチャ怪人ってわけ。」


誰にともなく呟いて力なく笑う。

選んだ装備はこうだ。


・血が染み込み裾がボロボロの真っ黒なロングコート


・所々破れた黒い革のロングパンツ


・何の素材で出来ているか不明な破損した黒のボディプロテクト


・破れた白いフォーマルな手袋


・新品同様に綺麗なカボチャの被り物


「これだけ唯一綺麗で何となく気になったから被ってみたけど、被り物はさすがに要らないよな。」


パーティでもあるまいし、と自分自身に苦笑しながらカボチャを脱ごうとすると、被る時はすんなり被れたにも関わらず脱げない。


驚き焦る俺に追い討ちをかけるように突如視界の中にシステムウィンドウが表示された。



"呪いを受けました"


"装備変更が封じられました"


"ジャック ウィリアムに強制改名されました"


"魂が変質しました"


"ポンコツ女神の加護が剥奪されました"


"装備が自動修復されます"


"ナビトーチ・イグニスファトゥスの呪文を覚えました"


"亡者たちの彷徨う魂がデモンランタンに吸収されます"


"亡者の魂が一定数を超えたのでカースドバーギーが強化されます"


"分析機能が解放されました"


"バイタルビジョンが実装されました"


視界を埋め尽くすシステムウィンドウを見て、俺はひとつ溜め息を吐き、理解を諦めて意識を手放した。

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