第十一話 餞(はなむけ)
もしかしたらまた引っ越しかもしれないので更新滞る可能性があります。
ミドルレッド地区へ来たものの端末を捨ててしまった事を思い出した俺はどうしたものかと思案しながら、とりあえずミズチへと向かう。
何かあった時の為の資金は家にあるバイクに隠してあるもののとっくに組織の人間が張ってるはずなのでどうしようもない。
「金さえあればミズチのブラックマーケットを利用出来るんだけどなぁ。」
そんな事を考えていると言い争う声が聞こえた。
「ここに、ワシの知り合いが来とるはずなんじゃ!そいつに渡すもんがあるんじゃよ!」
「うるせぇジジイ!爺さんの言う奴なんて来てねぇって言ってるだろ!」
どうやらどっかの爺さんと守衛が言い争ってるらしい。見かねた俺は仲裁に入る。
「まぁまぁ、お互い熱くなり過ぎだよ。この爺さんは俺が話を聞くから見逃してやってくれ。」
爺さんも守衛も一瞬驚いていたが双方とも俺の提案を受け入れてくれた。
そんなこんなで爺さんと話す事になったが、その爺さんは暗くて最初は分からなかったがゲンだった。
「アンタ、カボチャをつけちゃ居ないがその声、旦那なんじゃろ?」
「よく分かったな。しかし、ゲン、あんたこんなところで何してんだよ。」
するとゲンはゆっくりとここに来た経緯を語り始めた。
要するに、ゲンは急に俺の家がスーツの男たちに家探しされているのを見て何かあったと察したらしい。そして、俺に何かあったら貰ってくれと渡していたバイクの合鍵を使い資金を隠していたバイクをミズチまで持って来たらしいのだ。
「俺が生きてると確信していたのは良いとしても。何でここに居ると思ったんだよ?」
そう訊ねるとゲンは少し気恥ずかしそうに笑う。
「ミズチで奢るって約束したからじゃよ。旦那は約束を破らんから必ず来ると思っておったんじゃ。」
セグレタといい、ゲンといい、俺の周りには人格者ばかりが居るようだ。
「泣かせるなよ、ジジイ。まぁ、だが、本当に助かった。ありがとう。」
「なに、ワシはカボチャの旦那は絶対フラレると分かっとっただけじゃ、礼はいらんよ。」
そう言いながらゲンは懐からコップをふたつ取り出してそのうちひとつを俺に手渡す。
「まったく、人が素直になってるってのに揶揄うなよ。」
「何があったかは聞かん。そのかわり、落ち着いたらミズチで奢ってもらってもバチは当たらんじゃろ?」
「あぁ、落ち着いたらミズチで祝杯を上げよう。」
「約束じゃからな。」
そう言うとゲンはポケットから出した安酒をふたつのコップに注ぎ、並々と入ったコップを俺の方へ掲げる。
そして、俺もそれに応えるようにゲンの方へコップを掲げた。
「それじゃあ、カボチャの旦那の今後の旅路に。」
「最高の友人の誠意に。」
俺たちはそう言ってコップの酒を飲み干した。
この物語ってヒロイン居なくね?って最近気付いてしまった




