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咬爪症の女  作者: 武田コウ
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手紙

 靜香へ


 君がまだ、同じ住所に住んでいるのかはわからないけど、この手紙を送ります。


 正直僕はまだ、君が何故急に別れを告げたのか分からずにいます。そして、これからの人生でその答えを知ることも無いのでしょう。


 ただ一つだけ言えるのは、僕は君のことが本当に好きだったし、その事実は疑いようの無く、僕の誇れることの一つだと思っています。


 君が僕の前からいなくなって、色々な事がありました。


 本当は、ひとつひとつ詳細に伝えたいのだけれど、そんなことをしたところで君にとっては迷惑でしょうからやめておきます。


 ねえ、靜香。


 いつの日だったか、僕と君で銀河鉄道の夜について話した事を覚えていますか?


 あの時君は、ジョバンニとカムパネルラは供に行く事ができないのだと、そう僕に言いましたね?


 あの時僕は、君に何も言い返す事が出来ませんでした。


 でも今は、それは違うと自信を持って言うことができます。


 誰しもが、誰かにとってのカムパネルラで、ジョバンニで、ブルカニロ博士なのです。人は、色々な一面を持っていると、そう感じているのです。


 だからこそ、きっと供に行くことのできない人なんていないでしょう。


 僕と君だって、今は別の道にいるけれど、供に歩めないなんてことは無いはずです。


 一度君に会いたい。


 会って互いの意見を話し合いたいと思っています。

 






 静香。


 僕は今、花沢と一緒に住んでいます。


 前から君は、僕が花沢に気があると事あるごとに茶化していましたね。そんな君だから、今の状況を知れば、それみたことかと笑うでしょう。


 そして、君は本当に僕の事を良く見ている……よく理解していたのだと、最近わかりました。


 認めます。


 きっと僕は、花沢に惹かれている。


 それが恋愛的な感情なのか、それとも作家としてのリスペクトなのかわからないけれど。 僕は君が望むようには生きられないと思います。


 きっと僕は、作家としての自分を捨てることが出来ず、同時に花沢へのこの感情を捨てることもできない。


 だけど、きっといつか……君とも供に歩めると信じています。


 僕たちは一枚の切符を持っている。


 その切符は、ほんとうの天上へも行ける切符です。


 いつか、その切符を使って君に会いに行きます。





 お元気で

 いつか銀河鉄道で会いましょう








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