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乙女男子と男前女子

作者: なみ

 乙女男子、男前女子。

 これらの言葉で語られるタイプのキャラクターが、私はとても苦手だ。

 彼らは「ジェンダーの象徴」で塗り固められているように見えるから。

 「女っぽい男」や「男っぽい女」といった特徴づけで語られるキャラクターは、自らの性別から解放されていると見せかけて、結局は性別による役割分担の代表者だ。演じる役割の性別が、肉体の性別と違うだけ。むしろ、役割と肉体の性別が一致している場合よりも、その役割の強調は激しい。


 実際には、私が知る作品で作中ではっきりと「男っぽい女」とか「乙女男子」などと表現されたキャラクターが登場するものは三〜四作品程度だ。好みに合わない作品にばかり当たってきた可能性は否めない。

 だが、90年台、2000年代、2010年代と、発表された年代は様々だ。そしてどの時代の作品も、キャラクターの造形に大きな差異はないように感じた。

 まあね、90年代の作品は「普段は男(女)っぽいのに、ふとした時に見せる女(男)らしさに惹かれる」だった一方で、最近の作品はそうじゃないんで、その辺は進化してるのかなとは思うんですけども。キャラクター造形に関しては、決めつけちゃっても仕方なくない!?くらいには、お決まりのパターンだったのだ。


 すなわち。


 「乙女」男子は、手芸が好き、花が好き、フリルが好き、リボンが好き、料理が上手く、家事はそつなくこなし、思慮深く他人の感情に共感しがち。

 「男前」女子は、スポーツが好きで、武道の心得があるもしくは腕っ節が強く、はっきりとした物言いを好み、実用的なアイテムを好み、正義感が強く、やや短絡的で直情的な思考の持ち主。


 あの手の作品では、キャラクターたちが自らの性別の枠に逆らい、そこから飛び出そうとすればするほど、彼らの身体とは逆側の性別の役割像が浮き彫りになり、性別ごとに求められるテンプレート像をはっきりと見せつける形で描き出してしまう。


 性別による役割からの解放を描くなら、性別による役割そのものを描く必要があるのはわかる。作品のメインテーマとして暴力反対を訴えるには、暴力を描かざるを得ないのと同じだ。


 彼らはストーリー上、「自らの性別と嗜好、志向の差異に悩みつつも、自分らしさを選択して生きる」という役である。つまり、「性別という概念から解き放たれた人物」と表現されている。


 これこそが、私の苦手ポイントである。


 そこには「男っぽい、女っぽいってなんだろう?」という問いが無い。あくまでも、「女の子(男の子)みたいな男の子(女の子)がいてもいいじゃない」なのだ。

 つまり、逆張り上等、である。もう少し賢そうに表現すると、世間様の男女像に対するアンチテーゼこそがキャラクターのアイデンティティなのだ。それが取り除かれてしまっては彼らの個性の拠り所がなくなってしまう。このタイプのキャラクター設計は、属性に対する偏見を軸に構成される。つまり、他者の物差しに自らの価値基準を預けている状態なのだ。

 にも関わらず、「自分らしさを大切にする人物」ポジションって。

 自分らしさと言うなら、他者の物差しによる相対値ではなく、自分の物差しによる絶対値で個性を語ってもらいたい。

 単に好みの問題であるが。

 ただ、「らしさとは」という問いを飛ばしてしまえば、本当に「女の子(男の子)みたいな男の子(女の子)がいてもいいじゃない」で終わってしまうのは避け難いと思う。

 それでは「男子(女子)かくあるべし」の種類が増えただけではないか。役割からの解放をうたっておきながら新たな檻を設置して終わりとは。

 もしかして、性自認や性的指向の名称のように、テンプレが増えすぎて面倒くさくなっていつしか分類しなくなる……という展開を狙っているんだろうか。

 このようなモヤモヤ感を読者の中に巻き起こすために敢えてそのように描いているのであればまんまと策にはまっている事になる。

 果たして真相は。


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