第十七話 カボチャだった若者が護身の夢を見ている時
オリアナが入浴を終えた後、俺も風呂へ向かう。さすがスイートというべきか、俺の部屋にあったクリーンの魔法が掛かるだけの味気ないものと異なり、ドワーフ錬金結晶岩作りの高級感溢れる浴室だった。
数年ぶりに広々とした浴槽でリラックス出来た俺は満足感と共にオリアナが選んでいない方の寝室へ向かい、呆気に取られた。
てっきり天蓋付きの豪華なベッドが置いてあると思ったら、薄らと青く輝く流線形のカプセルベッドが置いてあった。
「思ってた高級感と違うが、まぁ、いいか。」
気にならない事も無いでは無いが、とりあえずカプセルに入る。
すると空気が噴射する音と共にカプセルの蓋が閉まりカプセル内の照明が眠気を誘うように緩やかに移り変わり気持ちを落ち着けるようなメロディが流れる。
そうして俺は気付くと眠りに落ちて居た。
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ジャックが寝た事を確認した私は素早くジャックの眠るカプセルへ近付き、コンソールを呼び出す。
「悪いけど私たちが生きる為には眠る暇は無いわよ、ジャック。」
<睡眠学習プログラムを作動させますか?>
迷わずYESを選択する。
<リストから学習内容を選択して下さい>
複数ある項目から『護身』『斥候』を選択し、決定キーをタップする。
これで朝になればジャックは強くなっているはずだ。
私はプログラムが開始されたのを見届けて、ホテルのロビーへと降りる。
「クリスティーナ・ヴェクター様、お出掛けですか?」
AIが無機質な声で私に話掛けて来た事で送迎サービスがあった事を思い出す。
「えぇ、仕事を見つけなきゃならないの。送迎サービスは利用出来るかしら?」
「ご利用可能で御座います。当ホテル専用のタクシーをお呼びしましたので車内にて行き先をお伝え下さい。ホテルへお帰りの際もご利用でしたら端末にてお呼び下さい。」
AIのコンシェルジュはそう言って頭を下げた。
私は了解の意思を伝え、フロントにチップを置き、入口前に停車している黒の高級車へ乗り込む。
「スローンズダイナーまで送って頂戴。」
オリアナ→偽名 クリスティーナ・ヴェクター
吉田健太郎→呪い ジャック・ウィリアム→偽名 マット・デイヴィ
吉田くんが本名で活動出来るのはいつになるんだろう




