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真夜中の案内人
【真夜中の案内人】
・――――本当に大切なモノって何?――――
「ついておいでよ」
西瓜の土星が浮かぶ空 黒く塗りつぶされた真夜中
顔の無い少年が言った
失った〈ナクシタ〉貌の代わりに 月の仮面を付けていた
瑠璃色のマンション〈イエ〉の中では深海魚が泳いでいる
一列になって屋根裏を歩くボク等
行進〈パレード〉と称した散歩はどこまでも続いてゆく
――――その顔を失ったのは何時?――――
天界を裏切った両親の間に生まれた彼は
自らもその罪を背負い 生まれて直ぐに貌を奪われた
哀れんだ夜空の月と 銀色の星達がくれたのは 特製の仮面〈マスク〉
天には満々とした大海が
その雫を零すことなく巡回し 波打ち、揺蕩っている
少年は夜光雲の舟を使って
その顔から月の仮面を剥がし
天〈ソラ〉の大海〈ウミ〉へと流した
黒くて分からないはずの表情〈カオ〉に
ほんの少しの笑みと憂いをたたえて――――――
※最初稿:2012年01月21日