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越国の財政と屯田制

越の新しい王となったリョウカは重臣を集めてこれからの方針について話し合っていた。


「まずは国内の動揺を抑えなければなりませぬ」


文官として先王リャオを補佐していたヤシブが口火を切った。


「先王の死で越の国の民は動揺しております。しかし、我が君が今、最も恐れるのは何でしょうか。大和の侵攻ですか?いいえ。彼らは豪族の連合に過ぎませぬ。一つのことを決めるのに何日もかかります。一番怖いのはリャギです。我が君のようなまだ若い王よりもリャギのような名声をもつ王の支配を望む者は少なくありませぬ。今は国内を落ち着かせることを最優先にするべきです。」


さすがだな、とリョウカは感心した。大和よりもリャギを警戒するとは意外だったが納得ができた。ヤシブはリョウカの教師をやっていたこともあり、リョウカはもともと知っているが、政治力に関してはヤシブの右に出るものはいない。ヤシブは物事を客観的に見ることができるため、越の国の王としては耳が痛いことをいうこともよくあるが、同時に信用できる人物でもあった。


「しかし、大和の侵攻にも注意を払わなければなりません。今、越国内の兵士の数は3千、動員をかけたとしても戦力になるのは5千程度でしょう。一方で大和の戦力は1万です。先王は民の負担になるとして兵力を最低限に維持しておりましたが、大和が全力で侵攻してきたらひとたまりもありません。リャギや東海国がどう出るか不明な現状では兵力を増やす必要があります。」


越の国四天王の一人ヤシが口を開いた。


「いままではどのように兵を集めていたの?」


リョウカはふと疑問に思い聞いてみた。


「いままでは志願してくるものを兵士として採用していました。狩人や元盗賊といった力に自信がある者が集まっています。」


「ふむ、では常に兵士を5千人いるようにせよ。越の国の者で若い男を優先的に集めてくればいい」


「我が君!それは危険です!!」


財政官のジュウが反論する。


「兵士を常に5千人待機させるような力は我が国にはありません。国民の負担を増やすとリャギや大和に付けこまれる恐れもあります。」


「では国民の負担にならなければよいではないか」


「はい?」


「コウ」


リョウカは四天王の一人コウを呼んだ。


「は!」


「兵士たちは普段何をしておる?」


「訓練であります」


「細かく申せ。朝も?夜も?毎日?」


「7日に1日を休みとして昼だけ訓練しております」


「では残りの時間は何をしている」


「人それぞれであります」


「よろしい。では、これから兵士たちは田を耕す兵になってもらう。」


「どういう意味でありますか?」


「文字通りだ。兵士には午前中は田を耕してもらい、午後や冬といった残りの時間で訓練をするのだ。」


「かしこまりました」


「我が君」


四天王の一人ヒロが手を挙げた。


「いい案だとは思いますが、もしいま大和が来ますと訓練が間に合いません」


「ヒロか。心配するな。大和は今年は動かぬ。」


「なぜですか?」


「大和の王がそう言っているからだ」


「そ、それはどういう…」


「ジュウ。これで財政は大丈夫であろう。」


ヒロの戸惑う声をかき消すようにジュウに聞いた。


「はい!兵士を費用は兵士に賄ってもらう。とても良い方法だと思います!」


ジュウは嬉しそうに言った。


「よし。それぞれ仕事にとりかかってくれ。武官は兵士の徴収と訓練、文官は財政の確認と資料の作成を頼む。私は新王として親衛隊の二人を連れて国内の視察に行ってくる。」


ヤシブの言う通り国の動揺を抑えるのが最優先だ。早く王として認めてもらわねばならない。

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