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少女が見た幻風景-いつかの汽車-
・ピューと汽笛が鳴り、銀の髪に水晶の瞳の少女は
羽のように軽く汽車に乗り込んだ
貌の無い車掌が切符を切ると、汽車はガタゴトと走り出した
“何処へ行くでもないのよ、私”
ふと少女が言った 言ったような気がした
その少女は、完全に、生まれてから現在の、全ての記憶を保有していた
今まで色々な世界を見て歩き、それに、疲れてしまったように思えた
“ねえ、リンゴはいかが?”
何とはなしに ボクは言った
それは実に退屈で、気まぐれで、ありきたりな提案
少女はしばらく水晶の瞳をくるくるしてから
ふんわりと、春の日射しのように笑った
“ありがとう、ステキな提案ね”
後になって→跡となって ボクは想う
きっと、ボクは彼女に、見るだけではない“現実〈イマ〉”をあげたかったのだ
――――水晶の瞳の少女は、きっと今も何処かで、風景を記憶している〈みつめている〉――――
(彼との記憶は、きっとかけがえのない、少女だけの宝物)




