エンディング
雨が降る。
とても冷たい雨だ。
いつになれば晴れるんだろう。
いつになれば。
いつだって雨ばかり。
いつだって一人きり。
貴方はわたしの気持ちを忘れてしまったの?
なんて、言ってみたりして。
遥かなる島から、人の住む世界を想像する。
ハナはずっと気づいていることがある。
貴方なんて人はいないってことを。
全部、幻であること。
いつか、夢を解かなくてはいけないってこと。
人はいつまでも夢ばかりを見ては生きてゆけない。
大都会もまた夢のような世界。
いつか夢は滅び、幻のようになり、現実が訪れる。
誰だって夢を見ているんだ。
自分を偽って、現実の嫌なことなんて忘れようとして、誰だって夢を見るの。
でも、誰よりも嘘を付いているのは、わたし。
もうすぐ魔女の魔法が解けるでしょう。そしたらわたしはただの人になる。
さようなら、夢の孤島。
さようなら、ユーカイス。
さようなら、貴方。
ハナは雨を眺めている。
冷たい雨だった。
寒い一日だった。
※
2011年3月、僕に夢見る魔法を掛けたのはハナだった。考えれば簡単な答えではあったのだけれど、考えないようにしていた自分がいた。どうして魔法に掛かったのか、どうしてそれが夢を見続けるという魔法だったのか、わからない。
続く夢は、僕が何とか終らせたつもりでいるけれど、夢はハナが終らせたのかもしれない。
君が魔法を解いて、僕の夢が終った。
僕は、ニシキという青年に夢で会い、ニシキという青年の物語を想像した。彼は僕の描いた夢どおりに生きていて、再び夢で会い、僕が夢で彼を殺した。
ハナは、本当のところ、どこにいて、何をしているのか、僕は知らない。彼女は島にはいないだろう。彼女は多くの嘘で創られていて、僕は本当の彼女の一部しか知らない。
彼女は夢見る女の子だった。嘘というのは好きじゃない。嘘じゃなくて、夢を見ているだけだった。僕は彼女の夢に付き合っていた。彼女の夢を現実として受け止めるだけの相手だった。
彼女はまだどこかで別の誰かに夢を語り続けているのかもしれない。それとも夢から抜け出て、現実的な暮らしをしているのかもしれない。
2013年5月、僕は現実に生きている。僕はハナを探していた。この都会のどこかに住むであろうハナを僕は探していた。再会できなければそれが現実だろう。再会できればそれもまた現実だろう。
了




