第十話 消されたライセンス
ま、間に合った!!!仕事忙し過ぎて死んじゃう!
「おい、一体お前は誰なんだ!何故俺の部屋に居るんだ!」
ダミ声のカボチャ男は俺に殴り掛かるような勢いで、いや、ような、ではなく迷いなく俺に殴り掛かり床に仰向けに倒れた俺を踏み付けて来た。
「いいか、てめぇが誰か知った事じゃねぇ!だが、この街でジャックウィリアム様に楯突く気なら覚悟する事だな!」
「ま、待てよ。お前がジャックウィリアムだって!?じゃあ、俺を呪ってるのはお前なのか!?」
「ああ゛っ!?呪いって一体なん……の……。」
ジャックはそう言うと暫く黙り込んでどこから取り出したのかタバコを吸い出した。
「チッ!タバコの味もしやがらねぇ。亡霊ってのはこうもムカつくもんなのかよ。まぁ、いい。とにかく、お前死ねよ。」
「な、なんで!?」
「呪いが長すぎて宿主のお前と一体化しちまってんだよ。お前、どれだけ“ジャック"として生きた?」
俺はそう問われ、これまでの3年間を掻い摘んで話した。
「まさか、この街最大の悪党の名前で企業のブタどもに混じって仕事してたとはな!その結果、殺されかけたとはいえ、よく三年も続いたもんだな!」
こいつ悪党だったのかよ、という思いを込めて俺はジャックを睨む。
「まぁ、とにかく、不幸にも俺とお前は運命共同体になっちまったんだよ。お前は何かしでかす気がするし、俺もまだ思い出せねぇ事がある。しばらくは様子見してやるよ。」
そう言って俺の身体から足をどけるとジャックは消えていた。
「一体なんなんだよ。」
しばらく呆けていた俺はなんとか気を取り直し、同僚の死亡を伝える為に会社に電話を掛けるために端末を取り出した。
「ライセンスが確認出来ません。」
無機質な声が流れる。
その後何度か生体認証を行なったにも関わらず端末を使えないままだ。壊れたのかと思案していると登録の無い宛先からの着信があった。
「どちら様ですか?」
「やはり生きていたか、良かった。駆除班室長セグレタだ。色々と聞きたい事があるだろうが今はこちらの話を聞いてくれ。キミはこの街のトップから狙われている。歴史上最大の悪党ジャックウィリアムだと勘違いされているせいだ。奴らに外から来た人間だと説明しても確信を強めるばかりで勘違いを正せなかった。そして、この街での君のライセンスはすべて消失した。我が社も親会社も君の敵となるだろう。我が班の恩人に報いる事が出来ず申し訳ないが、私に出来たのはブルーエリアの開発区、通称ヤクザ街へと続く駆除班専用の通用門を開けておく事だけだ。それも48時間の間だけだ。君のその端末ももうじき追跡される。なんとか生き延びてくれ、幸運を祈る。」
セグレタはそう言って通信を切った。
衛兵に連れられて初めて会った日にセグレタは気苦労が多そうだと思ったが、やはり気苦労が多い人なのだ。
「俺の事なんて知らないフリして密告すればいくらか報酬も貰えるだろうに。」
だが、セグレタはそうはしなかった。もちろんセグレタが嘘を吐いていて罠を仕掛けていると疑う余地はいくらでもある。
「だが、生きてる事を喜んでくれる人を疑うようになったら終わりだよな。」
そう、流されて生きている俺にも義理や人情といった一抹くらいの矜持はあるのだ。
「それじゃあ、祈られた幸運ってのを信じてみるかな。」
俺はひとり呟き、ヤクザ街へ向かう準備をする為、ミズチへと向かった。
ストックが無いので毎週続きを書いてる。めちゃくちゃ時間に追われてる気持ちになるんだけど、週刊連載出来る人すごくね?
それはそうとシャンフロのアニメ化待ってます。




