購入者の感想
他プレイヤー視点。短めです。
『ウィンターロックで戦う、或る剣士の日記』
エルムジカのサービス開始から3週間が経った。
俺たちは大雪原の第1エリア終盤でしばらく足踏みさせられていたが、先日パーティメンバーが農民ギルドの取引所で見つけたパースニップジュースのお陰で、戦闘時の戦力の補強が可能になり、ついに第2エリアへと到達することができた。
ステータスの補強ができるアイテムは今のところ他に見つかっていない。
様々な効果を持つパースニップジュースが多数出品されていて、コンスタントに補充されているが、徐々に効果についての噂が広がってきたのか、パーティ全員で取引所の更新時間に張りついていないと買い逃すことも増えてきた。
スプリングポップで農家をやっているフレンドに出品者のことを尋ねてみたが、どうやら農民ギルドでも目撃情報がなく出品地域と取引IDしかわからない謎の人物らしい。
過去の取引で一度だけ作物を出品していたときのログを見ると、取引メッセージで落札者に暴言を吐かれていたせいなのか、以降の出品ではメッセージ欄が閉じられ、今は一切コンタクト不能とのことだった。
なお暴言を吐いたプレイヤーはすぐ見つかったので、フレンド含め周囲の農家や豪農で囲んで「可愛がってやった」と言う。
今の状況ならば取引所ではなくオークションに出品すればいくらでも儲けられるだろうに、頑なに取引所にだけ出品を続けているところを見ると、謎ではあるが信頼できるプレイヤーなのではと思う。
ただ農家のフレンドは、パースニップのみに特化しているところにかなりの異常さを感じると言う。
剣士で例えると初期装備の木剣でエリアボスに挑み、善戦どころか倒してしまっている、と。
うん、それはかなりの狂人だ。
信頼できるプレイヤーなのか、それとも狂人なのか。
いつかそれを知る日はくるのだろうか?
『サマーソウルで修業する料理人の日記』
私がパティシエールに近付くために必要な砂糖にやっと出会えた。
うっすらピンクがかった粉砂糖はドーナッツに振りかけるだけでもファンシーで、ソーダ水に混ぜても美しい。
ショップや取引所で今まで購入していた砂糖よりも上品な甘さで、使うだけで料理の品質も上がってしまう。
腕を磨くのも大事だけれども、良い材料を探し出して使うのも料理人には大事だ。
一緒に売られていた油も買ってみた。
ココナッツオイルみたいな風味で、ぼんやり歩けばヤシの木に当たるサマーソウルでなら自作できるかも、とギルドから作物加工機をレンタルしてヤシの実から作ってみたけど、笑っちゃうくらいベツモノ。
素直に売っているのを買ったほうがいいね!
加工品しか今は売ってないみたいだけど、この人の作ったパースニップ自体にも興味がある。
売られているパースニップは★1ばかりで料理に使おうなんて思わなかったけれど、★5のパースニップで作った料理、他の材料の品質で相殺されたとしても確定で★3くらいの料理ができるのでは?
★3の料理なんて私が修業しているNPCのレストランでも偶にしか売ってない。もっと高級店で食べる品質だ。
砂糖や油への感謝の気持ちを伝えたいけれど、取引メッセージ不可だから伝えられない。もどかしい。
どうか私の専属農家に!なんて伝えられたら伝えたいけれど、この人ならきっと引く手あまただろう。
早くレベルアップして、誰にも負けない有名なパティシエールになって、この人に気付いてもらわなきゃ。
漠然としてた目標が見知らぬひとりのために定まるなんて、これはまるで恋ね。